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ベンゾジアゼピンの減薬・断薬

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2023年9月の記事一覧

ベンゾジアゼピン・コラム - "不確実性への不耐性" 断薬を難しくするもの [Free full text]

ベンゾジアゼピン・コラム - "不確実性への不耐性" 断薬を難しくするもの [Free full text]

ベンゾジアゼピンの常用量依存を呈した患者さんの中で、いくつもの減断薬法を試み、複数回の増減薬を経験し、転院や主治医変更を繰り返している、といった一群の治療はしばしば困難だ。
理由は複合的。ニューロンに生じた変化が複雑化しているであろうことはその1つ。

しかし臨床的にはその複雑な病歴・治療歴の背景にある患者さんの心性が、治療上の困難の主要因として感じられることが多い。

減断薬において、柔軟性は有

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ベンゾジアゼピン・コラム - 私説「薬剤離脱性HSP(Highly Sensitive Person)」[Free full text]

ベンゾジアゼピン・コラム - 私説「薬剤離脱性HSP(Highly Sensitive Person)」[Free full text]

僕の私的な印象としては、ベンゾジアゼピンの離脱中~離脱後しばらくは、精神的・身体的に感覚や感情が過敏になる患者さんが多いように思います。

音や光に対する過敏性が増す。
不安感や恐怖感を、過剰に感じるようになる。
些細な刺激で苛立ち、ネガティブな感情を抱きくようになる。

ベンゾジアゼピンの減断薬に取り組んでいる医療者、または患者さんご自身でも自覚しておられる方はいるかもしれません。

全方位に向

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身体症状症(旧 身体表現性障害)とベンゾジアゼピン離脱症候群(2/4)

身体症状症(旧 身体表現性障害)とベンゾジアゼピン離脱症候群(2/4)

ベンゾジアゼピンの離脱症状には個人差が大きく、医療者の側の理解水準も大きく異なっています。標準偏差が大きい変数を誤差が大きなメジャーで測定するようなものですから、離脱症状の表現型や当事者の思考や感情の表出がどれくらい過度で極端なのかを判断することが難しいのは間違いありません。

「ベンゾジアゼピンの情報を収集するためのSNSアカウントを持っているような離脱症候群当事者」の一部にはここで既に感情的に

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身体症状症(旧 身体表現性障害)とベンゾジアゼピン離脱症候群(3/4)

身体症状症(旧 身体表現性障害)とベンゾジアゼピン離脱症候群(3/4)

つまり、ベンゾジアゼピンの離脱症状そのものだけではなく、その「純度」にも大きな個人差があるのかもしれない。

例えば、離脱症状の存在すら知らずに長年マイスリーを服用していた患者さんがマイスリーを持参し忘れて旅行に行って旅先で眠れぬ夜を過ごし、3日目に強直間代発作(benzodiazepine withdrawal seizure)を起こして救急搬送されたといったケースでは心理社会的要因の介在は皆無

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身体症状症(旧 身体表現性障害)とベンゾジアゼピン離脱症候群(4/4)

身体症状症(旧 身体表現性障害)とベンゾジアゼピン離脱症候群(4/4)

「指しすぎ」であるように思える患者さんを診察する場合でも、先入観を持たずに病歴を聴取し、ベンゾジアゼピン離脱症候群の診断が付き、条件を満たしていれば漸減を開始します。漸減が進み離脱症状が改善するにつれて、心気的な訴えが影を潜めることも少なくありません。

減薬には時間がかかるので、患者さんと顔を合わせる期間や積算時間は長くなります。それを活用して治療関係を構築し、患者さんの性格傾向やベンゾジアゼピ

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