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#263 人はみんな、ただただ話を聞いてもらいたい。ミヒャエル・エンデ「モモ」

ミヒャエル・エンデの「モモ」は、近代で最も人気の高い童話の一つと言われている。

モモという小さな女の子が、情報管理社会と戦う話だ。

そんなモモの周りにはいつも人が集まってくる。
それはモモに特別な話術があったわけでもないし、容姿が良いとか、魔法が使えるとかそういうことではない。

ただ彼女が「話を聞くのが上手かった」からだ。

みんな話を聞いてもらいたいし、話を聞いてもらえると勇気が湧いてくる。

モモに話をすると、不思議と心が軽くなる

物語の中で、モモは話を聞く名人だったという描かれ方をしています。

小さなモモにできたこと。それは他でもありません、相手の話を聞くことでした。中略
本当に聞くことのできる人は、めったにいないものです
モモに話を聞いてもらっていると、考えるのが苦手な人にも急にまともな考えが浮かんできます。モモがそういう考えを引き出す質問をした、というわけではないのです。
ただじっとすわって、注意深く聞いているだけです。その大きな黒い目は、相手をじっと見つめています。すると相手は、自分のどこにそんなものが潜んでいたかとおどろくような考えが、すうっとうかびあがってくるのです。

p23 モモ

モモに話をすると誰もが心が軽くなるし、アイディアも湧いてくる。だから悩んだらモモのところに行って、話を聞いてもらう。

でもモモが特別な質問をしたわけでも、会話上手というわけでもありません。
ただただ、じっと相手の目を見て真剣に聞く。

これだけで相手は、するすると言葉が出てくる。モモの目を見ていると、鏡のように自分の心が映し出されるような気がして冷静になっていく。

相手の話をただ黙って聞く。これだけで相手は想像以上に救われるのだ。

話を真剣に聞いてもらえると、勇気が湧いてくる

モモに話を聞いてもらった人は勇気が湧いて、急に目の前が開けた気がしてくる。

モモに話を聞いてもらっている、どうして良いか分からずに重い迷っていた人は、きゅうに自分の意思がはっきりしてきます。引っ込みじあんの人には、きゅうに目の前が開け、勇気が出てきます。不幸な人、なやみのある人には、希望と明るさが湧いてきます。
例えば、俺の人生は失敗で、何の意味もない、俺は生きている価値がない人間だと思っている人がいる。この人がモモのところに出かけて行って、その考えを打ち明けたとします。するとしゃべっているうちに、不思議なことに自分が間違っていたことがわかるのです。
世界中の人間の中で、俺という人間は一人しかいない。だから俺は俺なりに、この世の中で大切な者なんだ。

p24 モモ

不思議なことに、モモに話を聞いてもらうと、絶望の淵に立っている人でも生きる希望が湧いてくる。

人の話をただ聞く。人に話を聞いてもらう。単純で誰もがやってきたことだけど、改めて聞くには大きな力がある。

確かに自分も、悩んでいたことを相手に勇気を出して打ち明けたら、そこから道がひらけたことはたくさんあった。

何も現実は変わってないし、やるべきことは変わらない。
でも聞いてもらえるだけで、勇気が湧いてくるし、立ち向かえるようになるのだ。

話を聞く。これだけで相手を救えるし、自分も誰かに話を聞いてもらうことでどんどん前に進んでいける。

もっと人に話を聞いてもらおう。

だからこそ、もっともっと人に話を聞いてもらおう。

自分のことを打ち明ける。それを受け入れてもらう。それだけで状況は大きく変わっていくのだ。

何もアドバイスを無理にする必要はないし、良いことを言う必要なんてない。会話のうまさなんて関係ないし、緊張してしまっても良い。

大事なのは目の前の人の話を誠実にまっすぐに聞く姿勢があるかどうか。

それだけで相手は救われるのだ。

自分ももっと気軽に人に話を聞いてもらおうと思う。
それにしても「モモ」時間の話から、聞く姿勢まで。学びの深い本だ。


以前モモについて書いた記事です。


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