見出し画像

リモートワーク〈在宅勤務〉になったんですが---ママ、ここで仕事してもいいかなぁ?。オレンジ色のパンダのマイカップ《勇樹》さん◇〈カフェ51勇樹4〉

カランカラーン。

ドアが開いて、入って来たのは勇樹さん。

あのダンディーな勇樹さん。

ダンディーなのに、アニメやなんとパンダ好き。だいぶ慣れたけれど、やはり人は見かけによらない事が多い。

暑い夏も過ぎすっかり秋めいて来た。

「こんにちは、ママ」

「いらっしゃい。勇樹さん」

---ん?。パソコン?。

勇樹さんは、パソコンを持って入って来た。服装はやはりカジュアルなジーンズ姿が似合う。

先日は、闇夢さんがギターを持って来たし---。

そして、勇樹さんはとりあえずカウンターの真ん中の椅子に座った。

「はい。オレンジ色のパンダのカップが待ってましたよ。コーヒー入れますね」

オレンジ色のパンダの勇樹さんのマイカップ。パンダ好きなのだけど、奥さんは嫌いで使えなかったこのカップをマイカップとしてここに置いて居るのだ。

私はそう言って、おしぼりと水の入ったグラスをカウンターに置いてコーヒーを入れていると、

「ねぇ、ママ。実は、出勤の半分はリモートワーク〈在宅勤務〉になって」

「あら、今はリモートワークが多くなったみたいですよね。良かったじゃないですか」

そう私が言うと

「それがですね。確かに出勤しないのはいいから、のんびり家で仕事しようとしたら---」

「はい、コーヒーどうぞ」

私は、淡い橙色のコースターの上にオレンジ色のパンダのカップを置いた。

「ありがとう」

そう言って、勇樹さんはコーヒーを口にした。

「あぁ、美味しい。---って、実はお願いがあって」

「お願い?」

「そうなんですよ。実は、リモートワークでのんびりとと思っていたら案の定、家の奥さんが---」

---あぁ、テレビ好きの奥さんかぁ。

「あの、テレビ好きの、サスペンス、ドラマ好きの奥さんがうるさくてうるさくて」

「あら、仕事なら少しは」

「静かに?。無い無い。更に大きな声で笑うし泣くし奇声をあげるし。あんなに酷いとは思わなかったですよ」

「あら」

「で、ママにお願いが」

「お願い?」

私が聞くと

「ここで仕事してもいいかなぁって」

「ここで?。出来るんですか?」

「はい。パソコンあれば」

「そうなんですか?。私は大丈夫ですよ。この通り、満席になる事は無いですから」

「いいんですか、本当に?。嬉しいなぁ」

そう、嬉しそうに言う勇樹さん。

そんなに嬉しそうにしなくてもとは思ったけど、確かにいろいろ聞いていると奥さんの近くでは気が散るかもだ。

「場所は、カウンターでもテーブル席でも大丈夫ですよ。コンセントもありますから」

「本当にありがとう。週に3日ぐらい。あの使用料払いますから」

そう言う勇樹さん。

「まさか。要らないですよ。ゆっくり使って下さい」

「いいんですか?」

「当たり前じゃないですか。使用料って。ここはゆっくり癒して貰えれば嬉しい場所ですから。好きな時間に来て下さい。ただ私が気まぐれだから開いてる時間はバラバラなんですよ。うふふ」

そう言って私が笑うと

「わかってますよ。開くまで待ちますよ」

「あら、じゃぁ。外に椅子を置いておかなきゃ」

うふふ。

「それ、いいですね。でも大丈夫ですよ。待ってますから」

そう言って、何故か勇樹さんがここで仕事をする事になった。

そして、そう言うと、勇樹さんは、

「ママ。ちょっとテーブル席に行ってやってもいいですか?」

「えっ。もう、これから?」

「はい」

何とも、素早い。

そう言って、勇樹さんはパソコンとオレンジ色のパンダのマイカップを持ってテーブル席に移動した。

仕事ならそっと見ていよう。

パソコンを開いて、仕事をする勇樹さんの姿を見ていると、何だかまた更に更に違う勇樹さんの姿が見える。

男性は特に、仕事をする姿が素敵だ。

女性が仕事をしている姿も素敵だけれど、何故か男性の方が、素敵に見えるのは何故なのだろうか。

昔から男性は外で仕事をして、疲れて帰って来る。

どんなに外の疲れを家に入れたくなくても、入れてしまう。疲れが見えるし、わかってしまう。

頑張って一生懸命働いて来ても、中々その仕事の姿を奥さんは知らない。

だから、仕事をしている凛々しい姿を見るのも、たまには惚れ直すのかもしれない。

でも。

勇樹さんの奥さんは、そんな勇樹さんの姿も見ようとはしないのか。

中々面白い奥さんだから、なんとなくは想像出来る。

自分のペースは崩したくない。

勇樹さんも優しいから。

なんだかんだ言っても、奥さんと一緒に居るのだから。夫婦の姿はそれぞれでいい。

仕事している勇樹さんの姿は、私が見ると素敵だ。

そんな姿を見ていられるのも、何だか嬉しい。

ちょっと、これから楽しみが増えた。

ちょこちょこ来てくれるのだろう。

遠くから、見守っているっていうのもいいなぁ。

もし、他のお客さんが来て、やりづらかったら、それはそれでまた考えるんだろうね。

私が余計な心配する必要は無いけど、不思議な気持ちだった。

お客さんとの〈縁〉って、本当に面白い。

私は、しばらくボーッと勇樹さんを見ていた。

         <53>

#小説 #カフェ #勇樹さん #パソコン

#リモートワーク #パンダ #コーヒー

🌈☕いらっしゃいませ☕🌈コーヒーだけですが、ゆっくりして行って下さいね☘️☕🌈