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障害者を雇わず罰金を払い続けて訴訟になった企業

かつて、記事の題のようになった企業がありました。それは「納付金に相当する金額(4000万円~5000万円)の損害を企業に毎年与えている」というロジックでの株主訴訟でした。

今でこそJAL(日本航空)は障害者の雇用で優良企業として評価されていますが、20年以上前は法定雇用率(当時1.8%)を達成せず、年間4000万円~5000万円(未達人数1人当り月額5万円)の納付金を国に支払っていました。

納付金が年間4000万円~5000万円ということは、毎月不足数が66~83人程度生じていたことになります。今とは時代背景が違い、当時は大企業がそのくらい納付金を払っていても、誰も気にも留めない、そんな時代だったことが伺えます。これには、航空会社ということで、障害者が就ける職域が限られている、と考えられていたことも背景にあったのでしょう。

1999年、それを問題視した株主が、JALを相手取り訴訟を起こしました。それは2000年、JALが雇用率達成に向けて取り組むという方向で譲歩し、和解となりました。

またこの当時、障害者雇用率の未達成企業は情報公開制度の開示対象ではありませんでした。

上のJAL株主訴訟の原告はその後、2002年に、東京労働局に未達成企業の情報公開を求める行政訴訟および内閣府への情報公開審査請求を提起しました。それは2003年、判決に先行して内閣府の情報公開審査会が「企業名などは開示すべき」と答申し、裁判所が答申を追認する形で終結しました。

それから20年。雇用率未達成で納付金を払っていることが、障害者雇用の従業員訴訟が発端となって、厚生労働省の企業名公表を待たずして「公表」されることに。

今では、企業が雇用率を守っているかどうか、さらには納付金を払っているかどうかも、情報公開の対象になります。

とはいえ、それで現状追認していいのではありません。

社会的制裁としての企業名公表が企業へのプレッシャーとなって効果を発揮するようになった一方で、社内の理解が不十分なまま障害者雇用が進められ、定着しない問題が専門家から指摘されています。上の障害者雇用の従業員訴訟でもそれが背景にみられます。

国際的影響力のある外資系企業で、「ダイバーシティ&インクルージョン」の先進企業であるようにアピールしながら、日本法人では障害者の定着や雇用率達成への意識が疑われることは少なくありません。海外本社から感知しづらい日本支社での問題には、日本国内の当事者活動家やNGOが動くべきでしょう。

さらに望むこととして、雇用の質を担保すること、現場で働く人の意識改革にリソースを投入できる施策が必要です。

現状の制度のままでは、行政指導が入れば短期離職者が何人出ようが訴訟問題になろうが何が何でも短期間で大量採用して雇用率を達成する、ということになり、それでは定着を志向する障害当事者がそのような実態のところに安心して応募できるのか、という疑問が生じます。

またSDGs・ESGの高まりもあり、今後は、「雇用率を守っているかどうかを有価証券報告書に記載を義務付け、未達成企業の上場は認めない」と、東証や金融機関が宣言しないでしょうか。


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