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ハサミを当てあう

たまにフワッと記憶が思い出されて、あぁ、当時は相当病んでたんだな、と思うことがある。まあ、今も明るくそれなりに病んでるんですけど。

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元夫と付き合いたての頃、人間関係が閉鎖されている海外の事務所で直属の上司から所謂パワハラを受けて、さらに本部の上司からもその問題について理解を示してもらえず、一方的に自分だけが悪いとされていた状況に精神がかなり不安定だった。

そんな時、私の不安定さはすべて元夫に向けられて、言葉は悪いが、彼が私の精神を何とかコントロールして保っていたようなところがあった。

死をものすごく意識していたのもこの時期だったので、私はことあるごとに、死にたい、死にたい、死んでしまいたい、苦しいなどと話していた。今思い出して書いてるだけで当時の不安で涙が出てくる。キツかったんだと思う。

急に、本当に急に、上司から呼び出され、一方的に帰任を命じられた。説明としては全て私が悪いというもので、「あなたがあの時こうしたのが間違ってた、そんなことをするなんて信じられない」、この内容を何度も何度も、それまでほとんど無視され続けてきたのに急に言われた言葉が全否定で、体も心も感覚が麻痺したような感じで、冷たかったことだけ覚えている。南国で感じた一番の冷たさだったかも。

その晩、明らかに様子がおかしかった私を心配した元夫が訪ねてきて、上司から言われたことを全て話した。そしてまた、死にたい、と。

そこから数日間はお客さんが来ていたこともあり、記憶がかなり曖昧で仕事をしていたこと以外覚えていないのだけど、お客さんが帰り、少し落ち着いたところでまた大きな不安が襲ってきた。

映像みたいな記憶でしかないが、とにかくハサミを握って眺めていた時間が長かった。包丁や果物ナイフもあったけど、私は家にいるときにハサミを握っていた。

元夫と何かを話している時に、もう無理だから刺したいと私はハサミの刃をお腹に当てた。すると元夫はハサミを取り上げ、そんなことしたって意味はないと自分の腿にハサミを当て、もちろん刺さらない程度に何度も刺すフリをした。私は自分以外の人に刃物が刺さるイメージに耐えられなくて、取り上げてはまた自分に刃を向けて、そしてまた元夫に取り上げられ、それを繰り返していた。

今思えば、そんな状態の私をずっと側で見ていた元夫の精神力の強さというか、自分を保てるだけの力はすごい。そして実際には彼も相当まいっていてギリギリではあったことも分かる。私はもちろん感謝しているが、同時に見放してくれればよかった、然るべき医療機関に引き渡してくれてよかったとも思った。無理させていたことをやっぱり今も後悔して振り返る。謝っても謝りきれないほどの負担をかけていたから。

依存は怖い。ギリギリで生かし合える関係はよくない。特に当時の私たちの関係は周りに言っていなかったこともあり、とにかく閉鎖的で、ある意味濃厚で、どんどんと抜け出せなくなっていった。愛情を超えた、ドス黒い絡みつく液体に飲まれていくような感じだった。

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何年も忘れていた記憶が急に思い出されて、ちょっとびっくりしつつ、思いのほか冷静に向き合えたのがよかった。

最近、心が何かを消化しようとしている感じがある。苦しくはない。いや、疲れの波がやってきていて身体は結構しんどい。でも不安に振り回されたり、不安が暴走することはない。今起こってる現実と過去の記憶の境も分かってる。

進化の途中とかかいな。しらんけど。

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