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セールスフォース、諸般の事情で多様性イベント見合わせ。問われる登壇企業のコンプライアンス

ダイバーシティに取り組む企業が参加するオンラインイベント「ダイバーシティキャリアフォーラム2023」に2月16日に登壇予定だった、米IT大手・セールスフォースの日本法人、株式会社セールスフォース・ジャパンが、諸般の事情により登壇を見合わせたことが発表された。イベント主催者の認定NPO法人Rebitが、参加者への案内メールで2月9日夜に伝えた。

イベント主催者からの案内メール

16日に予定されているイベントは、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む企業のダイバーシティ担当者や人事担当者が実際の取り組みや企業風土についてプレゼンテーションし、参加者が質問をするなどして交流するというもの。同社のイクオリティオフィスで平等に関するプログラムを担う社員が登壇する予定だった。

同社では発達障害シングルマザーパワハラ雇い止め訴訟(2023年9月和解。解決金は210万~280万円と推定)やマネージャーパワハラ解雇訴訟(今後証人尋問予定)が起きた。また昨年1月から人員整理により500人以上削減中。リストラ対象者には、相場より極めて低額の特別退職金と引き換えに一切の請求権放棄、不公平な守秘義務、広範囲の誹謗禁止・秘密保持、1年間の競合転職禁止などを盛り込んだ退職合意書へのサインを迫っていた。

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セールスフォースが登壇を見合わせたことで、登壇企業は、キンドリル・ジャパン、アクセンチュア、モルガン・スタンレー、セガサミーホールディングスとなった。

モルガンスタンレーも解雇裁判中

登壇企業のうち、米国系証券大手モルガン・スタンレーは、韓国籍の元社員との間に解雇裁判を抱えている。東京地裁での2月15日15時30分からの期日で結審し、判決に進む。

元社員(当時エグゼクティブディレクター)は在職中、当時の日本人上司(当時取締役、現社外取締役)から長期にわたって国籍に基づいた攻撃的な発言を受けていた問題を会社が解決しなかったことを、グローバル本社のCEOにメールで訴えた。そのことで「会社のハラスメント調査の結果を口外しないという社内規則に違反した」とされて解雇された。元社員は「レイシャルハラスメントを訴えたことを背景にした不当解雇」と訴えた。(元社員支援団体ホームページ)

モルガンスタンレー東京本社前での元社員支援団体による街宣(2023年12月4日筆者撮影)

裁判では、ハラスメント調査が適切に行われたかが争点となった。証人尋問では、同社の人事部長(マネージングディレクター)およびハラスメント調査を担うER(Employee Relations)チーム責任者が、「調査の結果、上司の行為はハラスメントには該当しない、として終了した」「元社員は会社を信用すべきである」とアピールした。またERチームの調査に助言した弁護士が、調査後、元社員の退職勧奨にも関わっていたこともわかった。

元社員側は、「本人に丁寧に聞き取って訴えの内容を確認することなく、本人の言った覚えがないことまで調査事項に含めて行われた」「加害者からの謝罪の意思も、疑問への合理的な説明も伝えられなかった。結果が出てから、睡眠障害に悩まされた」「調査は適切に行われていない」と反論。

そうしたなか、2月16日のイベントでは、同社人事部タレントデベロップメントおよびD&I担当のヴァイス・プレジデントクラスの社員が登壇する予定。イベントのホームページによると、登壇者は新入社員からリーダー層の人材開発や、女性やLGBT+などの多様な人材の採用と育成のための戦略および施策の立案から実行までを担っているという。

(2月12日14:05訂正)モルガンスタンレーの裁判で、元社員の退職勧奨に関わった弁護士について、ERチーム責任者としていましたが、正しくは「ERチームの調査に助言した弁護士」でした。

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