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とあるベンチャー企業の組織学習にまつわる今ココと気付き

「組織学習」ってつまりどういうことなのか。昨年12月頃から迷いながらも試行錯誤していたことがやっと言語化できてきたので、整理も兼ねて記録しておきます。

組織学習とはなんのために何をすることか(自己流の整理)

学校連絡・情報共有サービス COCOO(コクー)はサービス提供開始から2年めに入りました。COCOOのサービス運営事務局チームのミッションは顧客の成功を支援すること。学校の先生方のカスタマーサクセスを目指しています。

サービス提供開始から徐々にメンバーが増え、ここ1年のチームの課題は「サービス立ち上げ時から実践と学習の積み重ねで得てきた知見をどうやって組織で身につけるか」といったことであったように思います。

そもそも学習とは一人一人の知的活動として行われるものであり、「知見を組織で身につける」と表現したことを平たく言い換えれば
 チームの「1人」が知ってることを「2人」が知ってる状態になる
 チームの「1人」ができることを「3人」ができるようになる

ために何をするかということです。

みんなそれぞれ経験も知識もスキルも感性も違うメンバーが集まるチームで、それぞれの業務を担当する中で各々が経験できること、できないことがあります。同じ出来事に立ち会ったとして、解釈や気付きも必ずしも同じわけではありません。また、ジョインしたタイミングが違うので古株メンバー(というほど月日は経ってないけど…)の経験と知見を伝達する必要性もありました。

「知見を組織で身につける」学習の目的は、目標とする品質の業務を遂行するためのスキルを獲得することです。

考えたことの位置づけについて

ところで「組織学習」という言葉を用いた議論の多くは、この記事で語っているような実務レイヤーの話ではないことに注意が必要です。

『「学習する組織」入門――自分・チーム・会社が変わる 持続的成長の技術と実践』によれば、「学習する組織」とは次のような学習が循環する組織の状態を指します。

組織の文化を特徴づける、「信念・前提」「慣行」「スキル・能力」「関係」「気づき・感性」という5つの要素を1つのサイクルとしてつなぎ、好循環を生み出すことが、学習する組織の構築には欠かせません。これを「深い学習サイクル」と呼びます。(小田,2017)

多くのWeb上のテキストでも、前述のような高次の学習の循環が、変化の激しい時代に組織が変革し続け、しなやかな生き残り、ひいてはイノベーションの創出に資するものとして説明されることが多いようです。(また期待値の大きな言説ですね・・・)

とりわけ、不確実で変化の激しいと言われる今日の事業環境において、学習する組織は「しなやかに、進化し続ける組織」となっていきます。(中略)「進化し続ける」というのは、激しい環境変化のもとでも、新しい環境に適応し、自らを変革させる能力を備えた組織です。「自己組織化」することができる組織と言えます。(小田,2017)

とはいえまず大前提として、できたばかりの組織・チームにおいてはまず実務に直結する「低次の学習」が自己組織化されることが、組織の足腰を強く育てるための第一歩であるはずです。

FYI:サマリーとして議論の概略を把握するのに、こちらのnoteが大変参考になりました。

小さなチームでやってきた学習のステップと、その気付き

本稿はカスタマーサクセスをミッションとするサービス運営実務という関心事において実践してきた、組織学習の営みの振り返りです。

学習の結果として得たい具体的なスキルは
 仕事を実行できること、
 状況を認識できること、
 課題を理解し判断できること、
 顧客の責任範囲にある仕事と意思決定をサポートできること、
というざっくりした段階で、それぞれに必要な手段が異なっていたように思えます。

やってみて得た大きな気づきは、次のようなことでした。
・経験に勝る学習はないということ
・業務ツールに仕込んだノウハウは生きること

◆仕事を実行できるために:
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」山本五十六の名言ですが、まさに学習の基本動作はこういうことの繰り返しだと実感します。

◆状況を認識できるために:
実務のひとつひとつがルーチンワークの視野にとどまらず、組織理念を体現した質の高いサービス提供のためには、日々起こる出来事をどのように解釈するかが重要なポイントであると思います。何が成功で何が手痛い失敗だったのか、どうなるとより良い成果といえるのか。業務の引き継ぎや相談の場では、出来事の解釈・捉え方について特に意見を述べるようにしていました。

会議体の中ではどうしても抽象度が高くなりがちなところ、日常の場だから実務に即した具体性の高い・個別の判断軸に直結するサイズ感での会話ができるので、理念浸透への補助輪となる効果もあったかもしれません。

おまけ:仕事風景

おまけ:キレイに撮ってもらった仕事風景の一枚です

◆課題を分析し判断できるために:
相談しながら仕事をするというと当たり前ですが、一緒に状況を解釈して、判断して、小さな意思決定を合意して実行する、このプロセスはまさに組織学習の営みそのものだと感じました。

最初こそ私(古株)から他のメンバーへという機会が多かったですが、今では必要に応じて必要な組み合わせのメンバー同士で、このような状況判断と意思決定を共有するプロセスが当たり前のように起こっています

これは本当に大いに反省も含めた気づきなのですが、人が成長するためには他の人から相談を受ける機会、失敗する機会を奪わないことがめちゃくちゃ大事で、特にこれは古株メンバーの側が意識して手放し、委ね続けないと、メンバーの成長の邪魔になってしまうことは、今後も自戒しなければと思います。

(クソジーコ問題というインターネットミームが心に染みる)

一方で先回りしてフォローしないのと同時に、致命的な失敗を避けるため、トラブル要因に気付かずスルーしてしまうようなことを防ぐために、口は出さないけど目は向けておくことも同じくめちゃくちゃ大事です。

◆顧客の責任範囲にある仕事と意思決定をサポートできるために:
さらに上位の知見としてコンサル的な要素があって、抽象度も高いぶん属人性から脱却することの難しさにぶつかっています。ただ最近気づいたのは、言葉やマニュアルでうまく浸透しなくても業務ツールにノウハウを仕込めればワークすること。

COCOOのような業界特化したSaaSのカスタマーサクセスは、要するに同じ業界に特定のプロダクトを売っていくわけなので、個々の顧客対応の流れで専門知識をもって判断すべき要素は少ないはずです。

もしかしたら、背景となる専門知識があってもなくても必要な判断ができるように補助線を引いておく工夫があれば、校務や技術に関する背景知識に頼らずに、自信を持って提案できる環境は作れるのではないか? そして補助線の引かれた良い業務ツールは、メンバーの仕事を下支えすると同時に、顧客の理解と判断を支援できるものにもなるはずです。

この部分についてはまだやりたい(できていない)アイディアもあり、これから仮説検証が必要なところです。がんばろう。

今回のテーマや立場で共感できそうな方とぜひ語れたら嬉しいです。

TO BE CONTINUED.

思考過程で読んだり聞いたりしたもの

よみもの
◆『「学習する組織」入門――自分・チーム・会社が変わる 持続的成長の技術と実践』(小田 理一郎 著)
◆『問いのデザイン: 創造的対話のファシリテーション』(安斎 勇樹 著, 塩瀬 隆之 著)
◆『組織開発の探究 理論に学び、実践に活かす』(中原 淳 著, 中村 和彦 著)
◆『新版 はじめての課長の教科書』(酒井穣 著)

きくもの
チームメンバーの「覚醒」を支援する人材育成の勘所とは|CULTIBASE Radio|Management #56
#02_成果の出るCS・出ないCSの違いとは?(Customer Success Explorers)
SaaS企業を一流の道へと導く3つの必須要素(前田ヒロ)

有料メディア
CULTIBASE Lab

特にSaaS(Software as a Service)に照らした整理は前田ヒロさんのPodcastが

カスタマーサクセスに照らした整理はcommune(コミューン)さんのPodcastが

組織学習についてはCULTIBASE Radioが

大変参考になりました。神Podcastの中のひとたちに最大級の賛辞を。

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