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『怖い短歌』を読みました。


『怖い短歌』を読みました。

著者:倉阪鬼一郎


内容紹介
小説家で俳人である倉阪鬼一郎が、
恐ろしい風景。
猟奇歌とその系譜。
向こうから来るもの。
死の影。
内なる反逆者。
負の情念。
変容する世界。
奇想の恐怖。
日常に潜むもの。
の9つに区分する、様々な俳人の、様々な怖い短歌。



倉阪鬼一郎、名前に『鬼』がつくのでイヤでも目に付き、自然に憶えてしまった名前。

過去に一冊だけ読んだことがあるだけで、その本のタイトルも忘れちゃったし、失礼な話、自分にはその程度の作家だった。

Amazonで偶然にも本書を発見し、100%興味だけで買ってみた。

そもそも、自由律俳句は詠んでいるが短歌には特に興味はない。


「五・七・五・七・七」でいいんだっけ?

って感じだし、定型文に興味があれば自由律などになびいていない。(その辺りはちょいと長くなるしこの辺で)

読んでみた結果、興味だけで買って正解だった。

私は、間違いなく当たりを引きました。

良書です。

個人的に一番面白かったのが『猟奇歌とその系譜』の所だ。

この章で紹介されていた夢野久作といえば『ドグラ・マグラ』だし、たとえ読んでいなくても、あの挑発的な表紙は誰だって知っているし、日本探偵小説三大奇書のひとつだってことも知っている。(残り2つは小栗虫太郎『黒死館殺人事件』、中井英夫『虚無への供物』)

作品をちゃんと読んだことがないのにこんなのとを言うのもなんだけど、夢野久作が怖い短歌を読んでいても、不思議はない。

でも、その出来が、ね。。。

まあ、なにより、読んで貰うのが一番早いので抜粋してみる。

腸詰めに長い髪毛が交ざってゐた
ジツト考へて
喰ってしまつた

考えて、なにを想像してしまったのか。
著者が書いているが、俺も読んだ瞬間に同じ答だった。


独り言を思はず云って
ハツとして
気味のわるさに
又一つ云ふ

なんでやねん。
完全に突き抜けているとしか思えない。

猟奇歌といえば夢野久作(らしい)。
そんな夢野久作に影響を与えたのが、本書によると石川啄木らしい。
石川啄木。
それこそ、誰だってどんな作品を残したのかは知らなくても、名前は知っている国民的俳人だろう。
そんな石川啄木が詠んだ猟奇歌は、

誰か一人
殺してみたいと思ふ時
君一人かい…………
…………と友達が来る。

その友人には速やかに逃げて欲しい。
この歌そのものが怖いのに、歌の後を想像すると恐怖が倍増する。

他には、

一度でも我に頭を下げさせし
人みな死ねと
いのりてしこと

怨みが深い。
でも、なんだか共感しちゃう俺がいるのはちょっぴり怖いです。


そしてもう一人、間武の、

殺しのあと
特に用事もないので
お庭にでて草引きなどする

人殺しの考えていることなんでわけがわからない。
なんて言う人がいますけど、以外と普通の人だって人を殺すもんなんですよきっと。
だって普通の人って用事がなかったら草引きするでしょ?
だから怖いんですよ。


そもそも、こんな世界があったのかと眼から鱗で(使い方、あってる?)、短歌や俳句、それに自由律俳句だって、経験、心情、情景を詠んでなんぼだと思っていた。
要は、
『あ、フィクションだっていいんじゃん』
と思ってしまったってことだ。

世界が広がりました。

単純に影響されやすい私。
この本きっかけに短歌に目覚めたりはしてないけれど、今後、妙な、怖い自由律俳句が増えるよそりゃぁ。


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そしてさっそく詠んでみた。

まあ、コレ、フィクションじゃぁないんですけどね。

フフフヒ……。



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