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終わり良ければ総て良し

▼舞台デザインの最初にやるのは…

前回の記事で、舞台デザイン(設計)について述べました。
演出目標を決めた後は、舞台デザイン(設計)をぼくはしていきます。
その中でも今回は、
『最終シーンをどのように見せたいかを考える』
をテーマに記述いたします。

▼何故最終シーンなのか。

何故最終シーンを最初にイメージするのか。
これは、「終わりを決めると、何をするか明確になるから」ということが一番の理由です。
ぼくの稽古場での稽古もこの最終シーンを読み合わせの次にやるくらいに重要視しています。
俳優さんやスタッフと大まかでも最終シーンについて共有していくことで、役のみならず、作品としてどのようにお客様にご覧いただくかはっきりさせることが必要だと考えているからです。

アウトプットがわかればインプットも決まってくる、とでもいいましょうか、何を表現したいかはっきりすることで他の事も自ずと決まってくると考えています。

なんでもそうだと思いますが…料理を作ろうと思ったら、料理の最終形態をイメージすると思いますし、ゲームをやる時もクリア条件を知ってやるのとそうでないのとでは…進み方が違うと考えています。

もちろん、この料理のたとえでもゲームのたとえでも…「目標」…先に述べました「演出目標」とも言い換えることができるかもしれません。

「演出目標」を果たすには、最終シーンはとても大事な要素だと私は考えていますので、”最初”の作業で、最終シーンをどのように見せたいか考えます。

▼具体的にはどのようなことをイメージするのか。

具体的には…次のような作業をしていきます。
 1.最終シーンをどこからとするのか
 2.最後の最後をどのように表現するのか
 3.最終シーン全体の段取りをどのようにするのか
という3つを基本に考えます。

最初の「どこからとするのか」は、台本上に数字などで、「最終シーン」とわかるようなものが書いてあってもなくても…
舞台演出をする上で、「どこから」最終シーンとして捉えるか、ということを考えます。もちろん、俳優さんやスタッフと共有します。
これは、物語上の最終シーンだとしても、話によっては、直前のシーンが深くかかわってきたりする場合もありますし、台本上の最終シーンの開始の直前に何か…照明効果や音響効果…を入れる場合もあります。
つまり、「演出家」の解釈としての最終シーンの範囲を決めます。

つぎに「最後の最後」についても同様で、どのような効果にするのか。
登場人物を残したまま暗転にするのか、登場人物を退場させて、照明をきりかえるのか、音はどうするのか、などなど…
どのような「画」をお客様にご覧いただくのか考えます。

3つめの「最終シーン」の段取りについては、(またの機会に述べますが…段取りとは俳優さんの動き、しぐさとは別だと考えています。)俳優さんが舞台上でどのように動き、舞台全体の灯りをどのようにするか、音をどのような音にするか、など…最終シーンの「約束としての」段取りを考えます。

この3つを軸に「最終シーンをどのように」お客様にご覧いただくのか考えています。

▼同時に、冒頭シーンもイメージができる。

最終シーンのイメージができると、冒頭のシーンもどのようにご覧いただくのか、ということが見えてきます。
冒頭のシーンでどのような灯り、どのような音、どのような俳優さんの動きがあれば、次のシーンにつながり、もっと言えば…最終シーンにつながるのかが見えてきます。
ここで、「なんかおかしいな、矛盾が出てくるぞ」となれば、最終シーンのイメージを見つめ直します。
冒頭のシーンと最終シーンがある種の(時間や音の大きさ、色の数などではなく)バランスがとれたら…作品のイメージの基盤…舞台デザイン(設計)の基盤ができてきたと考えています。

▼次回は…
次回は、舞台デザイン(設計)の2つめと3つめ「衣装、メイクのイメージを考える」と「台本に即した舞台空間をイメージする」について述べて参ります。

舞台演出家の武藤と申します。お気に召しましたら、サポートのほど、よろしくお願いいたします!