青色の矛盾
飛び込み自殺が多い駅には、
青色のライトが灯っていると言う。
正確な理由は知らないが、
青色のライトを見ると自殺を思い留まってくれることがあるそうだ。
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鮮やかに晴れた日の空を見上げると、
雲一つない青に吸い込まれそうになる。
この世の悪や汚れたものなど決して知らないような澄んだ青に、時々目を掠めては羨望に似た気持ちになったりする。
南国の海はどうだろう。
近くで見ると透けて見える水が、
俯瞰するとなんとも色彩豊かに染まった青が水平線の奥まで広がる。
世界の殆どは海なのだ。
わたし達は必然的に青に匿われている。
どうやら青色には心穏やかにする効果があるらしい。
たまに海を見たくなるこの衝動の説明がつく。
あと一歩まで追い込まれたひと達の為に灯る青色のライトは、何人の命を救ったのだろう。
そんなことを考えていたら、
青色のパンケーキを思い出した。
それはわたしが知る限りでももう二度と食べたくない類の食べもので、ミントを模した青だったらしい(既に商品は売られていない)。
こちらもまた正確な理由は知らないが、
青色は人間の食欲を減退させるそうだ。
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3大欲求のひとつである食欲を減退させてしまうとは、食の細いわたしにとって死活問題になってくる。
全ての食べものが青色で染まった時、
わたしは栄養失調で倒れているかもしれない。
青色には心穏やかにする効果があるにも関わらず、
生きる為の欲求である食欲は抑えてしまうのだ。
しばしばこの矛盾に首を捻る。
救世主でありながら殺人鬼でもある矛盾。
色彩も人間と同じようにまた、
見る側面によって顔が違うとは世界が複雑な訳である。
そんな矛盾を抱えては今日もまた空を仰ぎ、
夜になれば駅のホームで青色灯に照らされ、
時々は海の青さに心打たれながら、
その深淵さに恐怖まで抱いたりする。
色彩の多面さを語るなど、
人間のそれと等しく尊くて難しいのだ。
そんな青色の星に、わたし達は住んでいる。
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