『この世界で君に逢いたい』

著:藤岡陽子

前世、、自分の前世や後世を常に意識しながら生きるていることはないけれど、全く信じていない訳でもない。

でも突然、
「あなたの前世が見える」
と言われたら疑ってしまうと思う。

今の社会の中で、‘’目に見えないもの” ‘’根拠のないもの” ‘’立証できないもの”は、理由を付けて根拠立てて論破され、それを大きな声で主張することは遠ざけられているように感じる。
それが良い悪いではなく、信じられない、あり得ない、という感情は一種の恐怖なのだと思う。安心材料として、現実味、正確性、根拠、リアルを追求するのではないだろうか。

だけど、愛情や嫌悪など人に対する感情もまた目に見えないし、友達や恋人は、うまく言えないけどなんとなく価値観が合う、なんか惹かれる、なんか落ち着く、、そういった曖昧なものを根拠に人間関係は形成されていると思う。
だから、合理性ばかり追求していく世界は寂しいと思う。
人とのつながりが薄れてきているとはいえ、人間はひとりでは生きていけないし、必ずどこかで誰かと繋がり、誰かに支えられ、誰かの支えになりながら生きていると思う。
そういった、‘’見えないつながり”を強く感じさせられた本だった。

この本のラスト、周二が「この世界で君に逢いたい」と胸に抱くシーンは涙があふれた。

現世での心残りとして来世まで持ち越さないように。大切なものや大切な人がずっとそばに当たり前にあるとは限らないから。


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