「直感」文学 *暇だから、タバコ。*
「……だって、暇だからタバコ吸うんでしょ?」
彼女が僕にそう言ったのは、散々泣き散らした後。
騒がしい居酒屋の中で、彼女はテーブルを思いっきり叩いてから、発した言葉だった。
……え?最後に言うことが、それ?
僕は呆気にとられ、ただ呆然と立ち上がった彼女を見ていた。
「え?……暇?なにが?」
情けない声が、居酒屋の中に立ち込めた。彼女が大声でそんなことを言うもんだから、騒がしかった店内は静まり返り、今は皆が僕たちの動向を伺っている。
「暇?暇ってなんだよ?」
と、僕だって別にそれを追求したいなんて思ってないのに、この静けさが僕に緊張を招き、本来求めているものとは違うものを求めてしまっているようだった。
いや、というより、ただ沈黙が怖かっただけなのかもしれない。沈黙が訪れてしまえば、次に彼女が何を言い出すか分からないから。
「いや、別に……」
彼女は座った。ただ、座った。先ほどまでとても怒っていたはずの彼女は、ただ静かに座り込んでしまったのだった。
さて、彼女は当初何に苛立っていたのだったか……。僕はそれを忘れてしまったようだ。
それよりも今は、僕がタバコを吸っているのか、暇だからなのか、そうでないのか、ただそれだけが頭の中を彷徨っている。
僕たちは何の話をしていたのだっけ?
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