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ベンゾジアゼピン減断薬 - 離脱症状はキンドリングするか

ベンゾジアゼピンの減断薬において、一部の患者さんが「キンドリング」という現象を懸念されることがあります。すこしマニアックなテクニカルタームですから、それを知っているのはベンゾジアゼピンについて勉強せざるをえなかった患者さんであることが多い。具体的には、1回以上断薬に失敗して、新たに減断薬に臨もうとしている患者さんです。離脱症状で辛い思いをされ、断薬の成功確率を上げるためにインターネットで情報収集するなかでキンドリングという言葉を知ったというケースが大半です。

キンドリングは、もともと1970年代のてんかん研究で使用された用語で、微弱な電流刺激が再三脳に与えられることで、神経細胞の興奮性が増し、結果的に自発的なてんかん発作が引き起こされるという現象を説明するものです。この概念は「小さな火花が大きな火事になる」というメタフォリカルな意味合いから名付けられました(kindle:火をつける、燃え立たせる)。
実験では、最初は発作を引き起こさないほどの微弱な刺激を繰り返し行うと、そのうちにてんかん発作を呈し、刺激を止めても発作が持続するようになりました。これは、神経細胞の興奮性が変化し、それが脳の興奮のバランスを崩すことでてんかん発作を生じさせると解釈されています。
このキンドリング現象は、脳の可塑性、すなわち脳が経験によってその構造や機能を変える能力を示す一例として、さまざまな分野で参照されています。

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