ADHDの幼馴染とわたしの30年越しの贈り物【後編】
前編からの続き…
この記事を書くにあたり、幼馴染本人に相談したところ、快く全部書いて良いと承諾してくれたのでありのままに書こうと思う。
ADHDと告白してくれた幼馴染は、Aという。
普段彼女のあだ名で呼んでいて、ちゃん呼びをしていないのでここでも彼女のことをAと呼ぶ。
幼馴染のAとは、あんなに10代の頃は一緒にいたのに、20歳以降はあまり遊んだ記憶がない。
お互い25.6歳頃に地元を離れているので、成人以降は段々と疎遠になり、20歳以降の彼女のことを私は良く知らないかも知れない。
私が30歳頃離婚について悩んでいた時、疎遠だったにもかかわらず、Aに電話して相談したのは、やはり幼馴染だからなのだと、今でも思っている。
私はその後離婚し、うつ状態になり、カウンセリングに出会ってカウンセラーを目指すことになった。
そんな話を再会した夜、Aに話す最中本人から、ADHDだと告白された。
本人曰く、ADHDだと分かって、やっとそういうことだったのか!と腑に落ちることが多く自分のことが理解できて良かったそうだ。
自分が空気が読めなくて人を怒らせたり、そういう部分が嫌悪される理由も、自分が人と比べて不得意なことが多いことも、ADHDだって分かって以来随分気持ちが楽になったそうだ。
そして、ADHDの自分のことをもっと知りたいとも思ったそう。
私がカウンセラーをしているということもあったのか、Aは自分の話を堰を切ったように話し出した。
先日Twitterでこんな投稿を見つけた。
私の記憶の中にも否定的なことを言われるAの姿に見覚えがある。
それは、前編で話したように、遅刻や忘れ物が多いこと、不注意が多いこと、ADHDの特徴は学校という集団生活では叱られることの方が圧倒的に多いだろう。
否定的なことを言われ続ければ自己肯定感が低くなるのも当たり前だし、Aも自己肯定感が低いと自覚しており、こんな風に言っていた。
「ADHDって気づく前は、自分はブスの変人で空気読めないし、努力してもミスばかりのポンコツだと思って生きていた」と。
私は、思う。
ADHDの症状と彼女の人格は全く別のものだ。
私が知っているAは、とても優しい子である。そして、子供のようにとっても素直で正直な人だ。
彼女から、他人への卑屈で否定的な悪口や酷い言葉を聞いた記憶はない。
私はADHDや発達障害の専門家でも何でもないので、こんなことを言うのは分不相応だが、ADHD始め、他の発達障害等も社会の理解が深まればいいと願う。
そして、Aに、あなたをありのままに見ている人がここにいるよ。と、思う。
Aと私が疎遠になっていた20代の彼女の話を聞くとなかなかにハードだった。
ショッピング依存症、ギャンブル依存症、タバコ依存症、鬱。
鬱に関しては、発達障害の方の二次的問題(社会や環境に馴染めずに)で発症する場合もとても多いらしい。
突発、衝動的に行動してしまうことでお金のトラブルは起こりやすいかもしれない。
彼女もローンと借金で大変だった時期があったそうだが、その時の苦労や情け無い気持ちからもう2度とそういうことはしなくなったらしい。
また、Aは私の100倍記憶力が良い。
小中学生時代の嫌だったことを事細かに覚えている。私と違って記憶が色褪せない分、もしかしたら余計辛いのかもしれない。
ADHDの人の特徴でよく、自己中心的と言われているのを見る。
あれは、極めて主観的なのだ、と思う。
周りの人の立場や視点から、物事を見る力や想像する力が乏しい分、自己中とか空気読めない、と周りに映るのかもしれない。
その、嫌な記憶は14歳前後の記憶なので、思考や気持ちも当時の幼い未熟な感情や考え方のまま、主観的に記憶されているように見えた。
当時のまま記憶している彼女の、未熟な思春期の思い出は、同じ時代を共に過ごした今の私から見たら、事実と曲解していることも多いように感じる。
私の記憶を辿り、周りの状況と相手の気持ちを汲み取り、言語化してAに伝えたら、納得してくれていた。
こういう点、非常に素直で、私のような自立系武闘派女子のように相手の言葉を疑ったり、相手の言葉を受取拒否したりしないので、見習いたいものである。
ADHDの人は、空気が読めないとか、人の気持ちを理解できない、と言われがちだが、Aの場合は、想像するのが下手なだけで、ちゃんと伝えれば、理解できるのだと私は思う。
ただ、伝えるコツがあって、感情的にならず、理論的に教えてあげること。
また、伝えたいことがある時は、その都度、遠慮せず、ハッキリ、伝えること。だと思う。
もしかしたら、Aは否定的な言葉を言われることのほうが思春期は多かったのかもしれない。
子供の頃から否定的なことを言われ続けたらどう思うか想像したことがあるだろうか?
きっと、自分に自信がなくなるだろう…
自信がなくなるどころか、自分は存在してはいけない人間くらいに思うかもしれない。そうすれば心理学でいう罪悪感という感情を抱えることも多いかもしれない。
(罪悪感に関しては私の師匠がわかりやすく書かれているのでこちらを参考にどうぞ)
そうなれば、孤立しやすく、見捨てられ不安もあると思う。
Aは、空気の読めない発言で白い目で見られることを何度か経験したから、どの発言がまずかったのかは、分からないけれど、私が何かやらかしたのだろうな。というのは過去の経験で分かるそうだ。
そんなことを何度も経験すれば、自信を失って、いつも人の顔色を伺ったり、人の態度に敏感になるだろう。
だとしたら、Aのように、何かの依存症になるのも無理ないと思う。
だって、依存症は、それにしか依存できない状態だからだ。
自分を分かってくれる人が周りにいなければ、遠慮もせず、顔色を見なくてもよい、頼れる何かに依存するしかないだろう。
こんな感じで、Aと沢山会話した。
実はこの話の半分以上は、お互い帰路についてからLINEでやりとりした。
というのも、Aは再会してとても楽しかったそう。
それと同時に、家について一人になった途端に、パンドラの箱のごとく長年封印していた上に書いたような思いが溢れ出たらしい。
きっと私を信頼してくれているから、いろんなことを話してくれたのだと感じて嬉しかった。
これらはADHDの人だけではなく誰にでも当てはまることだ。
私だって、何かに依存してきたし、自己肯定感も低かったし、自信もなかった。
前編でも書いた通り、人の顔色ばかり気にして、自分のことなんて無視していたのだから。
そんな彼女から、またLINEが届いた。
「気持ち悪いって思われるかもしれないけど…
私優ちゃんに狂うほど依存してたと思う。
優ちゃんが自分より新しく仲良くなった子を優先してると面白くなかった。私は誰よりも優ちゃんを優先してたし、酷いこと言われても許したりしたのに、私のことは全然見てくれない!って思ってた」
と。
これを見て、気持ち悪いと思わないよ。という気持ちがひとつ。
もうひとつは、当時のAの気持ちに全く気が付かなくてごめんね。と思う。
そして、私もAと同じように依存していたのかもしれない。と思った。
最近見た海外ドラマでこんなものを見た。
親と蟠りがある友達同士の女子高生2人が、片方の女の子が辛い時に、
「私たち、お互いの母親になろう」
と抱きしめ合う。
そうすると、相手の女の子が、
「ありがとう、ママ」
と言うシーンだ。
とても良いシーンで今も印象に残っている。
私たちもあの時、時に、お互いの母親だったのかもしれない。
子供から大人になる狭間で、親の代わりになること、親の代わりを求めること、それは誰にでもあることだ。
私が疎遠になっているのに離婚の相談をAにしたのは、否定しないでなんでも受け止めてくれる、母親のような存在だというAへの安心感や信頼が無意識にあったからだろう。
そういう相手には、自分の弱さも出せたりするものなのだと思う。
そして、自分は依存していたと、素直に言えるAを凄いと思う。
私は、依存していたと相手に告げられるだろうか?
私のこと見て欲しかったって素直に言えるだろうか?
そして、そんな、弱い自分を認めることができるだろうか?
自分の依存心を認め、受け入れるのは意外と難しい。
そう言う素直さや正直なところは、彼女の才能だと思う。
「依存」というのは、
自分には何も出来ないと信じているから、誰かや何かに依存するしかない。
自分では何も出来ない赤ちゃんや子供と同じだ。
母親からおっぱいを欲しがり、寝かしつけて欲しくて、愛情を貰うことばかりを考える。
大人になっても依存でいると、些か苦しい原因になり兼ねないが、個人的には依存=悪とは思わない。
私たちは、無意識のうちにお互いをきっと助けてきたのだ。
お互いのお母さんになってもらったし、なってあげた。
実はこれは、とても有難いことだと思う。
だって、信頼できないとそこまで心を開けないだろうから。
依存から成長するには、感謝が鍵になると言う。
当時、未熟な私達は、何も出来ない存在だと思い込んでいたはず。
だからこそ、見捨てられない為に、頑張って相手に尽くし、相手を受け入れて依存していた。
でも、愛の目線で、今の私から過去を見ると、自分も愛を与えていたし、貰っていた。
私の愛を受け取ってくれてありがとう。
であり、愛を与えてくれてありがとう。
なのだ。
出会って30年以上経った私たちは、どうやらやっと依存を乗り越えて、お互いに助け合える、支え合う、相互依存のステージに行く時が来たようだ。
彼女に久しぶりに会えた巡り合わせと、
私ね、ADHDなんだ。
と打ち開けてくれたことに感謝している。
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カウンセリングのハートケアサロン仙台
安寧優(あんねいゆう)
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