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癒熱探訪 三ノ輪 改栄湯

ここ最近、何かと三ノ輪に降り立つことが多い気がする。

浅草まで徒歩圏内で、日本最古の風俗街 "吉原" がある街。

なぜ最近、この街に通うようになったかというと、"風呂屋" に行く為だ。

この土地でそんな発言をしたら、何だかとてもイヤらしい遊びをしに行っているように捉えられてしまうかもしれないが(笑)、自分が通っているのは正真正銘、健全な "風呂屋" である。

三ノ輪の風呂屋といえば、やはり筆頭は"湯どんぶり 栄湯" だろう。

オートロウリュウ&熱波を搭載した銭湯サウナらしからぬポテンシャルを持ったサウナ室や、きめ細かい泡を弾き出す16℃のバイブラ水風呂など、サウナー心をくすぐる設備が満載の、今サウナ界で話題沸騰中の人気銭湯だ。

だが、今日三ノ輪に降り立ったのは、ここに行く為ではない。

今日ここに来たのは、"湯どんぶり 栄湯" よりも三ノ輪駅近くにある、"改栄湯"という銭湯に初訪問するため。

この "改栄湯"、正直まだそこまでサウナー達の間で名前を聞くことがない。

かく言う自分も、友人から聞いて初めて存在を知ったのだが、今回訪問してみたら、「まさかこんな駅近の場所に、こんなにも良質な銭湯サウナが存在していたとは、、、」と、東京銭湯界の層の厚さを心の底から実感させられてしまった。

"改栄湯" は、三ノ輪駅3番出口から5分ほど歩いた住宅街の中にある。

入り口こそ派手だが、上の階は普通のマンション。
周りに目立った店やコンビニもなく、人通りもあまり多くはない。

そんな場所にドーンと突然現れる、江戸情緒たっぷりな迫力ある外観の入り口は、異世界への訪問を感じさせてくれて、ちょっとワクワクする。

受付は券売機方式で、サウナ込みの入用料は870円。タオル類は別料金。

至って普通の銭湯サウナの値段だ。

2020年11月に改装されたばかりであるらしく、ロビーはとても綺麗。

清潔ながらも気取り過ぎない、銭湯味を残した生活感があるロビーは、初めてきた場所にも関わらず、何故だか安心感を感じさせてくれる。

サウナ客は、腕に紙バンドを巻き付けて入る方式。

錦糸町の "黄金湯" もこの方式だったが、このバンド、服を脱いでいるとき袖口に引っ掛かり、破けてしまいそうで恐い(笑)。

最初は「こんなの風呂に入ってる間に取れてしまうのでは、、、?」と思ったものだが、そこは案外大丈夫。

サウナ専用ロッカーキーを作ったり、サウナ客には専用のタオルを持たせたりと、各々の銭湯が各々の工夫を凝らして、サウナ客の管理をしているが、この方法が一番手っ取り早くてコスパも良いのだろう。

ドアに引っ掛ける "サウナ鍵" の文化は、そろそろ無くなってくるのかな。

浴室は、流石 "ラグジュアリー銭湯" を謳っているだけあり、美しさを感じてしまうほどに綺麗。

決して広くはないが、奥行きがあり、落ち着いた色合いの照明と、ほのかに流れるスロージャスのBGMが銭湯らしからぬ雰囲気を演出している。

「これはサウナ室も期待出来るぞ、、!」と逸る気持ちを抑えつつ体を洗い、サウナ室へ。

サウナ室と水風呂は露天スペースにあり、もちろん、"ととのい椅子" もバッチリ。

こういうサウナー向けな銭湯、ここ最近本当に増えた。

ちょっと前は、露天にイスが置いてある銭湯など、レア中のレアだったのに、、、。良いことである。

さて、露天のシルキーバスも魅力的だけれども、まずはサウナ室へ直行しよう。

扉を開けた瞬間、「これは当たり!」と確信した。

マイルドな温度感ながらも、じんわりと肌を包み込んでくれるような暖かさがあり、何よりも室内の香りが素晴らしい。

この甘くて香ばしい香りは、ほうじ茶だ。

遠赤外線ストーブの上に水入りのたらいを置き、水分を蒸発させて湿度を稼ぐ銭湯方式ロウリュ(?)を、ここの施設でもやっていたのだが、中身がほうじ茶なのだろうか?。

それにしても、ここのサウナ室の温度感とほうじ茶の香りは、これ以上ないくらいにマッチしている。

気分が和らぐほうじ茶の優しい香りと、"熱い" というよりは "暖かい" 、穏やかな温度感があるサウナ室の "ほっと安らぐ感じ" には共通点があって、抜群に相性が良い。

ゆっくりと、長い時間を掛けて汗をかきたくなる、最高な居心地のサウナ室だ。

こういうサウナは、12分計の存在など忘れて、時間に囚われず、自分の体が水風呂を欲してくるようになるまでじっくり向き合うに限る。

体が火照り、心臓の鼓動が聞こえてきたタイミングで初めて12分計に目をやり、そこから1分粘った上で、水風呂に突入。

写真左が水風呂。軽めのバイブラが効いていて、温度計は12℃を指している。
かなり冷たい。

外気とのバランスを考えて、30秒ほどで出ようと思っても、欲張りな自分は、ついつい水風呂に長居してしまう。

冷却された体に、冬の0℃近い外気が直撃する。さっきまでの暖かさが嘘のように、みるみるうちに体が冷え切っていく。

冬のサウナで味わう、このジェットコースターのような温冷交代入浴は、人によっては "危険な遊び" にも成り得るのだろうが、この悪魔的魅力に取り憑かれているのがサウナーという人種だ。

ただ、寒さにめっぽう弱い自分は、外気浴はほどほどにして、浴室に避難。

炭酸泉の端に風呂椅子が置いてあり、そこでしばらく休憩。

外気浴も良いけれど、こうやって湯けむりの温もりを感じながらの休憩も自分は好きだ。特に冬場は、むしろ浴室での休憩の方が良質な "ととのい" を得やすい。

暑くもなく寒くもない、ちょうど良い温度感の浴室での休憩は、時に立ち上がるのも億劫になるくらい、深い瞑想状態に入ってしまうこともしばしば。

この日もつい2セット目を忘れて、うたた寝をしてしまいそうになった。

「流石に1セットだけはもったいない!」と、再びサウナ室へ。

土曜の日中だったこともあり、このタイミングでサウナ室がかなり混み合ってきた。

上段は全て埋まってしまって、下段しか空いておらず、外には "空き待ち" のサウナ客が多数。

最初入った時はそこまで人がいなかったから穴場かと思いきや、やはり人気があるんだな。

2セット目を終えた時点で、タイミングを見計らわないとサウナ室へ入れないくらいに混み合ってきてしまったので、しばしの間、風呂に浸かる。

露天にあるシルキーバスは微温目な温度で、泡で白濁色に染まったお湯の肌触りが、柔らかくて気持ち良い。

銭湯にしては珍しく、ちょこちょこスタッフの人が浴室に出てきて清掃をしている。

浴室内にも、清掃スタッフを募集している貼り紙があったから、浴室管理にかなり力を入れているのだな。

どうりで、こんなに綺麗なわけだ

サウナ待ち客が絶えないが、何とかタイミングを見つけて3セット目のサウナに突入。

流石にこれは混み過ぎだ、、、。今日はこれで最後にしよう。

それにしても、このほうじ茶の香り、、、やっぱり良いなぁ。

サウナ室において、"香り" って本当に大切な要素の1つで、香りが良いサウナ室は、多少温度感が趣味に合わなくても許せてしまう。

施設のこだわりと、室の材質と年季が紡ぎ出す香りは、そのサウナの立派な個性だ。

「この香りに、また包まれにこよう」

そう思いながら、この日最後のセットを終えた。
混んでいなかったら、もう少し居たかったのだけど、、、仕方ない。

昔ながらの下町情緒を残しつつ、サウナーのツボを抑えた銭湯サウナの理想系を提示してくれる "改栄湯" 。

ほうじ茶の香りで満たされた、穏やかな温度感を持った上質なサウナ室は、恐らく今まで行った銭湯サウナの中でも5本の指に入るくらいに気に入った。

良いサウナに巡り会えた日は、1つの新しい世界が開けたような胸の高鳴りを感じさせてくれて、帰り道の足取りも不思議と軽やかだ。

まだまだ今後も、三ノ輪へ通うことになりそうである。


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