sakatani

ヒトの理解に基づいたものづくりを目指しています。 認知科学、意思決定論、行動経済学、進…

sakatani

ヒトの理解に基づいたものづくりを目指しています。 認知科学、意思決定論、行動経済学、進化心理学、数理生物学、機械学習、統計、UI/UXデザインに関する記事を書きます。 普段はデータ分析や機械学習サービスのデザイン・開発に関わっています。

最近の記事

LLM活用サービスのデザインパターン5選(システム編)

大規模言語モデル(LLM)を活用したサービスが次々と現れていますが、そんなLLM活用サービスにおいて、「誤った情報の呈示(Hallucination)」の回避が重要であることは、前回の記事で触れました。特に、顧客対応や医療・教育関連の「正確性」が強く求められるサービスでは、Hallucinationが致命的です。 この記事では、Hallucinationを抑えるための対策として知られているものを、正確性の制御のしやすさの順にまとめました。 LLMについては毎週のように新しい話

    • LLM活用サービスのデザインパターン(UI/UX編)

      この記事を読んで分かること: LLM活用サービスの概観マップ LLMを使うことで生じるUX上の4つの課題 LLM活用サービスにおけるデザインパターン 大規模言語モデル(LLM)を活用したサービスが次々と現れています(気がします)が、そんなLLM活用サービスの開発において、UXデザインの面からどのようなことに気を付けるべきかを、LLMの性質を踏まえて記事にしてみました。 UIデザインからできることだけでなく、エンジニアリング上の設計の面からできることについても触れていま

      • レプリケータダイナミクスとベイズ学習の等価性(1)

        レプリケータダイナミクスとベイズ学習の数理的な等価性について、日本語で解説されている例が見つからなかったので、書いておきます。英語だと Czégel, et. al., 2022 がまとまっています。本記事も同様の構成にしています。 確率的推論と進化ダイナミクスの等価性適応度が頻度に依存しない場合の離散時間レプリケータ方程式は、時刻$${t}$$の表現型$${i}$$の頻度を$${q_i(t)}$$、適応度を$${f_i(t)}$$とすると、 $${ q_i(t+1) =

        • PandasからPolarsに移行して混乱するケース3選

          Pandasに慣れた人がPolarsでハマりやすそうなケースをまとめました。 PolarsはPandasと似たメソッドが多いので、Pandasに慣れているとドキュメントを参照してすぐに簡単な操作ができるようになっています。 ただ、ドキュメントには複雑な操作例があまり載っていないこともあり、少し込み入ったことしようとするとPandasとの差異が重なって混乱しやすい気がします。 ChatGPTに聞いてもPandasとの混乱が見られる場合が経験上結構あります。 1. ある列の値で

        LLM活用サービスのデザインパターン5選(システム編)

          機械学習サービスのUXデザイン3原則とは?

          以下の記事を読んで面白かったので、一部を簡単に要約しました。Delivery Heroのリードプロダクトデザイナー、Konrad Pierceyへのインタビュー記事です。(元記事はかなり長いです) 0. 概要 機械学習サービスのグッドデザイン原則とは? …オープンで透明、教育的、単純、楽しい。ユーザの知らないユーザの行動統計を開示し、サービスから離脱する休憩を利益に反するがあえて勧めることで、体験価値を与えるサービスであることを示すのがGDML (Good Design

          機械学習サービスのUXデザイン3原則とは?

          [階層ベイズ] ベータ分布のパラメータの超事前分布

          階層ベイズモデルにおいて、尤度を二項分布、事前分布をベータ分布とした場合の、ベータ分布のパラメータ$${a, b}$$の超事前分布の選択方法について調べたことのメモ。 結論別にどれでもいい。 よほど変な分布選ばない限り実用的には大きな問題にはならなさそう。多分。 共通の分布でa, bを直接モデル化するまず、a, bの両方を直接モデル化している例から。 1. ガンマ分布 特に理由無く恣意的にガンマ分布を使っている例。 $$ Y_i ∼ Binomial(n_i, p_

          [階層ベイズ] ベータ分布のパラメータの超事前分布

          計算論的神経科学と進化心理学

          最近読んだ本「広がる!進化心理学」に、計算論的神経科学と進化心理学の関連性について書いてあったので、そのメモです。 紹介するのは、2章「進化心理学と神経・生理」です。 ティンバーゲンの四つのなぜとマーの3レベルを対応付けて、計算論的神経科学と進化心理学は本質的に同じアプローチだとしています。表にするとこんな感じです。 $$ \begin{array}{ccc} マーの3レベル & ティンバーゲンの四つのなぜ & 領域 \\ \hline 計算論 & 適応 & 進化生物学

          有料
          300

          計算論的神経科学と進化心理学

          読書メモ:「意思決定の認知統計学」

          「意思決定の認知統計学」という本を少し読みました。 人間の意思決定の過程のベイズモデリングについて論じた本です。1995年初版発行の、28年前の本です。ウェブ上にあまり情報が無く、津本周作(当時東京医科歯科大)の書評以外ほとんど書評や感想が存在しないようなので、ここにメモを書いてみます。 津本の書評で、 とあり、調べたところ「その他の心理モデル」にプロスペクト理論が含まれているようなので、その箇所が読みたくて入手しました。廃刊になっており、図書館でも見当たらなかったので古

          読書メモ:「意思決定の認知統計学」

          DNA描画ツールを公開しました

          DNA Drawer学生時代に使っていたDNA模式図描画ツールのweb版を公開しました。 環状DNAとかPowerPointでつくるの面倒なときにどうぞ。 こんな感じです。左右のスライダーとパレットの値を変えて、好みの核酸にします。 画像としてエクスポートする機能は無いので、スクショして保存してください。 DNAの色、線の太さ、背景色、長さ、らせんの幅、回転の数などを好きに変えられます。 二重鎖のずれ具合も好きな割合に設定できます。 もちろん直鎖DNAも、一本鎖DNAも

          DNA描画ツールを公開しました

          180万艇のデータから分かった競艇で利益を出す単純な法則

          結論:単勝万舟券に賭ける2017年から2022年の31万レース(180万艇)のデータを分析して「競艇は単勝の万舟券に急いで賭け続ければ勝てそう」ということが分かりましたので、その詳細を説明します。 まず、下のグラフを見てください。 これは、単勝のオッズと回収率の関係を示しています。 180万艇のレース結果をオッズの水準ごとに60分割し、平均オッズに対する回収率をプロットしています。 見ての通り、最もオッズが大きい点(76.5倍以上)では、平均回収率が100%を超えていま

          180万艇のデータから分かった競艇で利益を出す単純な法則

          [Python編] Google Earth EngineとGoogle Colaboratoryで衛星画像から火災を可視化する方法

          前回は、JavaScriptで衛星データを加工して表示する方法を紹介しましたが、Pythonの画像処理や機械学習のライブラリを用いて解析したいときもあるかもしれません。 そこで、Google Earth Engine(GEE)を使ってGoogle Colabから衛星データを取得して火災を可視化してみます。 今回作成したアプリは以下に公開しました。 画面は以下のような感じです。 2022年3月23日のイルピン上空を見ています。 赤くなっているのは火災が起きていると推定した

          [Python編] Google Earth EngineとGoogle Colaboratoryで衛星画像から火災を可視化する方法

          [JavaScript編] EO Browserと人工衛星データで火災を可視化する方法

          人工衛星データを使ってウクライナ侵攻の状況を可視化する方法のEO Browser編です。 衛星データを取得して、火災を可視化する方法について書きます。 今回の作成したアプリは以下に公開しました。 以下のような画像を観られます。 衛星データの観察EO Browserは、Sentinelを始めとする様々な衛星のデータを地図上に重畳して閲覧できるウェブサービスです。 EO Browserでは、好きな日付・場所の衛星画像を地図に重畳して観察できます。 試しに、2022年3月2

          [JavaScript編] EO Browserと人工衛星データで火災を可視化する方法

          人工衛星データでウクライナ侵攻状況を推定する方法

          この一連の記事では、人工衛星データを使ってウクライナ侵攻の状況を推定する2種類の方法をとりあげます。 最終的には、以下の画像のように、ウクライナで火災が起きていると思われる地点を地図上に赤く表示します。 EO Browserを使う方法 土地や日付を切り替えて見て回りたいとき向けです。 Google Earth Engineを使う方法 Pythonのライブラリを使って衛星データ解析したいとき向けです。 人工衛星データのいいところ 人工衛星データの分析は、離れた地の情報を

          人工衛星データでウクライナ侵攻状況を推定する方法