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【日本一周 京都・滋賀編4】 平等院の鳳凰堂に入る

・鯰愛好家を魅了する如来の髭

 平等院は著名な観光地ながら、京都の中心地からは驚くほど離れている。バスの一日乗車券を購入した我々だが、平等院はその範囲外に位置しており、苦渋の電車利用を迫られた。最寄りの宇治駅は小さいながらもモダンな作りで、公衆室内プールのような清潔感があった。


 平等院への道すがら宇治橋を渡った先に、夢浮橋の古蹟と命名され、「源氏物語」の作者たる紫式部の石像まで設置されている空間があった。夢浮橋といえば源氏物語の宇治十帖における最終話だが、それの舞台として「推測」される場所がここらしい。言ってみれば千年以上前の作品の「聖地巡礼」である。作者に確認が取れないために「推測」の形になってしまうのは惜しいが、石像まで作られるのは凄い力の入りようだ。遠い未来に草津温泉や銀山温泉に宮崎駿の石像が造られるようなものだろうか。

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 このような考え深い道中を経て、平等院へ到着した。清水寺のように貸し切りとまではいかなかったが、散策している観光客の数は二桁もいなかった。


 早朝の曇天からは打ってかわって、空は快晴に近かった。池には逆さ鳳凰堂が映り、朱色の鳳凰堂と青空のコントラストが美しかった。我々は十円硬貨を手に持ち、鳳凰堂とのツーショットを撮った。せっかくだから鳳凰堂のスリーショットも撮ってもらおうと、一人目の外国人観光客は見送り、二人目にやってきたおばさんに頼んで撮ってもらった。丁寧な人で「これで大丈夫かしら」と確認を促し、お礼を言うと「どうということはないんです」と言った調子で去っていった。そして、我々は阿弥陀如来のご尊顔を拝むべく、時間指定された内部見学へと向かった。

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 平安時代の仏師・定朝の作であることが確実な唯一の仏像である阿弥陀如来像。その顔は少々垂れ目で、ハイセンスな口髭を有している。想像よりも大きく、でっぷりとした体躯には全てを許してくれそうな懐の深さが窺える。光背は阿弥陀如来を呑み込んでしまいそうなほどに巨大で、大日如来や飛天、草花の精緻な細工が施されている。両者は金属のような輝きを放っているが、これらは全て木製で、漆を塗った後に箔を貼り付けたものなのだ。スギョイ。もっといえば天井の二重天蓋の豪奢さも恐ろしい。その素材には金銀、孔雀石、辰砂、琥珀などが使われており、億は下らないらしい。名実ともに箔のある鳳凰堂でありましたとさ。


 平等院の境内に建てられた雲中飛雲菩薩などの展示されている鳳翔館もついでに寄ってみた。照明の落とされた館内には、梵鐘や十一面観音立像などが東博のような厳かさで展示されていた。目玉である飛雲菩薩群の展示部屋は、ダイナミックな造りになっていた。正面の壁には数多の菩薩が宙を舞い、眼前のスペースには単体の菩薩が展示されていて、細部まで鑑賞できるようになっていた。よくよく顔を見てみると思いの外ユーモラスな表情をしており、部屋に飾れたらなんといいことかと妄想を膨らませたりした。


 ミュージアムショップでは、およそ二年ぶりとなる御朱印をもらった。御朱印を集め始めたのは高校二年の夏であり、そこから大学一年の春くらいまでは熱心に集めていたのだが、大学生になってからはめっきり集めなくなってしまった。その余波で、東北を巡行した際、立石寺などの古刹を訪れていたにも関わらず貰いそびれてしまった。なんたる不覚。そのときに変に振り切れて、「金輪際御朱印は集めるものか」と危ない一歩を踏み出しかけたが、思いとどまって蒐集を再開したのがこのときであった。めでたしめでたし。


 このあと、宇治駅にて京都国立近代美術館における「分離派建築会100年 建築は芸術か?」のポスターを刮目す。

明石

・メンバー
明石、尾道

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