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社員1割削減中のセールスフォース、相次ぐレイオフ告白、障害者雇用訴訟、働きがいランキング上位常連もいつまで?

セールスフォース米国本社が1月4日に1割人員削減発表し、メディアが続々報じた。対象となったのは7000~8000人とみられる。

相次ぐレイオフ告白

米国系IT企業の解雇ブームのなか、ビジネスSNSリンクトインで社員がレイオフ告白する投稿が目立つ。筆者はこれまでに、米国、カナダ、メキシコ、アルゼンチン、オーストラリアからセールスフォース社員を名乗る11アカウントが、リンクトインでレイオフ告白を投稿しているのを確認。日本からも1アカウントが確認できた。

レイオフ告白は、とても慎重に考えられた文面で、つらい気持ちを隠さずストレートに表現しつつ、会社や同僚、家族への感謝の気持ちが綴られた内容が多かった。これからやっていきたいことやサポートを必要としていることを伝える内容もあった。投稿の多くには「#Salesforcelayoff」というハッシュタグが付けられていた。レイオフ告白と併せて、リンクトインの機能でプロフィール写真を 「#OpenToWork 」に設定する投稿も見かけた。

レイオフ告白の投稿には、同じ会社の社員を名乗るアカウントから、レイオフを惜しむコメントや励ましのコメントが数多く寄せられていた。

また、「私に何かできることがあればお伝えください」と箇条書きでサポートできることを投稿して呼びかけられているのも見かけた。

第9回期日

東京地方裁判所(1月23日筆者撮影)

そうしたなか、発達障害の元社員が、同社日本法人を相手取った障害者雇用訴訟が続いている。1月23日11時、東京地裁527法廷で第9回期日が行われた。この日は、筆者、障害者団体関係者など5人が傍聴した。

前回の期日で、被告会社側から提出された産業医の意見書について、原告側代理人の早田賢史弁護士から「編集されたものに見える」と指摘が出る一場面があった。早田弁護士によると、意見書が原本ではなくPDF化されたファイルを印刷したものだったためだった。PDFファイルであっても原本と同一であれば問題はないのだが、こうした裁判では本来、原本を提出すべきとされているという。

この裁判では、産業医の指示により、原告元社員のメンタル不調からの復職条件として、基礎疾患によりコロナ感染での重症化リスクを抱えた原告元社員の通勤訓練が行なわれていたことがわかっている。

近年、会社の意向を汲む形で不都合な社員を退職に追い込む「ブラック産業医」が社会問題となっており、産業医の判断の信用性を否定する判決も出ている。判決次第では、産業医制度の見直しに向けた議論が本格化しそうだ。弁護士の一部には「違反した産業医に罰則を課すべき」とする意見もある。

裁判ではまた、合理的配慮の認識や範囲が争いとなっている。

この裁判で、原告である元社員は、「働いていくうちに職務内容が雪だるま式に増えていっている。ジョブディスクリプションを労働者に明示してほしい」ということを、合理的配慮の1つとして求めていた。これに対し、被告会社側は「ジョブディスクリプションを常に細かく示すようにすると過重な負担となる」と主張。

障害者雇用促進法の合理的配慮では、確かに会社側は「過重な負担」になるまで配慮を提供することはない、とされている。だが、どこからが「過重な負担」になるかが曖昧ゆえに、裁判にもなりえる。どのような合理的配慮が認められるかは、会社の事業規模もさることながら、上司の障害への理解度に依存しやすい。「過重な負担」の濫用で、相対的に立場の弱い障害者への合理的配慮が殆ど認められない歴史があった。これまでに合理的配慮義務違反を認めた判例は殆どないのが現実だ。

次回は3月6日午後2時から第10回期日が行われる。

働きがいランキング上位常連 いつまで?

転職口コミサイト「OpenWork」が社員口コミの集計を元に発表する「働きがいのある企業ランキング」が、今年も発表された。セールスフォースはこのランキングで頻繫に上位にランクインし、採用へのアピール材料としてきた。1月24日、2023年版ランキングが発表され、同社は4位にランクインした。

ランキングサイトでピックアップされた社員口コミを見ると、「成長する機会はこれ以上ないくらいに用意されている」「功績を讃えてくれる文化」。実際にこのように感じている社員はまだまだいるようだ。

ただ、働きがいランキング上位常連も、いつまで続くだろうか。

「OpenWork」のセールスフォース日本法人のページに掲載された口コミ(12月5日投稿)によると、「成果を出している人も長期休養に入る人が多い」という口コミがあった。この口コミが一時、会社担当者が選択している「Pick Up社員口コミ」に選ばれていた(1月29日現在は除去)。

OpenWorkのPick Up社員口コミは他にも幾つかあったが、「(管理部門以外の事業部門は)ノルマが厳しい、忙しい、余裕がない」という点は共通していた。なかには「評価が高いのは会社の綺麗さや福利厚生のみ」というものまであった。

OpenWork関係者によると、「Pick Up社員口コミはOpenWork運営者は関与しておらず企業側が自由に選択することになっている」。社内で誰が選択したのか定かではないが、この時期になってこのような内容の口コミを公開口コミとして選択し、紹介することになったのは、どういう事情、どういう意図があったのか…。

Pick Up社員口コミについて同社広報および採用部門責任者に問い合わせたが、回答はない。

米国メディアが本社の異変を連日深掘り

米国系経済メディアのBusiness Insiderが、米国本社の異変を連日深堀りしている。

1/6 人員削減は7000人規模か。寝耳に水のレイオフ計画、「解雇された部下から聞かされた」管理職も

1/12 ベニオフCEO「一部社員の生産性が低い」と若手社員、リモート社員の生産性に懐疑的な見方

1/20 2月にも営業チームを中心にレイオフか。動揺走る社内は「生産性ほぼゼロ」

1/30追加 「Slack売却の可能性」人員削減の対象者はさらに増えるか

2/21追加 今度はセールス部門で「大量首切り」。社内Slackから「4000人が消えた」(2月6日Business Insider Japan翻訳記事)

2/21追加 「PEP(パッケージを得て退職)かPIP(業績改善計画)か、迫られる社員」(2月15日Business Insider US記事。日本では未訳)

2/26追加

こうした状況は、日本法人にはどう影響してくるのだろうか。

同社日本法人の小出伸一社長は12月14日に経済番組PIVOTに出演し、日本法人の社員数が3800人になったこと、毎年新卒者百数十人採用していることを語った。だが、人員削減は日本でも進められており、23年卒や24年卒の新卒者の採用凍結や内定取消の懸念がある。

「外資系でリストラされても困る人はいない」は本当か

一般に、外資系企業では人員削減について、「転職慣れしている人が多く、多少のショックはあっても、こうしたことは日常茶飯事でそこまでの大ごとではない」といわれる。

しかし、人員削減が個々に与える影響は様々。次々とオファーを得て好待遇で転職したり、恵まれた経験・人脈を元に起業したりする人がいる一方で、機会格差から次のステップへ移れず、労働市場から排除されていく人もいる。とりわけ激務で体調悪化したりした経緯があったり、いわゆる「転職弱者」の立場であれば、再就職は一層困難になり、何十社何百社不採用といった経験を重ね、ひきこもりになったり、経済的に困窮していく人もいる。優秀だから引く手あまたとも限らない。

情報提供の呼びかけ

【セールスフォース日本法人の関係者・内定者の皆様へ】
今何が起きているのか、境遇について、実名・匿名での情報提供お待ちしております。「記事や投稿では触れてほしくないが、現状を伝えたい」という形でもお受けします。私のメールアドレス(hasets2015@(全角)gmail.com)までお送りください。

もしつながりのある方で削減対象となった方がいましたら、再就職のサポートに協力することを呼びかけます。

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