前立ちと前さばき
「前立ち」と「前さばき」
組織やチームにおいてこれほど重要なものはありません。
私は現在小さな会社にて管理職に就いており、それなりの裁量と決済権を持っています。
それは取り扱い商材の採否、取引業者の選定や販管費の割当や業者との交渉における取引条件の決定権など多岐にわたります。
通常、取引業者は一般社員ではなく私のような決定権を持つ上席の者に近づこうとし面会のアポイントを求めて来ますが、ここで経験の浅い管理者は間違った対応をしてしまいます。
管理者自身が業者に直接対応することで感情に流され断りきれなくなり取引をさせられてしまったり、不利な条件で契約をしてしまったり、更には癒着と言われる馴れ合いの関係にて自社に不利益をもたらすこともあります。
決済権を持つ者が直接交渉の場に参加することにより即断即決を迫られることがあり、それにより当方は逃げ場を失ってしまうことがあります。
また、決済権を持つ上席の者が未熟である場合は直接交渉の場に自身の身を置くことで相手に対する間違った配慮や間違った優しさなどの感情によりその判断を狂わせてしまうことがあります。
ここで必要となるのが「前立ち」による「前さばき」です。
「前立ち」は決済権を持つ上席に会わせるべき人間をふるいにかけ選定する門番のような役割を担います。
そして「前さばき」とはその相手の要件を聞き、その内容が上席に話を通すに値する内容なのか又はそうでないのかを判断する作業であり、もし前立ちの者自身で対応出来るものであれば上席に会わせることなく自身で対応処理します。
時に前立ちは管理職である上席の者に変わって交渉役になる場合があります。
上席が直接交渉する場合と違い、間に前立ちを挟むことにより上席は交渉相手に対し言いにくいことを言い放つことが出来るようになります。
更に前立ちは「私としてはなんとかしたいのですが、上席が首を縦に振りませんため。。誠に恐れ入りますがご理解ください」とし相手の自分に対する直接的な反発をかわしその場を収めることも出来ます。
これは他責にして責任転嫁するという低レベルなものでなく、承知の上で上席と前立ちの間にて事を円滑に処理し進めるための阿吽の呼吸にて行われるチームワークとなります。
管理職である上席の者は時と場合により前に出なければならない場合もありますが、通常業務の場合基本的には部下や秘書など前立ちに第一段階の受付を任せることにより自身の業務に専念することが出来ます。
そして上席が最も注意しなければならないのは「"それ"と"これ"を混同してしまうこと」です。
業者との個人的な人間関係が親密になればなるほど感情的つながりが強くなり断り辛くなり、気がつけばズルズルとその馴れ合いの関係に流され相手の「お願い」に断れなくなりその判断に狂いが生じるようになります。
距離の近くなった業者との個人的な会話の中で
「ところで新規のあの事業の件ですが」
と話が出た場合
「その件ですか。。それにつきましては営業の佐藤くんが窓口となり彼に一任していますので申し訳ありませんが彼に話を通してください。」
と、まずは前立ちに話を通してもらえるように持っていき個人的な感情や関係抜きに正当な視点と判断でふるいにかけるようにします。
つまり、いくら親しい仲であっても仕事の話となれば「それはそれ、これはこれ」という切り分けをすることにより健全な人間関係を保ち更には自分自身や会社を守ることにもなります。
社長に会うには秘書の了承を得なければ会えません。
有名人に会うにはマネージャーを通さなければなりません。
芸能人に会うためには芸能事務所を通さなければなりません。
個人的に親しい間柄でも仕事の話となれば個人的感情抜きでの話となり然るべき手順を踏んでからとなります。
そのためには「前立ち」と「前さばき」は重要な役まわりとなります。
管理職である上席はむやみやたらに相手と接触したり個人的関係や感情的つながりを築いてはならず、相手とは適切な距離を保たなければなりません。
友人は友人、仕事は仕事、それを混同してしまってはなりません。
職務上の重要な地位に就く要職の者とその前立ちは重要なパートナーであり、お互いがその関係を活かすことにより事を成し遂げて行くことが出来るものなのだと自らの経験からそれを思わされます。
・・・
end
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