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ベンゾジアゼピン・コラム - "不確実性への不耐性" 断薬を難しくするもの [Free full text]

ベンゾジアゼピンの常用量依存を呈した患者さんの中で、いくつもの減断薬法を試み、複数回の増減薬を経験し、転院や主治医変更を繰り返している、といった一群の治療はしばしば困難だ。
理由は複合的。ニューロンに生じた変化が複雑化しているであろうことはその1つ。

しかし臨床的にはその複雑な病歴・治療歴の背景にある患者さんの心性が、治療上の困難の主要因として感じられることが多い。

減断薬において、柔軟性は有利に働くが優柔不断は不利に働く。
この優柔不断は「不確実性への不耐性」と言い換えることができるかもしれない。

ベンゾジアゼピンの断薬までの見通しを明確に示すことは難しい。
粛々と漸減を進める他は無いのだが減量幅やステイ期間には個人差があり、いつ断薬に至るのかはわからない。全ての患者さんが断薬できるとも限らない。
その曖昧さに向き合えない患者さんもいる。

初診時すでに複雑な服薬歴を有している患者さんはそのタイプの心性をお持ちである確率が高い。曖昧さを嫌うが故に一気断薬や栄養療法といった「断言してくれる」技法を選ぶ場合が多いからだ。そして痛い目を見てまた不安になり、他の「もっと良い断薬法」を希求することを繰り返す。
彼ら彼女らは漸減法を開始してもまたネット情報に飛びついてスリップしがち。"断薬法ショッピング"を繰り返して難治化していく。

或いはそもそもその「不安になりやすい性格特性」の故にベンゾジアゼピンの処方が開始されたのかもしれない。
ベンゾジアゼピン依存が起きた場合に離脱が難しくなる特性を有する人ほどベンゾジアゼピンを処方されやすい傾向があるのだとすればずいぶんと皮肉な話だ。

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