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「直感」文学 *喧騒の間*

 夜の新宿に繰り出したはいいものの、僕は特にやることを見つけられずにいる。
 そもそもなんでここに来たのだろう、と疑問に思うが、家にいることでなんだかんだと溜まった鬱憤が、ただ無条件に僕を新宿に向かわせたことに理由を与えることの方が難しかった。
 週末の新宿は人がごった返し、様々な人間模様が伺える。きっとそれぞれに皆何かを抱え、それを一時でも忘れたいからここに来るんじゃないかと思えた。

 じゃあ、僕は何かを抱えているのだろうか。
 考えてみたところで、何も見つかりはしなかった。それはきっと僕が何も抱えていないことを示すのだろう。
 何も抱えていない人間がこの街に来ても、この街は素直に僕を受け入れてはくれそうにない。

 しょうがなかった。
 僕は何もしないまま、新宿の街に背を向ける。
 後ろからは賑やかな喧騒が聞こえたけど、僕にはもう何の関係もないようだ。
 僕が求めていたのは、新宿ではなかったということなのだろう。では、何を求めているのだろう、と考えてみても、やはりそこには何も見つけられない。
 気付けば僕は、自分の家の前に立っている。
 僕は最初から何も求めてなどいなかったのだろう。もしくは、求めていたのは、「新宿の街並みをちょっとだけ眺める」ことだったのかもしれない。

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