第二章　診断が下りた時期⑦　再就職

　紀香は障害者手帳を持って、命子と一緒にハローワークに行って、求人を検索した。しかし求人の条件を見ていて、ため息が出ることがあった。「一般事務、嘱託社員、月給14万円」「軽作業、パート、時給900円」このどちらかしかないのだ。

　紀香は、そのなかでも少しましなある求人に目を留めた。名前のよく知られた大企業で、一般事務、正社員、月給20万円という条件。窓口で相談員に詳しいことを尋ねてみた。相談員はその場で、企業の担当者に電話をかけてくれた。だが相談員は電話が終わると、「これ、身体障害者のみが対象ですね」。二番目にましな求人は、これも名前のよく知られた大企業で、一般事務、1年更新の契約社員、月給20万円という条件。だがこれも相談員から「身体障害者のみが対象ですね」。三番目にましな求人は、都内の区役所で、一般事務、臨時職員、月給17万円という条件。これは精神障害者や発達障害者も応募できる、と相談員に教えられた。紀香は、この求人に応募してみることにした。