[読書]眩(くらら)

葛飾北斎の娘、葛飾應為を主人公として、その若い日から晩年までが描かれた小説です。

父葛飾北斎と二人三脚、しかし芸術家の孤独をもって修練を続ける画業、極めて常識的な母や素行の悪い甥っ子と葛藤しながらの生活、そして商売仲間との絆。
一期一会を大切にする姿が印象的です。

しかし、切なすぎる。
シングルマザーで家計を支える私には、芸術家といえども、離縁して独り身のお栄(應為)が他人事に思えません。

幼い頃からほのかに想いを寄せていた善次郎(渓斎英泉)と、年頃をとうにすぎてから恋仲になったときの独白。善次郎には一緒に住む別の女性がいますが逢瀬を続けます。

けれど、一つ屋根の下で暮らすなど土台が無理な話だともわかっていた。日がな一日一緒にいたら、いつか厭でも善次郎の絵が目につき始める。

女性としてではなく絵師として、が優先。
そして時が過ぎ、善次郎も父も亡くなってから、さらにきっぱり強く進んでいきます。

お栄はいつしか、毎朝目が覚めると、こう唱えるようになっていた。
うん、あたしはへっちゃらだ。
闇雲に仕事をして夜は独りで呑んで、朝は「へっちゃらだ」と呟いてから飛び起きる。

この本を読んではじめて葛飾應為の作品を写真で観ました。確かに北斎とも明らかに異なる独特な色使い。暗色はどこまでも深く闇、
江戸のレンブラントとも言われているとのこと、いつか本物を観たいなと思います。

☆☆☆

著者 朝井まかて
刊行 新潮社
刊行年 2018年(文庫)2016年(単行本)
https://www.shinchosha.co.jp/sp/book/121631/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?