お久しぶり《勇樹》さん。実は漫画、特撮、アニメ好き。意外に男性は自分の趣味を隠したがるみたい。今は［弱虫ペダル♡鬼滅の刃♡キングダム］等【後編】〈ｶﾌｪ31勇樹2後〉
いつの間にか懐かしいテレビの特撮やアニメの話になっていた。話題というのは不思議とふとした事から湧き上がるものだ。時に忘れていた事さえも鮮明に浮かび上がる事がある。
記憶という細胞の中にいったい、どれだけの事が詰め込まれているのだろう。時々不思議にさえ思う。
「実は私、自転車も好きなんですよ。それでね、たまたま仕事の若い部下から教えて貰って〈弱虫ペダル〉の漫画を見たんですが、私にはちょっとゴチャゴチャでわからないって言ったら、今度はアニメの弱虫ペダルを貸してくれたんですよ。奥さんが居ない時に見たらハマっちゃって。主人公がアニメ好きでとてもスポーツをやるタイプじゃないアニオタの高校生で自転車のロードレースでチームで優勝するまでの話なんですが、何か笑うし感動するし、笑って泣きながら見てます。漫画は苦手なのでアニメを楽しみにしているんですよ」
何だか、嬉しそうに話す勇樹さんはちょっと無邪気にさえ見えた。
「そうそう。私も好きなんですよ。ヒメヒメって歌ってね。何か勇気を貰います」
「そうそう。あの歌ね。ラブ☆ヒメって言う。アハハ。嬉しいなぁ。勇気貰いますよね。話出したら止まらなくなりそうですよね」
「本当に。楽しいですよね。勇樹さんと勇気の話になっちゃいましたね。うふふ。勇樹さん他に今何か見てますか？」
そう私が聞くと
「今は、あまり見てませんね。ママ、何かお勧めありますか？」
そう言われると、何だかいっぱいあるし、好みもあるから悩んでしまう。でも、あくまでも私のお勧めだから見る見ないは決めて貰えばいい。でも、改めて聞かれるとまたいろいろ浮かんで来てしまう。切りがない場合があるのだとちょっとため息をついた。
「何か、いっぱいあって」
そう言うと、勇樹さんは笑って言った。
「アハハ。気楽に気楽に。今ママが頭に浮かんだのでいいんですよ」
--- あぁ、なる程。そうなんだよね。私が難しく考えたら相手も難しくなる。
そんなもんなんだと変に納得してしまった。いろいろな事もそう。悩み過ぎると相手も悩む。嫌だと思えば不思議と顔で笑っていても伝わる事があるように。
「ですよね。じゃ、今浮かんだのは〈鬼滅の刃〉と〈キングダム〉」
咄嗟に出たのが〈鬼滅の刃〉と〈キングダム〉だった事に私が私自身に (そうなんだ) と思ってしまった。
もしかしたら、明日聞かれたら違う作品を言っているのかもしれないと思った。確かに他にもたくさんあるから。機会があれば、またいろいろ話したいなぁと思った。
「〈鬼滅の刃〉〈キングダム〉ですね。ちょっとチェックしてみますね」
何だか、嬉しそうに言う勇樹さん。
「あ、いえ。今咄嗟に出たのがなんですよ。でも、私は好きですよ。感動するんです。たかがアニメ。されどアニメです。特に友情ものや何か頑張る姿に感動するタイプなんですよ」
「私もです。ちょっと探してみます。何か、こんな会話っていいですね。ありがとうございました。何か嬉しいです。何ででしょう。何でだかわからないんですが、本当に嬉しかった。今度、パンダのコーヒーカップ持って来ますね」
そんなに感謝される事なのかは、私にはわからない。だけど、私も本当に楽しかった。何だろう。何となく勇樹さんが言いたい事がわかるような気もする。
人は、ちょっと恥ずかしくて、ちょっと言えなかった事が開放出来た時に、今まで感じた事の無い感覚を感じるのかもしれない。それが喜びになるなら本当に嬉しいのだろう。
実際、私もまさかアニメやテレビの話をするとは思っても居なかったし。
何が飛び出すのか、何が起こるのか、先の事は本当に未知で面白い。もちろん、楽しい事や嬉しい事ばかりでは無いけれど、出来ればちょっとわくわくして未来を見れたらいいかなと思う。
「はい。パンダのコーヒーカップ楽しみにしてますね」
そう言って、またちょっと吹き出しそうになった。堪えたけど。だけどやっぱり〈パンダ〉はちょっと意外で面白かったから。
そして、勇樹さんは嬉しそうに帰って行った。
そう言えば、もう少し私が若かった時にお客さん商売の人が言っていた。
〈私は経済新聞は毎日読んでます。情報や話題の多さが大事だから〉と。
確かに、そうかもしれない。情報だけじゃなく趣味や好みでも何でもいい。広い情報や知識があればある程いいのかもしれない。人は皆違う。趣味も考え方も価値観も。だけど、それを理解し分かり合えたらそれでいいのかもしれない。
それが個性。
そして、今まで自分では発見出来なかった新たな出逢いがあれば、またそれは素晴らしい。
人と出逢う分、知識や情報は広がる。
私は、本当に感謝している。
いろいろなお客さんに。
そしてまた来てくれる事を楽しみに待って居たいと思う。
カランカラーン
と、ドアが開くのを。
<33>
🌈☕いらっしゃいませ☕🌈コーヒーだけですが、ゆっくりして行って下さいね☘️☕🌈