4月の全短歌①ピアニッシモ

1
コスパとかタイパだとかで通過した駅を帰りは降りていきます

2
ドーナツの半分を食べなくなった穴と世界が抱き合っている

3
消音で映されている病院のテレビはどこかパラレルな砂

4
何者になることもなく生きている俺のもとにも春が正しい

5
もし飛べる形であればこうやって手を繋ぐことできなかったね

6
続編が出たんだってと打った文字送らず土に埋めている春

7
いなくても同じだろっていう僕に、じゃあいてくれよっていう友がいる

8
君が息していることを確かめるピアニッシモの呼吸を触り

9
お出かけがしたいですと靴が言うバスケしたいですと言うように

10
友だちになれない人もわたしとは違う誰かの友だちがいる

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