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毎日超短話211「そよ風」

何をするわけでもなく、カフェにいる。本を読んでいるふりをしてみるが、まるで集中できない。周りには、パソコンで仕事をする人や、テキストを広げて勉強する学生、子どもをつれてお茶する人や、恋人同士で見つめ合う彼ら。

やることがあってうらやましい。わたしは、ただぼんやりとしているだけの暇人だ。

となりの席が空いた。
店員がテーブルを拭く。
手には何も持っていない。
テーブルに触れるか触れないかのところから、そよ風が吹いている。

店員が離れる。

わたしは何をするわけでもなく、ただカフェにいる。やることはないが、心にはそよ風が吹いていた。

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