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(ネタバレ)メッセージ推測 ★『君たちはどう生きるか』についての考察

これらの見解は私たち外国人の視点からの詮索であり、何かの参考になれば幸いと思います。もし日本語の使用に間違いや不自然な点がありましたら、ぜひコメント欄でご指摘いただけますと大変助かります。

宮崎駿の最新作『君たちはどう生きるか』には、数々の謎と象徴性が織り交ぜられています。これらの要素は物語の深遠な部分を見事に浮き彫りにし、観客の興味を惹きつける働きをします。本稿では、その謎や象徴について深掘りし、簡単に考察するものです。

本作の舞台は、第二次世界大戦が繰り広げられる時代。火災により母親を失った少年の物語が描かれています。父親が再婚し、戦争のために田舎へと移り住む三年後、少年は青鷺(アオサギ)と出会い、鳥の導きによる神秘的な旅が始まるのです。

キャラクターの心情変動
主要なキャラクターたちの心情変動とともに、謎と象徴が交錯する物語が展開します。主人公の牧真人は母親を亡くしたショックから立ち直ることができず、父親の再婚に喜びを見出せません。特に象徴的な場面は、父の再婚相手である夏子が真人に自身の妊娠を告げるシーン。ここでは、真人の低い視線と、その喜びの欠如が描写されています。

そして、夏子の視点からは、真人が自分をあまり好きではないことを感じ取っています。夏子は妊娠で体調が悪く、父親や使用人を通じて真人に会いたいと伝えるものの、真人は夏子に対して冷淡です。

真人がなぜ自分の頭を石で打つのでしょうか?
新しい環境への不満を表現し、再び父親からの注目を得たいという願望の表れなのかもしれません。実際、私たちの生活の中でも、理解が難しい偏った行動をとることはありませんか?何かに対する偏執から自分自身を抜け出すことができないとき、例えば失恋したときに、突然大量に飲食する人がいたり、何も食べなくなる人がいたり、無駄遣いをしてしまう人がいたりすることなどです。

この作品は現実をそのままスクリーンに映し出す映画であり、同時に我々が直視することを拒否し、理解することを選ばない真実を描いています。

生と死の象徴
物語全体を通して、青鷺(アオサギ)と鵜(ペリカン)が象徴する死の意味が緻密に組み込まれています。最も明瞭なヒントは、下の世界に入った後の白い生物(わらわら)が空を舞い、上の世界に生を呼ぶシーンです。わらわらが生命の誕生を象徴しているとすれば、鵜はそれに対する死を象徴しています。真人と火傷を負ったペリカンが出会うシーンでは、彼らがわらわらと互いに対立する存在であると述べました。このヒントに沿って、真人が母親を亡くした後に死を考えていた、そして青鷺(死を象徴する使者)が真人を下の世界へ導こうとした意図を示唆しています。一方、夏子は真人の態度に傷つき、情緒不安定、死の考えがあると推測され、後に下の世界へ連れて行かれます。

心の遍歴
物語の後半部では、キャラクターたちの心情の変化と共に、象徴と謎が更に複雑になります。真人はある日、夏子が森に消えてゆくのを目の当たりにしますが、気にも留めなかった。その後、母が真人のために残した本『君たちはどう生きるか』を見つけ、感動の涙を流します。この瞬間、真人は母の去った現実をようやく受け入れ、癒しのプロセスが始まるのです。その後、使用人が夏子を探すとき、彼も積極的に協力します。そして、夏子が死から逃れるのは下の世界で、真人が自身を「母さん」と呼んだ瞬間です。

真人と久子が一緒にパンを食べているシーンでは、久子は自身も母を亡くしたことを真人に告白しました。これは久子が異世界に来た理由なのでしょうか?現実世界に戻る前、真人は母が元の世界に戻るのを阻止しようとしました。彼は「もし戻ったら火事で命を落とす」と伝えましたが、久子はそれを知りつつも戻ってしまいました。母が真人に残した本『君たちはどう生きるか』は、真人に「幸せに生きている?」と問いかけたかったのでしょうか?

終幕のシーンとその象徴的意味
物語の終わりには、至ってシンプルでありながらも日常的なシーンが描かれ、幕が下ります。一見、「突然の終わり」と感じられるかもしれませんが、宮崎駿監督が特別な意図を持ってこの設定をした可能性があります。「君たちはどう生きるか」というタイトルを鑑みると、この作品が教訓的なメッセージを込めたものであるという意見も存在します。おそらく、監督はこの最終シーンを意図的に作り出し、視聴者に対して「どう生きるべきか」について特定の解答は持っていないというメッセージを伝えているのでしょう。

宮崎駿の最新作は、これらの複雑な象徴と謎を通じて、人間の心理の動きや生と死について深く探求しています。しかし、作品中には依然として未解明の謎が多く残されており、これらは観客に思索を促すエンジンとなり、作品の魅力を高めています。

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