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映画「オキナワへいこう」を見た。

先日、私が活動する地域で映画「オキナワへいこう」の上映会と映画監督を囲んでの座談会が開催されました。私が過去に所属していた社会福祉法人が企画されており、子連れ参加もOKだったので、とても忙しい1週間でしたが、これは何か得られるものがありそう!と直感で申し込みました。

「オキナワへいこう」はどんな映画?

大阪府堺市の浅香山病院の精神科病棟に長期入院する患者たちの沖縄旅行を追ったドキュメンタリー映画です。監督は「水になった村」「家族の軌跡 3.11の記憶から」といったドキュメンタリー映画を手がける大西暢夫さん。写真家でもある大西さんは、精神保健医療福祉の専門誌「精神科看護」連載の取材で約250ヶ所の精神科病院を訪問し撮影を続けてきました。その写真に写った入院患者の益田さんという70代女性。

「生涯のうちに一度でいいから、沖縄へ行ってみたい」

と話したことをきっかけに、看護師たちが増田さんの夢を実現しようと動き出します。そんな沖縄旅行が実現するまでの物語です。
益田さんは「沖縄へ行ってみたい」といったものの、一度病院を出てしまった後の生活の不安を感じ、行くことへの葛藤が生まれ、看護師との話の中で何度も涙を流す姿が見られました。

「行きたいけど、自信がない」
「外泊自体が初めてなんやからこわい」という気持ちの葛藤
主治医の外泊許可
退院という形であればもう戻ってこれないのでは?という不安
などいろいろな壁が…。

気持ちに寄り添い、背中を押してくれた支援者

そんな中、病院看護師や「NPO法人ここいま」という地域の支援団体の支援者が伴走し後押ししてくれたことで、結果的に沖縄へ行くという夢は実現。「NPO法人ここいま」とは、精神科病院で長年勤めていた看護師さんが、何年経っても入院患者が退院せずにずっと病院で暮らしている状況を見て、精神科看護のあり方や自分のキャリアに葛藤し、病院を退職後、商店街の中での人との交流の場を作りたいと立ち上げた場所。
「誰も排除しない、排除されない」という想いでコミュニティカフェなどの運営をされており、いろいろな人の居場所になっています。
沖縄旅行での宴会時、「ふるさと」の歌を聴きながら益田さんや看護師さんが号泣する姿が印象的でした。今までの心の葛藤やようやく夢を実現できてこみあげてくる気持ちが映像から伝わってきました。

どんな薬よりも効くパートナーの存在や地域のつながり

益田さんは一時外泊として旅行後は病院に戻りました。
もう1人の参加者の山中さんという男性はこの旅行をきっかけに10年の入院生活に終止符をうち、一度退院。しかしまた再入院となります…。
その後、パートナーとの出会いがあり、心の支えができたことで気持ちにも変化が起き、グループホームでの暮らしが決まり、今後は無事に退院をすることができました。
退院時、お迎えに来たパートナーが
「精神疾患は特別ではない。腎臓が悪いとか心臓が悪いとかと同じように見てほしい。なぜか特別なものとみられている。そういう病気の人がいて当たり前の社会になってほしい」と話していました。
山中さんは、パートナーの存在を「どんな薬よりも効き目がある」と笑顔。
また、10年以上ぶりに再会した地域の商店街のおじさんに「退院できてよかったやん、いい体験したね」と声をかけられていました。
沖縄旅行やパートナーとの出会いをきっかけに地域での生活を再スタートさせることができたのです。
この映画を通して、長い根っこが生えたような精神科病院長期入院患者の課題をなんとか変えなければととあきらめずにアクションを起こしたことで生まれた可能性や生活の広がり、心の充足感というものを感じとることができました。そこには患者さんだけではなく同じ環境の中で葛藤している看護師さん、地域の支援者さんの物語も描かれていました。

私たちにできることは?

私が活動する福岡市にも精神科病院(入院病棟あり)がいくつもあります。長期入院精神障がい者の地域移行については、一般病床に比べて精神科病床は人員配置が低い、患者の高齢化(65歳以上が増加)、死亡して退院するケースが多い、地域の受け皿が少ない、など色々な課題があります。これを社会全体の責任だととらえ、今私たちができることについて考えていくべきだと感じました。市内で1年以上の入院患者の人数は2000人以上とのこと。
現在も入院中の方、現在も入退院を繰り返している方、など色々な状況の方がいます。
この現状に対して、ソーシャルワーカーとして何ができるかを考えました。

利用者さんの「夢」を叶えられるような支援者でいる。
・「できないよね」ではなく「どうやったらできるか」を一緒に考えて伴走する。
・情報提供や体験の機会をつくることで、可能性を広げる。
・入院患者が「退院してもいい」と思ってもらえるような優しい街づくりをする。

私は現在病院に勤めているわけではなく、「街の相談室」を運営している地域の支援者という立場。
病院に切り込んでいくというアクションは積極的にできる立場ではないですが…出来ることはまだまだあると思います。

色々な支援の実践の中で、悲しいことに利用者さんの希望に対して、リスクばかりを考えて対応しようとする支援者にたまに出会います。

この映画で患者さんの気持ちに伴走し、一緒に沖縄旅行の夢を叶える看護師さんや地域の支援者の姿を見て、一度きりの人生の中で出会えた支援者として私も夢を応援できるような、背中を押してあげられるようなソーシャルワーカーでいたいと感じました。

私たち地域の支援者が諦めていたら、きっと社会は変わらない。

「オキナワへいこう」上映会、ありがとうございました。

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