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アイドルと、誹謗中傷と発信者開示請求

<参考資料>
日本加除出版「地下アイドルの法律相談」
深井剛志・姫乃たま・西島大介/著 
https://idol-horitsu.com
深井剛志 X アカウント
@TSUYOSHIFUKAI
https://x.com/tsuyoshifukai
寺嶋由芙 Xアカウント
@yufu_0708
https://twitter.com/yufu_0708





寺嶋
 podcast「アイドルと法律!」
この番組では、ソロアイドル11年目、フリーランスのアイドルとして働くゆっふぃーこと寺嶋由芙が、アイドルの労働問題に詳しい弁護士としてご活躍の深井剛志先生から、アイドルが知っておくべき法律を学びます。
日本加除出版株式会社から発売されている「地下アイドルの法律相談」著者でもある深井先生が、働くアイドルゆっふぃーに、アイドルが直面しがちな労働問題をわかりやすく説明してくれます。

整えよう、あなたの推しの労働環境!
というわけで、皆様よろしくお願いします。古き良き時代から来ましたまじめなアイドル、まじめにアイドル!ゆっふぃーこと寺嶋由芙と

深井 弁護士の深井剛志です。

寺嶋 よろしくお願いします。今回は深井先生の書かれた本、「地下アイドルの法律相談」に載ってない話をする。

深井 はい。

寺嶋 本には載せてない?その頃まだそんなに問題じゃなかったとか?

深井 取り上げようと思ってるテーマはいくつかあるんですけど。この「地下アイドルの法律相談」で書いたのは、事務所との労働トラブルみたいなものをメインで取り上げたので。(今回からは)事務所との労働トラブルではないけれども、アイドルが直面しがちな法律問題。それを取り上げようかなと。

寺嶋 いろいろあるんですね。

深井 それと、労働問題ではあるんだけれども、ちょっと取り上げきれなかった問題も取り上げられればなと思います。

寺嶋 ぜひ、本と合わせて楽しんでいただけたらと思うんですが。じゃ、今日のテーマは?

深井 誹謗中傷と発信者情報開示。

寺嶋 よく聞きますね、これ。

深井 うん。「誹謗中傷」という言葉ですね。

寺嶋 「誹謗中傷」って定義とかあるんですか。「悪口」とかとは違う?

深井 うん。「誹謗中傷」って、実はですね、法律用語ではない。

寺嶋 へー!

深井 法律の中に「誹謗中傷」っていう言葉が出てくるわけではない。

寺嶋 そうなんだ!…じゃ、なんなんだ???

深井 辞書で引くとね、誹謗とは、悪口だとか、中傷ってのは、なんか根拠のないことで貶めることとかね。

寺嶋 デマとか?

深井 デマってことですかね。そういう風に書いてあるんですけど、じゃ、それとぴったり当てはまる法律用語があるかっていうと、ない。

寺嶋 「侮辱」とかと違う?

深井 侮辱とは、ちょっと意味合いが違いますね。

寺嶋 「名誉毀損」は?

深井 名誉毀損っていうのが、みんながよく思ってる誹謗中傷の意味なのかな、という風に思われがちですよね。

寺嶋 でも、だからってピッタリ一緒なわけじゃないんだ。

深井 一緒なわけじゃない。なので、この放送では、「誹謗中傷」と「発信者情報開示」とさっき言いましたけど。基本的に法律の番組なので、名誉毀損っていう言葉を使って解説していければなという風に思いますので。今後はね、「名誉毀損」とはどういうものなのか、そういったところからアプローチしていければなと思います。

寺嶋 名誉既存とはどういうものなのか???んーーーーーーーと……でも、なんでもダメな気もするし、でも、そこまで大袈裟にしちゃいけない気もするし、難しい。例えば私が「バーカ」って言われたら嫌ですけど、じゃあ名誉が毀損されたかって言うと、わかんないし。

深井 なるほど。

寺嶋 「ブス」って言われても嫌ですけど、名誉毀損か?って思う。
でも、例えば、「ゆっふぃー、まじめなアイドルとか言ってるけど、裏でこんな犯罪してるよ」とか言われたら、「違うけど!」って思って、それはちょっと、ちゃんと立ち向かいたいかな。

深井 なるほどなるほど。

寺嶋 うんうん。

深井 結構ね、近い感覚だと思いますよ。その感覚が、本当のその、名誉毀損の法律上の意味合いに結構近かったなと思って聞いてました。じゃあ、名誉毀損って何かって言うとですね、これ、この放送を聞いてくれてる人だったらそろそろお馴染みかなと思うんですけど。はい、3つのランプがまた登場しましてですね。名誉毀損っていうのは、3つの要件、「法律要件」っていうんですけど、それが成立した時に成立する。

寺嶋 うんうんうん。

深井 で、その1つ目が、まず、「相手の社会的評価を低下させる」です。

寺嶋 社会的評価。

深井 社会からの評価が低下する。さっきの例で言うと、「寺嶋さんが裏でこういうことやってる」と、なんですかね、例えば、「信号無視してるよ」とかね。

寺嶋 んにゃー!ダメだよ!

深井 とかね。信号無視は犯罪なんですけど、「犯罪してるよ」とかね、「こういうことしてたよ」という風に言われたら、その人の社会から受ける評価って低下するじゃないですか。それは名誉毀損の1つ目のランプに当てはまるんですよ。
で、1つ目のランプは「社会的評価が低下するか」だと。さっきの例で言うと、「バカ」と言われると、それ、ムカつきますけど。「バカ」って言われたら、イラっとするし、ムカつきはするけど、じゃあ、言われただけで、傷つきはするけれども、その人が社会的評価が低下するわけじゃないですよね。その人、言った人が、言われた人に対してバカだと思ってるということだけなので。

寺嶋 でも、「ゆっふぃーってすっごくバカなんですよ」っていうのをめちゃくちゃ広められたら?

深井 それは言い方が違いますよね。

寺嶋 そっか。

深井 相手の人にバカって言うのと…

寺嶋 「こんなにバカですよ!」って広められるのは…悲しいな、言ってて。

深井 (単に「バカ」と言うのとは)ちょっと違いますからね。という違いです。だから、そこの違いがまずあります。で、2つ目が、「事実を摘示すること」です。

寺嶋 「事実を摘示」ってなんですか。

深井 摘示、示す。

寺嶋 うんうんうんうん。

深井 「事実の摘示」というのが必要になります。例えばなんですけど、うーんとね、じゃ、さっきの例で言うと、うーんと…あの、ちょっと「寺嶋さんが(悪いことをした)」って言うのがなんかすごい…

寺嶋 いいですよ( ̄∀ ̄)

深井 だから、「この人は悪いことをしていた」、「これこれという犯罪をしていた」、「信号無視をしていた」、これ事実じゃないですか。それを示すことです。

寺嶋 うん?うんうん、そういうことか!

深井 うん。そうじゃなくて、例えばなんだけど、「この人とは私は一緒にいたくない」。って仮に言ったとしたら?「この人のことを嫌いです」と言ったとしたら?

寺嶋 それは主観だわ。

深井 主観。「この人と一緒にいたくない」っていう自分の気持ちだとか、「嫌いだ」という気持ちを言っただけであって。何らかの事実を示したわけじゃないですよね。だから、別にそれは事実の摘示に当たらないと。

寺嶋 「この人のことが嫌いです」なら、事実の摘示じゃないけど、「この人はこんな悪いことをしたから嫌いです」だったら、事実の摘示になる。

深井 それはなりますね。で、その事実の摘示っていうのが2つ目のランプになりますね。で、3つ目が「公然性」。要は不特定多数に知らしめるです。「あなたはこういう犯罪をしましたね」と一対一で言う。それは言われた方がムカつくでしょうけど、それによって社会的評価が低下するかっていうのは、いろんな人に言われるから低下するんですよね。

寺嶋 うんうんうんうんうん。

深井 不特定多数の人に言われるからその人の社会的評価が低下するのであって。

寺嶋 その「不特定多数」ていうのって、何人からとかは決まってないですよね?

深井 それは決まってないですね。

寺嶋 例えば、職場の中で、結構力のある何人かにそれを言われちゃって、信じられちゃって、降格させられるとかってなった場合、別に不特定多数じゃないけど、この人たちにバレたら、というか、それが事実であるしないに関わらず、「この人たちに言われちゃったら自分が立場が悪くなるぞ」っていうところをピンポイントで言われてた場合は?

深井 それはですね、その公然性の要件の中に、「伝播可能性」

寺嶋 広がっちゃう可能性?

深井 広がっていく可能性があれば公然性ありという風に言われております。

寺嶋 じゃ、たとえそれが3人だけだったとしても、その3人に知られたことによって自分の立場が悪くなり、「え、あの人なんか悪いことしたの」みたいになって広がるから…ってこと?

深井 「広がる可能性があれば」です。その3人が力ある人だからっていうのはあんまり関係なく。

寺嶋 そうなんだ。

深井 うん、その3人に言ったことで広がる可能性があるかどうか。だから、そうですね、友人3人に言いましたよというのと、暴露系youtuber3人に言いましたよというのは

寺嶋 ぜんぜん話が変わってくる!

深井 ぜんぜん違うよね、話がね。暴露系youtuber3人に行ったらそれもう広がるの目に見えてるじゃないですか。それはもう伝播可能性ありと言われますよね。

寺嶋 そういうことか。

深井 で、例えばSNSに書き込んだと。で、SNSのフォロワー、自分は5人ですと。だから公然性ないですよと言えるかどうかって言ったら、それ広がる可能性ありますよね、SNSだったら。だから、公然性ありになる可能性はあります。

寺嶋 ふーん。

深井 不特定多数じゃなくて、フォロワー5人しかいないんだから、5人しか見れないんだから公然性ないですよね、っていうのが通用するかって言ったら、そんなことはないですよ。広がっていく可能性、伝播可能性があるかどうか、それが要件3つ目のランプになりますね。

寺嶋 その3つが揃ったら、名誉毀損なんだ。

深井 そうですね。だから結構その名誉毀損って成立する範囲は狭いと思いますよ。

寺嶋 「ちょっと嫌なこと言われた」ぐらいじゃ違うんですね。

深井 そうですね。

寺嶋 ふーん。でも今は割とこう、アイドルやってる子ってSNSをやることが多くて、SNSの中でちょっとこれは嫌だなっていうことを言われちゃうことが問題になってるじゃないですか。

深井 はい。

寺嶋 だから誹謗中傷ということがこんなに問題にされてるけど、誹謗中傷が名誉毀損だとも限らないと。

深井 そうですね。だから、誹謗中傷と名誉毀損、何が違うんですかって言われても、同じ土俵のものじゃないので、なんかすごく判断しづらいんですけど。

寺嶋 いや、今でもそれ聞いてわかってきました。例えば「ブス」とか「ぜんぜん可愛くない」みたいな悪口をいっぱいSNSとかで受け取っちゃったとしても、それは名誉毀損ではないってことですね。

深井 「ブス」とか「バカ」とかをSNSに書いたら、名誉既存にはならないですね。ただ、「侮辱」にはなるかも。

寺嶋 侮辱!それも罪ですか?

深井 「侮辱罪」という罪はあります。でも、今僕が言ったのは、民事的な意味での侮辱で。刑事の侮辱と、民事の侮辱と意味が違うんです。

寺嶋 へー!

深井 名誉毀損は、ほとんど一緒なんですけど。名誉毀損は、刑事責任も発生するし、民事責任、それ、賠償責任ですね、要は。刑事の罪になるかどうかって話と、民事の賠償責任が発生するかどうか。それはね、ほとんど一緒です。名誉毀損に関しては。でも、侮辱罪は、民事と刑事がちょっと意味合いが違います。

寺嶋 ふーーーーん!民事は、「その侮辱をしたことのお詫びに賠償してください」ってなる?

深井 そう。で、何が違うかっていうと、民事の侮辱罪は。社会的評価を低下させなくても成立する。

寺嶋 へえ!

深井 だから、「バカ」とか「ブス」で成立する。

寺嶋 こっち(された方)が嫌だって思ったら、(侮辱した)相手が嫌だって思ったら成立する。

深井 はい。なので、結構成立しやすいですね。うん。僕は、なんか、「デブデブ」っていうことを結構散々掲示板に書かれてた人の…その人、一般人ですけど。でも、youtubeやってるのか。youtuberですけどね。youtubeを細々とやってる人なんですけど、その人に「ブス」ってすごい掲示板で書いてた人に対する侮辱を認めさせました。

寺嶋 そうすると、侮辱をしたお詫びに賠償?

深井 慰謝料を払います。

寺嶋 慰謝料か。侮辱罪になるとちょっと違う?

深井 侮辱罪になると、侮辱罪と名誉毀損存の違いは「事実を摘示したかどうか」。

深井 あー!

寺嶋 なので、事実の摘示がないもので社会的評価を低下させないとダメ。社会的評価を低下させて公然とやったんだけど、事実の摘示がないもの。それが侮辱です。

寺嶋 例えば、なんだ????

深井 例えば、なんですかね。

寺嶋 事実の摘示がないのに、社会的評価を下げるぐらいひどいこと?だって、「こんな悪いことしたからこうなんだ」っていうのは、事実の摘示になっちゃうから…事実の摘示がない…???今、自分の悪口フォルダをね、検索してます、自分の中の。「事実の摘示がないけど、それ言われたら、周りもめっちゃ嫌な気持ちになって、こいつ嫌なやつかもって信じちゃうようなこと」。なんだ?????例えばどんなことですか?侮辱罪。

深井 よく言われるのは、そうですね。例えば、会社に対して「ブラック企業だ」とか言うのは、「これこれこうだからブラック企業だ」とか、ちゃんと事実を書いてれば、それは名誉毀損になるかもしれないですけど。単に「ブラック企業だ」というだけだと、それは事実じゃなくて、評価を伝えてるだけなので、侮辱罪になるかもしれないですね。

寺嶋 確かに社会的地位がちょっと減るというか。「え、そうなの?」って思っちゃう人もいますもんね。

深井 そう。

寺嶋 なるほど。でも、これはすごく、なんか今っぽいって言ったらあれですけど、現代にめちゃくちゃ増えてる案件なんじゃないですか?こういう名誉毀損とか侮辱罪に関すること。

深井 やっぱり、インターネットの発達がすごいですよね。

寺嶋 昔はどうだったんだろう?

深井 いや、だから、僕が法律学び始めた時なんて、名誉毀損って言ったら、週刊誌がやるもんでしたよ、基本的には。

寺嶋 なるほど!それがもはや一般人まで!

深井 はい。だから、名誉毀損で有名な裁判例とかって。うん、全部週刊誌とか、本とかそういうものですよ。

寺嶋 そっか。なかなか一個人でそこまで大きな影響を持つ発信ってなかったですもんね。

深井 うん。だから、情報の発信者っていうのが、大手マスコミだったり、そういう人にしかなかった時代ですよね。やっぱりね。

寺嶋 この、時代がすごい勢いで変わってる中で、法改正がきっと間に合ってないこと、いっぱいありますよね。

深井 うん。だから、やっぱり、近年、侮辱されてしまった芸能人の方だったりとかが、よく自死されてしまってる例があって、その、侮辱罪とかの厳罰化が叫ばれてますけど。それはそれで、一方として、表現の自由をね、どこまで規制するのかっていう話に繋がっていくので、非常に難しい問題ではありますけどね。

寺嶋 でも、「表現の自由は大事だけど、人のこと悪く言っちゃダメじゃない?」って思う。

深井 うん。人をね、傷つける自由まであるわけではないので。

寺嶋 うん、そうですよね。でも、じゃあ、いいことばっかり言ってればいいかっていうと、違う時もあるじゃないですか。ちゃんと怒んなきゃいけない時とか、NOを言わなきゃいけない時もあるけど、でもそれって誹謗中傷と違いますもんね。

深井 そうですね。誹謗中傷は本当に、根拠ないことを言うことなのかなとは思ってますけど。

寺嶋 むむむむむ。じゃあ、今、そういう誹謗中傷されて、事実無根なのに名誉を毀損されたりとか侮辱されて悲しいっていう話でしたけど…ほんとだったら?

深井 その、言ってることが本当のことだったら、ってことですかね。

寺嶋 そうですね。「こんな悪いことしてるんだぜ」っていうのが本当だったら?

深井 信号無視してることが本当だったらと。

寺嶋 がーん。

深井 その場合、「本当のこと言ってるだけですよ」っていう反論とか、よくしてる人いますけど。

寺嶋 それはなんかこう、暴露っていうか、なんて言うんでしょう、「事実だからしょうがないじゃん」みたいに言われちゃうのかな。

深井 で、基本的な考え方は、さっき言った通りです。ランプが3つつくかどうかです。で、ランプが3つつくかどうかの中に、

寺嶋 あ!「ほんとかどうか」のランプはなかった!!!

深井 ないでしょ。だから、成立はします。

寺嶋 へー!!!

深井 うん。本当であっても、名誉毀損は成立します。

寺嶋 へー!!!

深井 ただし、法律には、ついたランプを全部消す効果ってのがある。

寺嶋 なんだそりゃ!!!強いのがある!?!?

深井 強いカードがあるんですけど、

寺嶋 なんですか?それ欲しい!

深井 それが「違法性阻却事由」って言って、その大きいランプ1個がつけば、強力なランプがつけば、違法性がなくなる。要は名誉毀損が成立しなくなる。

寺嶋 「そきゃく」ってどういう字ですか?

深井 「阻む」。「きゃく」は却下の「却」。

寺嶋 うわあ!阻んで却下するんだ、違法性を!かっこいい!

深井 そういうでっかいランプがあるんです。それがつけば、さっき言った3つのランプがついてても、うん、それはもうないよと、消せるよという風になる。そういう効果を持つランプがあるんですね。

寺嶋 それはどんな時つくんですか!?

深井 そのでっかい強力なランプをつけるのも、実はランプが3つ必要

寺嶋 えええええ。

深井 そういう風に考えてるんですよ、法律家って。

寺嶋 すごいな!道筋が。

深井 それが法律家の頭の考え方です。

寺嶋 何がつけばいいんですか?

深井 じゃあ、その強力な違法性阻却事由のランプをつけるのに必要なことは。まず1つ目は、まずそれが「真実であること」ですよね、当然。さっき言ったように、「真実である場合はどうなんですか」というね、話でした。うん。真実であることがまず1つ。

寺嶋 はい。

深井 で、2つ目が、「公の利益」

寺嶋 あー!「コウエキセイ」だ!

深井 う、うん、「公益」…。

寺嶋 「公益」(゚ω゚)

深井 公益ね。

寺嶋 「公益があれば言っていいじゃないか」っていう人いますもんね。

深井 公の利益を図ること。うん。公の利益があることですね。で、3つ目が、これちょっとかぶっちゃうんですけど、公の利益を図る目的がある。

寺嶋 「公の利益になるって確実かわかんないけど、公の利益のために頑張って言います」ってこと?

深井 そう、そうですね。

寺嶋 「(公の利益に)なるってこっちは信じてます」ってこと?

深井 うん。で、そういう目的を持っていて、かつ、公の利益が客観的にあることです。主観と客観が違くて。

寺嶋 うん?

深井 公の利益がなくて、公の目的がある場合もあるじゃないですか。

寺嶋 んにゃ?

深井 例えば、芸能人のスキャンダルを発表する。それが公の利益ありますか?

寺嶋 ないんじゃないですか?

深井 ないでしょうね。おそらく僕もないと思うんですよ。で、その時に、発信した人は、「これは公の利益に当たる」と思ってた場合。

寺嶋 ああ~

深井 っていうことですよ。客観的には公の利益ないんだけど、その人はあると思っていた場合。それが主観と客観がずれてる場合。

寺嶋 うんうんうんうんうん!

深井 主観的にはあると思ってたんだけど、客観的にはないってことがあるじゃないですか。

寺嶋 はい。

深井 で、逆もありますよね。

寺嶋 逆もあります???

深井 うん。本人はもう嫌がらせのためだけ。

寺嶋 あー!!えー!!!!

深井 嫌がらせのためだけにこの人のスキャンダルを暴露していたんだけど、

寺嶋 実は公益があった!

深井 うん。じゃあ、そのスキャンダルの内容が首相だった。首相だったら、多分あるでしょうね。

寺嶋 そうですね。うん。一政治家とかだとまたちょっと違う?

深井 多分ある。あると思う。で、そういう風に、本人としてはもう嫌がらせで、こいつ憎しでやってたとしても、でも、「この事実は確かに公益あるよね」っていう場合もあるじゃない。

寺嶋 そんなパターンもあるのか!

深井 だから、主観と客観ずれる場合があるんです。

寺嶋 そうですね。

深井 うん。だから、その両方がないとダメだよって。

寺嶋 両方がないとダメ。

深井 僕が言ったランプの2つ目は、公益性があること。

寺嶋 じゃ、「結果として公益性があった」じゃダメなんだ。本人もちゃんとそのために動いてて、かつ結果も伴っていれば、オッケー。

深井 そう。3つ目のランプが「主観」だから。公益を図る目的もあって、かつ公益性もあるっていう状態じゃないとダメ。

寺嶋 それだと、相手から「名誉毀損だ」って言われても、「公益のためだったんだから」って言って、なんだっけ、違法性、阻却、性?

深井 事由。

寺嶋 事由ができる。

深井 っていうことです。

寺嶋 へえ。

深井 うん。で、今…

寺嶋 え?ちょっと、止めてごめんなさい。嫌がらせのためにやってたら。それ(そのランプ)は点らない?

深井 ダメですよそれは。嫌がらせのためにやってたら、もうアウトです。

寺嶋 嫌がらせのために、日本の国民のみんなのためになるような大事な情報を言ったとしても、「名誉毀損ですよ」って言われちゃうんですか?

深井 公益を図る目的がなければ。

寺嶋 そうなんだ!へえー!意地悪はするもんじゃないってことですね。

深井 そう。意地悪でやってたらダメです。

寺嶋 そうなんだ。

深井 うん。で、今の話というのは。はい。芸能人とかが、週刊誌でいろんなこと書かれたと。それは名誉毀損だと。訴える時によく使われるね攻撃と防御の方法で。芸能人側、書かれた方がね、いや、これは名誉毀損だと。社会的評価を低下させる、公然性のある表現だということで、「名誉毀損だ」って芸能人側は訴えますよね。はい。それに対して、週刊誌側は、いや、これは公共の利益を図る目的があって、公共性があることだと。で、真実ですよってことで、それに立ち向かう。そういうやりとりを名誉毀損の裁判ではすることがとても多いですね。

寺嶋 そうなんだ。いや、なんかこう、人のことを暴くっていう言い方あれですけど、公にするのってすごくリスキーなことなのに、どうしてそれがずっと続いてるんだろうって思ったら、一応、そっちはそっちで言い分があるってことなんですね。

深井 そうですね。その有名人がどれだけ有名かにもよりますけど、そういうことを発信することで、国民の関心事である、有名人ついての情報を与えると、知る権利に奉仕してるんだと、そういう言い方をしますよね。

寺嶋 それはでもメディアだから成立する言い方であって、個人間とかだとちょっと変わってきます?

あんまりないでしょうね。おそらくね、そういうのは。

寺嶋 そうですよね。でも、例えばこう、SNSで一個人がアイドルのことをひどいことを言って、「でもこれは攻撃のためなんだ、こんな子がアイドルしてちゃダメだからあえて言うんだ」みたいなことを主張してくることもあるんですかね。

深井 それはあるかもしんないですけどね。ただ、その場合にちょっとどれだけ有名かにもよりますけど、地下アイドルでね、細々と活躍、活動している子の私生活を暴露することが公益に資するかって言ったら、それはないですよね、多分

寺嶋 そうですよね。なるほど。ということは、そういう規模で活動してるアイドルが誹謗中傷された時にできることは?

深井 やっぱりもう誹謗中傷されたら、名誉毀損されたらという意味で受け取りますけど、基本的には相手に対する損害賠償請求になりますよね。相手を特定して、裁判ないし、慰謝料請求をすると、それが取りうる法的手段になりますよね。

寺嶋 大変だ。しかも、相手はハンドルネーム、ニックネームだったりすると、特定するのも大変ですよね。

深井 そうですね。どこの誰かわからない、偽名だったり、もしくはもうね、明らかなハンドルネームだったりね

寺嶋 だって、男女だってわかんないですもんね。

深井 そういう時にね、その相手を訴えられるかって問題が次に出てきます。

寺嶋 ていうのが、開示請求?

深井 よく言われてる「発信者情報開示」、「開示請求」ってやつですね。それは「プロバイダー責任法」っていう法律があって。プロバイダー、そのインターネットを提供している会社、通信会社が、そういう権利侵害があった時に、その書き込んだ人の情報を開示させることができる法律なんですね。

寺嶋 うん。

深井 なので、それもやっぱり要件があります。その開示請求を認めさせるためには。これ、ランプ1つなんですけど、「権利侵害があったことが明らかな場合」。

寺嶋 ん~~~?

深井 というかなり厳しい条件があります。

寺嶋 明らかかどうかは誰が判断するんですか。

深井 それは裁判所。

寺嶋 じゃ、裁判所に申請するんですか。

深井 そうですね。だから、なんかちょっと嫌なこと言われたとか、なんか付きまとわれてるとか、粘着的になんか書き込まれてるとか、その程度じゃ

寺嶋 ダメなんだ。

深井 おそらくダメです。権利侵害が明らかじゃないとダメなので。おそらく、名誉毀損、脅迫、プライバシー侵害。そういうことをしたことが明らかな場合じゃないと認められないでしょうね。なので、結構簡単に「開示請求しますよ」とか書いてる人よく見ますけど、

寺嶋 認められるとは限らないですね。

深井 これじゃ認められないんじゃないかなっていうケースは結構ありますね。

寺嶋 認めてもらうために何を準備していったらいいですか?

深井 はい。まず、その発信された情報の画面ですね。

寺嶋 スクショ?

深井 スクショ。

寺嶋 うんうん。

深井 Twitter、Xの場合は、その投稿画面。

寺嶋 はい。

深井 と、あの、twitterって、その投稿したツイート、ポストごとにちゃんとURLある。

寺嶋 うんうん、ありますね。

深井 うん。それがちゃんとわかるようにスクショ撮る。

寺嶋 うん。

深井 で、多分ね、スマホじゃね、出ないんで。

寺嶋 そうですね。共有のリンクをとっとかなきゃいけないってことですね。

深井 うん。だから、あのね、パソコンでスクショを撮った方がいいですよ。パソコンでちゃんと投稿を表示すると、その投稿に与えられたURLが出ますんで、それごと撮る。

寺嶋 うん、うんうん。

深井 で、開示請求したい対象がTwitterじゃなかったら。例えば、2ちゃんとかね。今5ちゃんなのかな、わかんないけど、掲示板系だったら。ちゃんとその投稿ごとに。うん、やっぱりURLが出るんで、そのURLが入るようにスクショを撮る。

寺嶋 そのスクショを持って、「これが明らかに権利を侵害してるって認めてください」って、裁判所に言いにいく。

深井 そうですね。ただし、その時に開示される情報っていうのが、IPアドレスって言って、書き込んだ時の、言ってみれば、住所みたいなもんなんですね。どういう回線を使ってその投稿したのかっていうのが、タイムスタンプの形で出るんです。その情報が出るんですけど、その情報っていうのは、時間が経過すると消えちゃうんです。だから、例えばTwitterとか5ちゃんの会社に、「これのIPアドレスを教えてください」っていう風に言ったとしても、「いや、もうそのログ残ってません」って言われてしまって、もうそっから打つ手なしになることがたまにあります。だから、書き込まれてから大体3か月って言われてます。3ヶ月以内になんとか裁判所に認めさせないと、消えちゃってダメってことになりますので、その場合はとにかく急いで、もうそういう投稿があったら急いでいかないと、ちょっと間に合わないってことになる場合もありますね。

寺嶋 そうなんだ~。はあ~。いや、本当にやられた側ばっかりが心労が多い。やらなきゃいけないことも増えるし。

深井 で、それで、そのTwitter社、Xの会社に、そのIPアドレスを開示させる、2ちゃんの会社に開示させたら、そしたら、その、使ってるプロバイダーがわかるんで。例えば、NTTを使ってますよとか、BIGLOBEを使ってますよとか、そういうのがわかったら、その会社に、今度は「このアドレス使ったの誰ですか」っていう風に、特定の裁判をかける。

寺嶋 うえーーーー

深井 だから、2回手続きが必要になります。

寺嶋 大変!なんでやられた側がそんな大変な思いしなきゃいけないんだ!

深井 はい、よくわかりますけど。という風に、これまでね、そういう2段階の手続きが必要だったんですけど、2022年の10月に、法律が変わって、

寺嶋 お!なんか速くなったって聞いた!それかな?

深井 うん。2段階に分けてやんないといけなかったのが、1回の手続きでできるようになった。ですね。簡単に言うと。なので、非常に速く命令が出て、その情報が手に入ることになりました。

寺嶋 それだけ困ってた人が多かったってことなんでしょうね。

深井 そこまで行って初めて、それを書いた人が誰かがわかる。

寺嶋 そっか。本番はそこからだ!

深井 そうです。そっから、その人を相手に名誉起訴の裁判をしないといけないということになります。

寺嶋 え~~~~。大変すぎる。うん。

深井 だからね、思ってた以上に発信者情報開示の手続きと、それを特定してからの名誉毀損の裁判、時間かかります。

寺嶋 そうですね。でも、時間はかかるけど、手立てがないわけじゃないんだから、ひどいこと書いたら開示請求されて辿られて裁判になるぞっていうことでもありますよね。

深井 そうですね。うん。ただ、さっき言ったように、ログが消えちゃってるとか。あとはね、ちょっとこれ、僕、本当に技術的なところあんまり詳しくわかんなかったんだけど。辿っていたんだけど、わからないってことも実はあるんです。1回ね、ある件で発信者情報開示やったところ、もうこれ以上は辿れない(ってなってしまった)。

寺嶋 えー、なんで???

深井 っていうふうになってしまったことがありました。

寺嶋 辿った先がこう、ほら、自分のパソコンじゃなかったみたいなことだったら?でも、その時間に誰が使ってたかとかわかるのかな、職場からだったとか、漫画喫茶からだったとか。

深井 漫画喫茶だったらどうですかね、わかるのかなって気はしますけど。僕が1回あったのは、突き止めたら、風俗店の待合室に飛んでるwi-fiだったんですね。

寺嶋 じゃあ、その利用客の誰かかもしれないし、お店の誰かかもしれないし。

深井 うん。で、そんな特定無理じゃないですか。

寺嶋 wi-fiまでしかわかんないのか。

深井 wi-fiを使って、そのwi-fiの通信環境を使って書き込まれたってことしかわかんないんですよ。うん、だから、その契約者はわかりますよ。そのwi-fiを契約したのはそのお店だったんで、そのお店が契約してる通信環境だということはわかったんですけど、じゃ、そのwi-fiに誰が接続して、その書き込みしたかってのはわからない。

寺嶋 なんか、この番組が悪知仕入れ番組にならないですか、大丈夫ですか。そういうところでやればバレないのか!みたいに思われない?

深井 …それは困るね。

寺嶋 今、だって私、思いついちゃったのは、例えば、ほら、なんか港区フリーwi-fiとか飛んでるじゃないですか、東京に。ああいうのと繋いじゃえば、もうたれないってこと。

深井 そうなっちゃいます。

寺嶋 え~~~?これはほんと、やられた側は大変すぎますね。うん。

深井 ただね、やっぱりなんかそういう書き込みってね、結構やっぱ家からする人が多いですよ。

寺嶋 まあね。精神状態的にも。そんな港区をてくてくお出かけしてる時に書こうとは思わないか。うん。

深井 そうですね。

寺嶋 いや、なかなかちょっとやられた側のハードルが高くて大変だなって。何事もそうですけど、法律とか刑事罰に関してもそっか。いろんなこと思いますけど。

深井 なので、そろそろまとめになるかなと思うんですけど、発信者情報開示、考えてる人は、まず証拠の保全。その投稿消されちゃう前に投稿をURLが残る形でスクショ。で、Twitterとかだったら、おそらくその人のプロフィールページもちゃんととっといた方がいいかな。おそらく。

寺嶋 情報は多い方がいいですね。

深井 そうですね。それと、書き込まれてからとにかく早く動くこと。

寺嶋 でも、書き込まれてさ、ガーンってなってる時間とかもきっとあるしさ、「こんなこと言われちゃってどうしようどうしよう」ってなってる時間とかもあるしさ。すぐに「やるぞ」ってなれる子ばっかりじゃないから大変ですよね。

深井 そうですよね。それは大変よくわかりますね。うん。

寺嶋 なんとも。はい。だから、そういうことしちゃダメだぞっていう空気をね。はい。作っていかなきゃなといういつもの結論ではございますが、今回もそう思いました。

深井 はい。

寺嶋 はい。というわけで、本日のテーマは「誹謗中傷と開示請求」などでした。はい。名誉毀損のこととか、侮辱についても教えていただきましたが、ここまで聞いていただいて、この番組で取り上げてもらいたい相談がある場合とか、あとはこんな時はどうなのっていう質問とかありましたら、ぜひ深井先生にDMをしてみてください。

深井 はい。

寺嶋 この番組の中で公開はされたくないけど相談したいですっていう深井先生の依頼もですねDMから大丈夫とのことですので、ぜひよろしくお願いします。

深井 はい。

寺嶋 で、もしもゆっふぃーと話をしたい、ゆっふぃーを通してちょっと相談したいみたいなことがあったら、infoからメールでご連絡をください。

この番組でお話したことは後日noteで公開予定なので、そちらにコメントをいただくのも嬉しいです。よろしくお願いします。

深井 よろしくお願いします。

寺嶋 この番組のご感想などはハッシュタグアイドルと法律でぜひツイートしてください。よろしくお願いします。はい。
それでは、今回もありがとうございました。次回のテーマは「アイドルと共演NG」です。次回もどうぞお楽しみに。ここまでのお相手は、ゆっふぃーこと寺嶋由芙と

深井 弁護士の深井剛志でした。

深井・寺嶋 ありがとうございました〜。



以下、有料部分では、深井先生からの補足情報、発信者情報開示請求の手続きについての詳細などと、ゆっふぃーが「エアリプ」というやり方に感じていた違和感が今回のお話で少し言語化できるようになったお話、などお読みいただけます。


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