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社長とCFOの複雑な関係

CFOの悩みは社長との付き合い方

経営者(経営陣)はビジネスを発展させるための施策を考え実行する。
傍から見れば独断、ワンマン、カミカゼに思えることもある。
お金をやりくりしたり、PLインパクトを気にする財務経理責任者やCFOとすれば、社長の一挙手一投足を気にせざるをえない
財務経理が「保守的」とされるのは、担っている職責に起因する。
当然である。
キャッシュが潤沢にある企業だとしても、短期的にPLが傷んだり資金ショートが起こる可能性がある施策には、財務経理の立場からは慎重にならざるをえない。

そしてそういったディフェンシブな考えや意見を社長や経営陣が疎ましく思うのも理解は出来る。「このビジネスの本質を理解していない」だの「節制、抑制しか言わなくておもしろくない」だの。
思いつきから大きなビジネスになることがあるのは、私も理解している。ちょっとしたひらめきが、マーケットにインパクトを及ぼす事例は多々ある。

求められる役割と担う責任の間で

社長や経営陣としては施策の実行は既定事項であり、CFOにはビジネスの後押しをして欲しいと望み、賛成や同意が得られなければ時には辛辣な言動を取ることもあろう。
いっぽうCFOとしては、常に最悪を想定しながら運営している。事業の継続性を毀損するリスクはなんとしても避けたい。だから細かい数字の根拠や、提示された実現性の確度を確認する。
融資を受けていれば取引銀行への説明も必要であるし、新規プロジェクトのための融資が必要なら、当然その想定収益を示すことも必須だ。

結果、「あいつは細かい」「あいつはダメだ」「あいつはわかってない」なんて評価されてしまうこともある。
CFOは、現在のキャッシュ、今後の見込利益、プロジェクトの実現可能性などから判断した意見を出すが、それが社長や経営陣の思惑とズレることも当然ある。
本来はビジネスをサポートする位置づけの財務経理が、彼らには障害に感じられることもある。そしてCFOはそのズレを抱えたまま孤立するか、消極的なYESを言わざるを得なくなる。自らの職責への不安を抱えて。

CFOはブレーキ役

財務経理やCFOは企業におけるブレーキだと世間ではよく言われる。
だが、「ブレーキの定義」が企業によって、経営者によって、そしてCFOによって違うから上記のようなズレが起きてしまうのではないか。

企業活動における「ブレーキ」はリスクを避けようとするときに発動するものと定義したい。
企業活動を継続、発展させるにはキャッシュが必要である。売上が伸びれば経費も増える。新たな取り組みのためには投資も必要。採用を増やし、固定費の増加を補うだけの発展が求められる。
それがある程度担保されれば、CFOだってGoサインを出すだろう。CFOが求めるレベルの説明や数字の裏付けがあるのならわざわざ反対はしない。
CFOは財務経理的視点からのサポート(改善点、指標、リスク、スケールした場合の試算など)をするのが、立場としての責務を果たすことであり、社長もそう望んでいるのではないか。

お金を使うのは簡単。だが稼ぐのは難しい。

この前提に立ち、CFOは数字的な面からのサポートをする。見込みが甘ければツッコミを入れるし、手持ち資金から予算を設定する。状況が思わしくなければ、プロジェクトの縮小や一時停止、撤退も意見することだってある。

これは健全な「ブレーキ」である。事業の継続が企業には何よりも大事であるからこその意見。それをどうプレゼンできるかにもよる。
反対意見を述べるのにはエネルギーが必要。反対する確固たる理由を用意しなければならないし、場合によっては対案や妥協案も必要だろう。
そういった役割を担うのがCFOであり財務経理である。

数字を常に見ていて会社の状態を誰よりも理解しているCFOとしての意見を頭ごなしに否定する経営陣がいるとしたら、非常に残念である。

経営は感覚やヒラメキと冷静な判断の両立

ビジネスをドライブし、アクセルを踏むのが社長やその他経営陣だとすれば、周囲に気を配り、軌道修正や速度調整をするのがCFO。
バランサーとしての役割と言ってもよい。
嫌われ役になることもあるだろう。自分の経験からも、財務経理やCFOは煙たがれる事が多かった。だが、財務経理としてのアイデンティティを殺すなら、存在意義はない。単に伝票処理をして、決算をして、支払をするのみ。

そこに面白みはあるのか。
ライスワーク(食うための仕事)と割り切るのか。

経験、勘、度胸だけでいけるフェイズはある。
だが、そこに数字というもう1つの要素があれば広がり方も違うはずだ。

財務経理、CFOは別に経営陣と敵対したいわけではない。(自分は別として)経験上財務経理のひとたちはとても真面目で控えめな方が多い。意見するのが苦手な人もいる。企業の風潮として、経理は黙っとけ、というところもあるかもしれない。
だが、せっかく様々なフィールドのスペシャリストが集う会社なのだから、各々の得意な分野の叡智を併せて運営できたらビジネスの拡大にも貢献するのではないだろうか。

理想論、と言われようと私は常にこの理想を追っていきたい。


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