『ふたり』【詩小説】
こどもの頃を思い出しはじめて、そろそろこのお店を出て、わたしたちはそれぞれの家に帰らなきゃいけないんだな、と感じている。
いつまでもこんな風に夜がながくながく続けばいいなと思いながら、そういう気持ちを「余韻」なんて言葉に落とし込んで大切に仕舞いこんでしまうから、わたしたちは気軽に、もっと頻繁に会えるのに会わないのかもしれない。
会えない時間に電話したり短いことばをなんどもなんども送りあうことで、わたしたちの間にはそれらが積み重なった見えない小高い丘ができるのだ。
その丘のいちばん高いところに向かってわたしたちはゆっくりと近づきながら歩み寄って出会い、またこんな風に時間を過ごしていくんだと思う。
会える時、会えない時、どんな時間もさびしい。けれど、わたしたちはお互いにいつもさびしいから、また会うのだし、いっしょにいるのだと思う。
たとえそれが弱さでも、わたしたちのそのままだと思うから。