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写真で描写『通りすぎる』


 つい先日まで夏服を着ていた気がする。
 なんだか寒くなってきたな、と思っていたら、いつの間にかコートを着て町を歩くようになっている。

 そうやってあっけなく季節が過ぎていくんだよな。わたしは気づけずに、置いていかれる。
 毎日毎日、一日一日を過ごす。一生懸命になって、時々立ち止まって、そんなのを繰り返す。気を抜くと秋の風に吹かれて枯れてしまう。

 いつもそう。
 わたしは秋が過ぎるのに気づかない。

 月の側で光る金星にも、道に香る金木犀にも、赤く色づくもみじの葉にも、気づかずに通り過ぎてしまう。

 君がくれた優しさすらも、わたしは触れられなかった。



通りすぎる





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