「ふるさと住民票」というのは実現可能か?

導入


以前、国民民主党の代表選挙において北海道に玉木代表と前原代表代行がやってきた。そのときの党員サポーター集会にて地方創生のあり方についての質問があり、両候補とも「二重住民票」ないし、「ふるさと住民票」について触れていた。

その議論については以前から聞いたことがあった気がするが、あまり地方創生に対する解決策として有効的な手段である実感がわかなかったので興味がそそられなかった。確かに、地方創生に対し中央ができることというのは限られている。地方自治体の創意工夫に対して予算をつけることや、地方に住む人々へのインセンティブを増やすことぐらいしかないように思える。そこで今回は、「ふるさと住民票」が地方創生の有効的な手段になり得るのかを調べ評価する。

メリット、有用性

http://www.ecpr.or.jp/pdf/ecpr40/19-22.pdf

https://f-gakkai.net/wp-content/uploads/2020/09/14-2-1.pdf

これらの記事を参考にした。


これらが有用になる前提として、社会の流動性の高まりがある。住んでいる自治体と勤務している自治体が異なる場合や、地方を転々とするような仕事ないし、暮らしをしている人々の増加が「ふるさと住民票」、「二重住民票」の必要性が問われるようになった背景にある。要するに、住民票を持つ地方自治体以外にも応援したい、お世話になっている自治体が存在している状況が増えているということが背景にある。

「ふるさと住民票」をその自治体に登録する側のメリットとしてその地域の公共施設を市民料金で利用できることや、祭りや伝統芸能に参加できたり、その地域のパブリックコメントに参加できたりする。

ここで私が感じたのは「ふるさと住民票」を登録した人はあくまで市民なのではなく、ゲスト市民のような公共サービスの一部を受けられる状態であるということ。そして、「ふるさと納税」や各地方自治体の条例レベルで実現可能だということである。

地方創生というのはなかなかに難しい

確かに、社会の流動性の高まりによって複数の自治体が市民に対して複合的に市民サービスを展開していく必要性があるというのは言葉にするとかなり妥当に聞こえるが、何をどう改善していったらいいのかはあまり思いつかない。

さらに、「ゼロサム型」の地方創生を批判する人は一定数いるが財政というのは限られており、私は地方自治体の創意工夫によって人口を増加させ、高い所得や幸福度を実現できる地方自治体が現れるのと同時に、うまくその地域の魅力を引き出せずに高齢化を止められずに市民サービスを縮小させ、近隣の地方自治体に吸収されていくような地方自治体が現れることは間違いないと思っている。

そうであるならば、国や都道府県単位でやるべきことは地方自治体の創意工夫を評価し、支援することと人口増などのうまく地方創生策を講じた自治体を資金的、制度的に支援することであり、その再現可能性を吟味して他の自治体に真似させることである。例えば、兵庫県明石市や北海道上士幌町というのは面白い地方創生を実施している。やはり人への投資など再現可能性がある部分はある。ただし、明石市には神戸という大都市に近いという利点があり、上士幌町には強い地場産業がある。これらを踏まえるとどの自治体でも再現可能かと言われると首を横に振らざるおえない。

「ふるさと住民票」の実現に向けての課題

ただ、「ふるさと住民票」、「二重住民票」というのは議論としては面白い。例えば、これからほとんどの人が複数の拠点を持つような暮らしになったときこの制度の実現を迫られるのであろう。

ここで課題になるのは、納税と選挙権である。

どちらに対しても住民税を支払うと当然重複課税になるが、一方にのみ住民税を支払うと当然公共サービスやインフラ整備、維持のための資金が宙に浮いてしまう。どの程度の税負担をどのように配分するのかは議論の余地がある。ただし、現状の「ふるさと納税」の仕組みはかなり参考になるであろう。

そして、選挙権である。
地方選挙において複数の選挙権を持つことは憲法に違反するかどうかは議論があるが、それを回避するために選挙権のクーポン化という議論もある。1人に複数の選挙権を与え、それを各地方自治体の選挙に割り振るというものである。これが実現されたらかなり面白いよなって調べていて思った。

総評

私個人的には、「ふるさと住民票」というのは地方創生に対してあまり効果がないのではと思った。

そして、地方創生というのは国単位でやるべきことはそこまで多くないのでは?とも思っている。例えば、やはり地場産業をブランド化しそれらの価値を高めるために政府がそれなりの費用とノウハウを出して、国内や海外にプレゼンスすることが必要だと思う。おそらくは小規模では実施しているが、日本酒や和牛、海鮮物やフルーツなどもっと高い価値を見出すためにシャンパンみたいな圧倒的なブランド力をつけられるようなマーケティングを国家単位で実施し、地方で稼げるようになれば自然と地方に人は流れていくのではないだろうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?