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21.「ダサいスーツを、着こなせるようになった」


ダサいスーツを、着こなせるようになった。
わたしは昇進したのだ。

入っては辞めて、入っては辞めてしていく営業会社はわたしの2社目の職場で、いつの間にか28歳になっていた。
明るい茶髪に染めたロングヘアは今のわたしにお似合いで、バサバサのマツエクは40代男性上司のウケ最高だ。

ネイルは薄ピンクのフレンチネイル。
今時こんなのってどうよ。

入社当時はキラキラのビジューのついたヒールのサイズが合わなくて、赤く腫れていた足。
皮が厚くなって痛くなくなった。

この仕事は、移動時間が最高だ。

わたしの好きな曲は、解散した2人組のガールズバンドの曲で、心の中にスッと入ってきてくれて、ジワッと染みてくれる。

これは、わたしが大好きなギネスビールを飲んで頭がクラクラして幸せな気持ちになるのとは違う。

強いて言うなら、新宿発の終電の京王線に1人で乗ってギュウギュウになりながら、身動きが取れなくなったとき。

全く知らない誰かの体温と体温で自分が抱きしめられたような気持ちになってなぜか心地良くて泣いてしまったあのときと少し似ている。


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