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オーウェルが自宅に来たら茶漬け出せ ◆ 水曜日の湯葉67 [03/15-21]

新作おしらせ。『小説すばる』4月号に掌編小説「限界プラシーボ」を寄稿しました。見開き2ページ、1000文字のごく短い話です。Twitter ですら2000字載せられる時代だというのに。

ところで小説雑誌の表紙はタイトルよりも作家のほうがでかい活字で書いてある。作家名しか書かないことも多い。こういうのは小説雑誌の特徴といえる。科学雑誌なら「何が書いてあるか」がでかい字で書かれる。漫画雑誌であれば主人公の顔が多い。

人間のブランド性、つまり「誰がやったか」が重要視される仕事ほど、AI に代替される順番は遅いと思われる。その意味で文芸業界は相当に遅いといえる。「村上春樹の新作長編」というだけで内容が全くわからなくても話題になるわけだし。それよりかは文芸という商売自体が消滅する可能性のほうが高い。

たとえば「馬車の御者」は機械に代替されなかった。馬が先にエンジンに代替されたからだ。小説家の置かれている状況はこの御者に近い。

ところで作家が何か不祥事をやった時に言われる「作家と作品は別」というのは完全な嘘である。というか、それができないからこそ「あるべき読者の理想像」としてわざわざ言うのだ。「作品と印刷業者は別」なんてことは誰も言わない。言う必要がないからだ。


3月15日 水

確定申告をやる。すでにデータはまとめ終わっているので、あとはそれを国税庁の e-tax でぽちぽち入力していくだけ。去年は「どうせ役所のシステムなんて Windows でしか動かんのだろ」と仮想環境を使ったが、今年は普通に Mac の Safari で申請できた。役所を舐めプするのは控えよう。

青色申告書というのは全体的に「モノを仕入れて売る人」を想定した仕様になっているため、無から売り物をひねり出す作家からすると変な気分になる。原稿料って「売上」なんだ。言われてみるとそうだ。

作業途中で気分転換に確定申告モノの映画『エヴリシング・エヴリウェア・オール・アット・ワンス』を見に行った。劇場で買ったタピオカドリンクがやたら美味しかった。流行ってる間にもっと飲んでおくべきだった。映画の感想は有料部分に。

家に帰ると開きっぱなしにしていた e-tax がふつうに操作できた。タイムアウトしないんだ。役所のシステムって30分操作しないとタイムアウトすると法律で決まってるんだと思ってた。

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