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相談支援専門員の役割って?

 今年、初めての記事になります。今年度も残すところあと2ヶ月になりましたね。下半期は、相談支援専門員になるための「初任者研修」のグループファシリテーターとして初めて参加して、研修のお手伝いをさせてもらったり、重度障がいの親の立場でもある「認定NPO法人障がい者より良い暮らしネット」の理事長さんから相談支援についての取材を受け、広報誌に掲載していただいたこともあり、改めて相談支援専門員について考えてみました。理想の形かもしれないですが、私が目指す相談支援専門員ってこんな感じというものを今日は記事に残しておこうと思います。

相談支援体制の3層構造


 まず、私が所属する地域では相談支援体制が、市基幹相談支援センター、区基幹相談支援センター、相談支援事業所という3層構造になっています。
・市基幹…虐待ケースの対応、区基幹や相談支援事業所の人材育成(研修実施)、区で解決困難なケースの対応、バックアップ、自立支援協議会等。
社会や制度へアプローチするマクロの要素が強め。
・区基幹…各区の6歳以上の障がい児者の基本相談(総合相談)、サービス等利用計画作成(住所不定や虐待ケース、複合課題を抱える方のみ)、地域のネットワークづくり、自立支援協議会事務局、相談支援事業所のバックアップ等。生活圏内の地域社会へアプローチするメゾの要素が強め。
・相談支援事業所…子どもから大人までの基本相談(総合相談)、計画相談(福祉サービスを使う上で必須になるサービス等利用計画作成)、障がい児相談、地域移行、地域定着など対象年齢や利用者さんの置かれている状況(長期入院からの退院等)によって事業が分かれています。個別の課題やニーズへアプローチをするミクロの要素が強め。

この3層構造がうまく機能することで、利用者さんが地域で安心して暮らす為の相談支援体制が整っていくのだと思います。

理事長さんから聞いた悲しい現実・課題

 しかし、、、障がい者よりよい暮らしネットさんには、障がいのある当事者のご家族の方から、お困りごとの相談がいっぱい寄せられるそうです。話を聞いていくと
・福祉サービスを使っているので相談支援専門員がついていたり、区基幹相談支援センターも関わっているのに、あれ?なぜそちらに相談していないんだろう?機能しているのかな?と感じることがあるそうです。
区基幹センターの質のばらつきや、役割についての認識不足などの声も届くとのこと。
 このような話を聞くことが初めてではなかったので、正直心苦しかったです。区基幹センターの支援体制のこと(地域包括支援センターに比べて配置人数が少ない)、相談支援事業所の経営面の課題(報酬が低く一人の相談員が件数をいっぱい抱えている状況)など色々なことを考えると…安心できる相談支援体制の構築がどこまでできているのか、利用者・家族の方に質の高いサービスを提供できているのか、と自分自身にも問いかけました。

 理事長さんとしては実際の相談支援側の課題も十分理解した上で、それでもやはり地域生活を送る上では相談支援が重要なのではないか、相談支援についてもっと知ってほしいとのことで、取材のご依頼を頂きました。

相談支援専門員の役割


 直接お会いしてざっくばらんにお話。気付いたら2時間近く経っていてとても盛り上がりました。私のnoteやFacebookでの発信も見てくださって、今までのキャリアの紹介も入り交ぜて相談支援についての役割や現状を約10ページに渡り掲載してもらいました。このような機会を頂き、本当に感謝します。私なりに相談支援専門員の役割について大まかに5つに整理してみました。

①福祉サービスを利用するための手続きのサポート


サービス等利用計画の作成(ここでは分かりやすくケアプランという言い方をします)のことです。これは言うまでもないのですが、利用者さんが望む暮らしについて聞き取り、その暮らしを実現するためにどのような支援が必要かということを書面化して、利用者さんに説明します。支援内容、支援する人(事業所・担当者・連絡先)などがケアプランにまとまっており、これを行政に提出することで、受給者証が届き、福祉サービスを受けられるようになります。

②生活全体(24時間365日)を見据えた支援


 相談支援は生活全体に目を向けます。就労やデイサービスなど、
日中のことだけでなく、24時間365日をどのように過ごすかという視点で支援を組み立てます。例えば朝の身支度のこと、帰宅後の調理などの家事、親がいない時の夜間の過ごし方、通所先がお休みの日の余暇活動、お金の管理、健康管理など、生活する上で必要なことについて一緒に考えることができます。ヘルパーさんの支援を入れたり、家ですることを一緒に整理して視覚化することで、自分で取り組んでもらったり人によって支援内容は様々。

③ライフステージにおける移行期の支援

 当然ですが、こどもは年を重ね大人になります。未就学→就学、小→中→高、高校卒業後の進路(大学・専門学校・一般就労・通所先等)など、年を重ねるごとに環境の変化があり、ライフステージごとに困り事もかわってきます。この移行期こそ利用者さん・家族には相談支援が必要なのではないかと感じています。必要な情報提供をしたり、大人になって考えられることは何か、そのために備えておくことは何かなど、悩みに寄り添うことが必要になります。利用者さんが30代くらいになり両親が少しずつ高齢化していく時期になると「親なき後の生活」についても相談が増えます。高齢になってくると65歳の介護保険への切り替え時期、65歳問題と言われておりますが、利用者さんが混乱することなくスムーズに切り替えられるような支援が必要になります。まさにこの移行期に伴走できるのは相談支援専門員かなと思います。

④本人・家族を中心とした支援チームづくり


 ②生活全体を見据えた支援、と書きましたが、当然、生活支援全般を相談支援専門員がすべて担うわけではありません。生活全体の支援をコーディネートしていく役割になります。そこで重要なのが支援チームによる他職種連携です。利用者さん・家族・相談支援専門員、これだけでもチームになりますが、ここに通所先、グループホーム、ヘルパー、成年後見人、等色々な専門分野の方に入ってもらうことで、本人・家族を中心とした支援チームをつくっていきます。サービス担当者会議の場で、支援方針を共有し、〇〇さんには応援団がいるんだよということを伝えていくことが大切です。本人さんを囲んだこの会議の場がとてもあたたかくて大好きです。

⑤利用者さんの権利を守り、気付く。


 最後に、利用者さんの権利がきちんと守られているかを客観的な視点から見ていく立場でもあります。虐待防止はもちろんですが、日常の中で本人さんの想いを聞かずに色々なことが決まっていたり、ご本人が家族や周りの支援者に遠慮してしまって自分の気持ちを伝えられていないことがあります。また、何かを決める時(意思決定の場)、必要な情報が届いていないこともよくあります。私自身、利用者さんにしっかり分かりやすく情報を届けられているか自信がないところも…。もっと情報保障のツール(例えばグループホームや通所先の空き情報を簡単に検索できるサイトやイラストで分かりやすいパンフレット等)が整えていきたいですね。支援者全員がこの視点は忘れてはいけないのですが、相談支援専門員として俯瞰して見ていき、権利が侵害されていたら何かしらアクションを起こすことも必要になります。

 平成27年から本格的に動き出した相談支援の制度。まだ6年くらいの歴史ですが、少しずつ制度も変わり、加算も充実してきました。

 相談支援の質の向上は永遠のテーマ。

 利用者さん・家族にとって「この相談員でよかった!」と思えるようなサービス提供をしていくと共に、地域の中で「相談支援専門員に相談したら安心だよね!」が浸透していくことを願って今後も活動・発信していきます。

◎広報誌の掲載記事はこちら

◎「認定NPO法人障がい者よりよい暮らしネット」活動HPはこちら

興味のある方はぜひご覧いただけると嬉しいです。

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