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小束弓月
2019年5月5日 21:28
一の章 梅雨の日の記憶 「いらない子...。」「気味の悪い...。」「いなくなればいいのに...。」 その少女は俯いていた。幼くして両親に先立たれ、縁者も無く、独りぼろ屋に暮らす彼女に手を差し伸べる者はいなかった。 灰色の雲が低く立ち込めるある日、彼女はその日の糧を手に入れるため、鬱蒼とした山に入った。途中ですれ違う村人達は彼女を見ても、ただ迷惑そうな視線を向けるだけだった。彼女