見出し画像

オオスズメバチのはなしと撮り方(絶対にマネしないでください)

昔撮った写真を、生態なども交えて解説していきます。今回はオオスズメバチの写真です。

【ストーリー1 オオスズメバチってどんな虫?】

画像1

撮影日:2008年10月16日

オオスズメバチは世界でも最大級のハチで、毒性も強く危険なハチです。秋口にかけて獰猛になるのでこの季節は近づかないのが吉です。

この写真は私が大学4年生のとき、大学の農園で撮影したものです。農学部だったので果樹園や農場が構内にあるのですが、その端っこで撮ったものです。

暗くて見えずらいですがスズメバチの背後に木箱が見えますね。あれはミツバチの巣箱なんです。なんでミツバチの巣箱にオオスズメバチが?

オオスズメバチ含めスズメバチは肉食性です。スズメバチたちにとってはミツバチの巣箱というのは幼虫やさなぎなどが豊富に蓄えられている食物庫のようなものです。襲撃に成功すると莫大な量の食べ物が手に入るわけです。

肉食性であるオオスズメバチはイモムシやコガネムシなどを食糧としますが、それらが少なくなる秋になると、より活発にミツバチの巣を襲うようです。

彼女ら(働きバチは全員メス)も生きるのに必死です。

【ストーリー2 オオスズメバチとミツバチの関係】

冒頭の写真のときはすでにミツバチの巣箱は全滅させられ、巣箱はオオスズメバチに占領されたあとでした。

画像3

春にはこんなに賑わっていたのに………

画像4

オオスズメバチに占領されたミツバチ巣箱

オオスズメバチはまず1匹が斥候としてミツバチの巣に襲来し、その後集団を呼び寄せて一気に占領する戦略をとります。およそ20〜30匹程度のオオスズメバチで数万匹のミツバチの巣を全滅させられると言われています。

最初の1匹をやっつけることができれば、その後の集団略奪を防ぐことができます。この最初の作戦について日本にいる2種類のミツバチ、すなわちニホンミツバチとセイヨウミツバチで戦略がまったく違います。

日本在来種のニホンミツバチはオオスズメバチ撃退方法を進化させてきました。斥候役のオオスズメバチをおびき寄せると一斉に数十匹のミツバチでおしくらまんじゅうにして発熱、スズメバチを熱殺します(熱殺蜂球という)。斥候をやっつけてしまえばその後の集団略奪を回避できます。

オオスズメバチの致死温度がおよそ45℃、ニホンミツバチの致死温度はおよそ50℃です。熱殺蜂球内の温度は46℃程度まであがり、ギリギリ両者の死を分ける温度となっています。
ずっとオオスズメバチと共生してきたニホンミツバチならではの戦略と言えます。

それに対してセイヨウミツバチはどうでしょうか。結論から言うと、セイヨウミツバチはオオスズメバチに対する有効な策を持っていません。人間の保護がなければ高確率で全滅します。
戦略を持たないセイヨウミツバチはステゴロのタイマンをオオスズメバチに挑み続け片っ端から大顎で噛み殺されてしまいます。

画像6

巣から連れ去られて大あごで解体されている



外来種であるセイヨウミツバチがもともと生活していた場所ではオオスズメバチがいないため、対オオスズメバチの戦略が進化しなかったんですね。
(セイヨウミツバチも蜂球を作るという報告もあり、これは熱殺ではなく窒息によりオオスズメバチを殺すようです。成功率は低め)

画像5

1匹のオオスズメバチ死体のまわりには殺された無数のセイヨウミツバチ

セイヨウミツバチが日本で野生化できないのはオオスズメバチの存在が大きいですが、これは競合相手であるニホンミツバチの分布をオオスズメバチが守っているという見方もできます。

ニホンミツバチはオオスズメバチの襲来や環境変化による食物の減少、などといった嫌なことが起こるとさっさと巣を引っ越してしまいます。ニホンミツバチは養蜂するのが大変なので、セイヨウミツバチが輸入されました。しかしオオスズメバチのおかげでセイヨウミツバチは野生化できず、ニホンミツバチの存在が守られているのです。

【オオスズメバチの習性と撮影方法】

画像7

冒頭の写真の解説をします。
※注意!!絶対にマネしないでください。命の危険があります。

カメラ:Nikon D80
レンズ:sigma17-70㎜ macro
f22、ISO200、1/60
マクロ用のツインストロボをリモート発光させています

ミツバチの巣を占領したオオスズメバチは防衛モードになります。これは自分たちの巣を守るのと同じモードで、近づく侵略者に抵抗する体制です。まずは威嚇のために大あごをカチカチと鳴らして警告し、そのあと毒針で襲いかかります。

この写真は「カチカチしてる間なら刺されないだろ」という楽観的な発想で撮影しています。すなわち、占領されたミツバチの巣に近づき、威嚇モードのスズメバチがカチカチ鳴らしているのを逃げながら数枚撮影してから全力で逃げる、という方法で撮っています。

言うまでもなく、いきなり刺されることもあるので危険極まりない撮影だと思います。

この場所はまわりに人がいませんでしたが、周囲に人がいる状況では巻き添えにする可能性もあります。絶対にマネしないでください(やる人はいないと思いますが)。

ちなみに「2回刺されたら死ぬ」という話がありますが1回でも死ぬときは死にます。2回というのはアナフィラキシーショック(アレルギー反応の重症化)が死因とする話だと思いますが、1回目でも毒のショックで死ねます。

ちなみに私は4歳ごろにオオスズメバチにつむじのあたりを刺されています。幼少の記憶ですが、チクっというよりは棍棒で頭をガーンと殴られたような衝撃が走りました。そのあと祖母が毒をものすごい力で毒を絞り出してくれたのですが、こちらも劣らず相当痛かった覚えがあります。

さて、撮り方ですが、これはピントはマニュアルフォーカスでピント位置を固定しています。当時のカメラはAFも遅く、空中の昆虫にピントが合わせられるような代物ではありませんでした。

MFでピントを固定し、その距離に被写体が来たときに連写するわけです。マクロ撮影なので被写界深度が浅くなるため、絞りもf22まで絞っています。ストロボのおかげでシャッタースピードが遅くてもブレることはありません。

数百枚撮影して、なんとかみれる写真になったのがこの一枚でした。

このMF固定の撮影方法は、マニュアルフォーカスができるカメラならどんなカメラでもできます。失敗写真もたくさんになりますが、繰り返し練習するとだんだん感覚がつかめてきます。

ポイントとしては、広角で撮ること、早いシャッタースピードで撮ること(ストロボなしの場合)、なるべく絞ること、でしょうか。
特別な機材を使わずにこれらの条件を満たすためには、カンカン照りの晴れの日に感度を上げて撮影する必要があると思います。もし好条件な日があったらぜひ試してみてください(安全な虫で)。

以上、ここまで読んでいただきありがとうございました。


この記事が参加している募集

カメラのたのしみ方

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?