創作に対する妄想力(その1)
はじめに
2020年から不定期に続けてきたこのブログですが、投稿4年目ともなると少々ネタに困ってきて先日、「読んでみたいテーマ」で社内アンケートを募りました。
すると、創作に対するアイデアの生み出し方、ガレージ時代から今までのヒストリー、やる気の出し方……などなどのテーマが挙がりました。
最も要望が多かったのは「創作に対するアイデアの生み出し方」。
自分が長年やってきたことだけあり、書いているうちにどんどん筆が捗っていき、気がつけばかなりの長編になりました。
そこで今回は『yuhaku 仲垣の妄想デザイン論』として全5回の集中連載にしていきます。
章立てて毎週投稿しますので、創作に携わっている人、デザインに行き詰まっている人、創作してみたいけどどこから始めたらいいかわからない人も、もちろんそうでない人たちにも、自分だったらどうだろう?と、妄想しながらお読みいただければと思います。
第1章 ミリョクの秘訣を、突きとめる
「クリエイター」と呼ばれる人々にはさまざまな創作タイプの人がいます。アクティブな人、自身の内側とじっくり対面する人、日常生活がひらめきに結びつく人。
自分の場合は、海外に行って現地で目にする様々な物から素晴らしいアイデアが舞い降りて……。ではなく、もっぱら「ネット」と「妄想」からインスピレーションを得ているんです。
創作の第一歩として、創造のベースを作るためには多くの情報が必要だと考え、日ごろからたくさんの情報を吸収することを習慣づけています。創作というのは、手を動かしていたり、気に入らないツボを割っていたり(笑)……と、アウトプットシーンだけがその行為に該当すると思われがちですが、そこに至るまでのインプットも過程の一つであり、手を動かすのと同じくらい重要です。
そして、インプットする前には、やるべき準備があります。
それが、「ペルソナの設定」です。まず、どんな商品を生み出す必要があるのか、どんな商品を生み出したいのかを考え、そこからペルソナとなる人物を見つけます。ペルソナというと難しく感じるかもしれませんが、ファッションスナップなどを見て、こんな人に持ってもらいたいというラフなイメージづくりで良いと思います。ここで設定したペルソナがデザインの指針となり、創作の方向性がブレることを防げるのです。
デザインソースのインプットにおいては、PinterestなどのSNSはもちろんのこと、海外のデザインサイト、雑誌、書籍もよく見ています。
楽しくインプットしたい方は非現実感を味わえる映画やゲーム、有機的なデザインがお好きな方には動物や昆虫の観察もおすすめです。しかし、ついつい楽しみが優先してしまいインプットという目的を忘れないでくださいね。自分の場合は、建築、インテリア、車、工芸品をメインに、幅広いジャンルのデザインに触れています。この段階では、鞄や財布などの革製品のデザインはほとんど見ていません。
デザインソースのインプットにおいて、一つ、自分のよくやっている見方を紹介します。それが、「ディティールをクローズアップするトリミング(切り取り)&縮小」です。
例えば大きな建築物を「インプット」して、そのまま鞄のデザインに取り入れることはお勧めできません。どうでしょうか。そっくりそのまま「凱旋門バッグ」!! (笑)
そうではなく、普段目にしない箇所に焦点を当てることで新たに見えるものがあります。たとえば、建築物の一部を拡大して観察すると、補強のために入っているパーツが美しかったりします。巨匠と呼ばれるザハ・ハディッドの優美かつエキセントリックなデザインも、拡大&トリミングしてみると普遍的な美しさを持っています。
さらにミクロのレベルまで拡大するとどうでしょう。例えば孔雀の羽根。顕微鏡で拡大するとこれまでに想像もしたことのない世界が見えてきます。さらにさらに、DNA配列や分子構造まで見てみると、普段眼にする事のないデザイン性に触れることが出来ます。一つの対象をあらゆる角度、大きさから見ることでストーリーを見出せることがありますし、深堀するとテーマ設定もしやすくなります。
こうしてデザインに触れていく中で、本当に好きなデザインに出会ったときには、ただカッコいい!!綺麗!!と思うだけでなく、「なぜこのデザインが琴線に触れたのか?」を自分なりに分析し解釈することが重要です。解釈の精度は、インプットを繰り返していくうちに上がっていきますので、最初はそのデザインの美のメカニズムをじっくり観察し、純粋に向き合いましょう。この際に、今ひとつピンとこないデザインも分析すると、失敗デザインの法則も見えてきます。この繰り返しにより、「美しいデザインとはどのようなデザインなのか」が体感的にも論理的にも蓄積されていきます。見出すことのできた法則や要素は、可視化できるようにまとめておくとベターです。(デザインする上で多いに助けになってくれるからです)
気づきの蓄積が体系的になっていくにつれ、目にしたデザインに対して「こうすればもっと良くなるのに!!」というアイデアが瞬時に出て来るようになります。
ただ、この段階では他者のデザインの編集は出来ても、ゼロイチは生み出せません。
しかし、モノに溢れすぎたこの時代にゼロイチの新たなデザインというのは無理に等しいので、「この要素の組み合わせは今までなかったよね」「オリジナリティも感じて、いいデザインだね」という客観的な視点を手に入れることで、自分自身がデザインする際にも妥当な着地点を設定できるようになり、何よりも、少し気楽にデザインできるようになるでしょう。
次章「妄想力を磨く」 (10月27日更新!!予定…)