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舞台 「空鉄砲」 観劇レビュー 2022/01/15

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【写真引用元】
柿喰う客Twitterアカウント
https://twitter.com/kaki_kuu_kyaku/status/1469826836314140677/photo/1

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【写真引用元】
柿喰う客Twitterアカウント
https://twitter.com/kaki_kuu_kyaku/status/1469826836314140677/photo/2


公演タイトル:「空鉄砲」
劇場:ザ・スズナリ
劇団・企画:柿喰う客
作・演出:中屋敷法仁
出演:玉置玲央、永島敬三、田中穂先
公演期間:1/14〜1/23(東京)
上演時間:約80分
作品キーワード:ボーイズラブ、復讐劇
個人満足度:★★★★★★☆☆☆☆


小劇場演劇だけでなく舞台「文豪ストレイドッグス」シリーズなど2.5次元舞台の脚本や演出も手掛ける、劇団柿喰う客の中屋敷法仁さんの新作公演を観劇。
柿喰う客の公演の観劇は、1年2ヶ月前の「夜盲症」以来2度目となる。

今作は柿喰う客に所属する男性キャストのみの三人芝居であり、人気ミステリー作家の網代木冬(あじろぎとう)の非業の死により、息子の弾倉介凪(たまくらかいな)が父の半生を映画化しようと無名の新人俳優である波瑠杉夏来(はるすぎなつき)を抜擢して彼に死んだ父を演じさせるという物語。
しかし、その波瑠杉夏来は、かつて網代木冬が溺愛した高球男娼の一旅御幸(ひとたびみゆき)の異母兄弟だったという設定。

弾倉介凪役を永島敬三さん、波瑠杉夏来役を田中穂先さん、そして一旅御幸役を先日結婚報道のあった玉置玲央さんが演じるという、とても濃ゆい面子での芝居ということで非常に観劇前からワクワクしていたが、実は私自身が柿喰う客の作風自体が苦手であり、ストーリーについていけなくなるような支離滅裂な展開が好きではないからなのだが、今作は過去観劇した柿喰う客の公演の中では一番楽しめた作品だったのではないかと思っている。
というのは、柿喰う客の作風自体に慣れてきたというのと、今回の脚本がストーリー展開を追いやすかったというのがあるのかもしれない。
ただ、奇抜な色彩の照明とカットインで切り替わる場面転換など柿喰う客スタイルを残しつつ、今作は過去作以上に役者の人間臭さというのか愛の詰まった作品に見えて好きだったというのもある気がする。

また、今回初めて演技を生で拝見した永島敬三さんのクールで高貴なイケメンぶり、見た目と演技に良い意味で大きなギャップを感じて心動かされた田中穂先さんの演技、そしてセクシーなガウンを身にまとって女性っぽさと逞しい男性らしさの2パターンを上手く演じ分ける玉置玲央さんの怪演ぶりが、それぞれ舞台上でバランスを保ちながら激しくぶつかり合うような様が観ていて快感だった。

ジャンルがBLものなので、もちろん客層は女性が9割以上だったのだが、男性の私でも楽しめる作品だった。多くの人におすすめしたい。

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【写真引用元】
ステージナタリー
https://natalie.mu/stage/gallery/news/461760/1743381


【鑑賞動機】

柿喰う客の作風が苦手で当劇団の直近の過去作品であった「滅多滅多(めっためた)」は観劇しなかったのだが、この作品が非常に評判が良かったのと、今回は特にキャストに惹かれて観劇することにした。
永島敬三さんはお名前はよく聞いていたのだが、今まで生で芝居を観たことがなかったのでこれを機に拝見したかったのと、何よりも今勢いに乗っている玉置玲央さんの芝居をスズナリで観られるって貴重だと思ったので観劇することにした。


【ストーリー・内容】(※ネタバレあり)

過去の柿喰う客の作品よりもストーリー展開が追えたとはいえ、途中内容についていけなかった箇所も多々あったので、私が記憶している範囲でストーリーを記載する。不足箇所は勿論、間違いとかも多少あるかもしれないがご容赦頂きたい。

弾倉介凪(永島敬三)が独白を始める。彼は人気ミステリー作家である網代木冬の一人息子であり豪邸に住んでいた。しかし、網代木冬は浴室で非業の死を遂げた。
網代木冬の遺産を引き継いだ弾倉介凪は、父の半生を映画化しようと試みる。そこで映画の網代木冬役に名乗り出て、弾倉介凪の豪邸にやってきたのは無名の新人俳優である波瑠杉夏来(田中穂先)であった。弾倉介凪は彼を網代木冬役として抜擢して映画の撮影に臨むことになる。

波瑠杉夏来には異母兄がいた。異母兄の名前は一旅御幸(玉置玲央)。彼は高級男娼であるが、過去に俳優をやっていたこともあった。
人気ミステリー作家網代木冬の作品の中でも10年間も完成から寝かされていた作品に「モミジ館の殺人」があった。網代木冬はこの作品の映画化を試みた時、女性キャストに一旅御幸を抜擢した過去があった。一旅御幸はこの「モミジ館の殺人」が大好きで図書館で時が経つのも忘れて読むことに没頭した。そうであるが故に、その作品の女性キャストに抜擢された時、一旅御幸は非常に喜んで引き受けた。
しかし、「モミジ館の殺人」の稽古を重ねていくうちに、一旅御幸は網代木冬のことを好きになっていき、お互い惹かれ合ってしまう。そのため、一旅御幸は「モミジ館の殺人」のキャストから降板し追放されることになった。

一旅御幸はそんな網代木家に復讐しようと考えていた。その絶好の機会が網代木冬の半生を描いた映画化であった。一旅御幸も波瑠杉夏来と共に弾倉介凪が製作する映画のキャストに加わることになる。
新人俳優だった波瑠杉夏来は、網代木冬になりきって芝居を繰り返していくうちに、まるで波瑠杉夏来が網代木冬になったかのようにそっくりな演技になっていき、弾倉介凪が波瑠杉夏来を網代木冬だと勘違いするくらいになって弾倉介凪に褒められる。
そして、一旅御幸も網代木冬の愛人役として波瑠杉夏来を抱きしめるシーンなど、かなり濃厚な関係を芝居を披露していくことになる。
まるで映画化しようとしている網代木冬の半生を描いた作品が、本当に網代木冬がいるような感覚にまで陥ってしまった弾倉介凪にとって、一旅御幸は自分の父親を愛した憎き存在として感情を顕にしていくことになる。

網代木冬の豪邸には南京錠のかかった金庫があった。その金庫の中にあったのは火縄銃だった。
映画のラストシーンでは、浴室で網代木冬役を演じる波瑠杉夏来と一旅御幸が火縄銃を手にして心中するというものだった。当然映画は演技なので火縄銃の中身は空、つまり空鉄砲だった。
映画のラスト、一旅御幸は空鉄砲によって網代木冬役を演じる波瑠杉夏来を撃ち抜く。それはまるで、禁断の恋をしたが故に追放された網代木冬に復讐するが如く。
映画はクライマックスを終えて完成したが、最後に一旅御幸は空鉄砲であった火縄銃に弾を入れて自らを撃って死んだ。ここで物語は終了。

愛憎の入り交じる作品でひたすら役者たちの熱量を浴びる凄まじい作品だった。こういう「熱海殺人事件」の類ような熱い芝居ってなんか好きになってしまう。今回はストーリーが飲み込めたというのと、ボーイズラブというかなり現代的なテーマを取り入れながらの芝居だったので、個人的には作品に対して親しみが生まれたのだと思う。
脚本自体も台詞を捲し立てるように演じられながら進む柿喰う客スタイルを保ちつつ、途中でストーリーについていけなくても描きたいことはしっかりと掴めて、劇的な瞬間ではしっかり心動かされる脚本として仕上がっていて素晴らしかった。
アフタートークで役者3人がトークされていたのだが、当初は今作は役者陣の年齢に合わせて落ち着いた作品として仕上げる予定だったらしいが、結局いつもの柿喰う客の熱量ある激しいスタイルになってしまったのだそう。それ聞いて少し納得したところがあって、脚本自体も下ネタは飛び出すものの、落ち着いた作品としても十分見応えのある作品として仕上げられそうな気がした。脚本自体も面白くしっかりしているし。ただ、実際蓋を開けてみたらやはりそうはならなくて、しっかりと柿喰う客の以前のスタイルを残した作品になってしまったそう。それはそれで良いと私は思った。

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【写真引用元】
ステージナタリー
https://natalie.mu/stage/gallery/news/461760/1743379


【世界観・演出】(※ネタバレあり)

今作も世界観・演出に関しては、しっかり柿喰う客スタイルを貫いていて、大道具・小道具は一切使わずに、照明と音響だけで世界観を形作って、そしてしっかり役者の演技力によって観客を惹きつけるという構造はしっかりと功を奏していた。
衣装、照明、音響、その他演出の順番で見ていくことにする。

まずは衣装から。
弾倉介凪役を演じる永島敬三さんはジャケット、波瑠杉夏来役を演じる田中穂先さんは役者らしく動きやすそうなパーカーとズボンを、一旅御幸役を演じる玉置玲央さんはガウンという三者三様の衣装なのだけれど、皆衣装の色はダークブルーで統一されていて、今作の作風らしくエレガントな印象を与えられた。
特に永島さんのスーツはよく似合っていた。永島さんのキャラクター性が高貴で紳士のようだったので、スーツを着てひとり語りをしたり火縄銃を向ける演技が非常に映えた。
そして玉置さんのガウンは本当に女性らしさをより一層エレガントにそしてセクシーに見せていたという印象。とあるワンシーンで玉置さん演じる一旅御幸が上半身だけガウンを脱ぐシーンがあったが、本当にセクシーに見えてくる。女性ファンなら堪らないんじゃなかろうか。

次に照明演出。
柿喰う客の公演らしい照明演出で、奇抜な色彩の照明を天井に一列に並べて光量強く発する感じと、ほとんどのキューがカットインで照らされるメリハリのついたもので、これぞ柿喰う客という演出を堪能できた。
照明の吊り込み位置としては、天井の他に舞台上奥側のステージ上にも横一列に置かれていて、そちらも天井に吊り込まれている照明と共にカットインでガバっと舞台上を照らしていた。
基本的には衣装の色に合わせてホワイトブルーな照明が多かった印象。ブルー仕立てのホワイトな照明に役者のダークブルーが照らされることで、より役者がエレガントな印象に感じられたのかもしれない。
印象に残ったのは、やはり終盤の浴室で空鉄砲で波瑠杉夏来を発泡するシーンでの照明。あそこは黄色く赤く照明が照らされてインパクトが強かった。あとは、紫色の照明で舞台上を照らすシーンが結構不気味で素晴らしかった。照明の奇抜さに柿喰う客らしさがあり、且つ今作の作風にあうようなエレガントっぽさがあった。

そして舞台音響。
音響も柿喰う客らしさ満載の演出。ビートを刻むようなテンポの良い曲が小さめに流れながら、役者たちは捲し立てるように台詞を速いテンポで展開していくさまはまさに爽快な柿喰う客ならではの演出。
そして今作は、火縄銃を構える効果音と発砲音が非常に効果的だった。カットインの多い柿喰う客の作風において、火縄銃の構える音と発砲音は瞬時に緊迫感を舞台上に広げるので、その効果音によってやはりカットイン的にシーンの空気感が変わって非常にマッチしていたと思う。
また南京錠を開ける音とかもカットイン的に場を引き締める役割があって良かったと記憶している。というか今回は金属音が多かったので、それによる刹那的な緊迫感が非常に柿喰う客の作風に合っていたのだと思う。

最後にその他演出について。
凄く上手いなと思った演出がいくつかあった。まず一つ目は、波瑠杉夏来が網代木冬になりきり過ぎて弾倉介凪も彼が網代木冬だと勘違いを起こしてしまうシーンがあるのだが、そうなった時に映画のワンシーンから現実世界に戻る照明、音響演出を挟んだあとに、田中穂先さんも永島敬三さんもまるで素になったかのように振る舞いながら演技をする辺りが好きだった。その時の田中さんが本当に新米の俳優さんという感じがして、客席からも笑いが起こっていたし、非常にシーンとシーンの緩急の付け方が上手くいっていて作品に没入できるように感じられた。
あとは、男同士が抱き合うシーンが何箇所かあって凄くBL(ボーイズラブ)的なものを見せつけられて感情をかき乱された感じが良かった。舞台でBLって初めてなので凄く生々しくて男である自分でもセクシーだと感じてしまう。
あとはやっぱり最後のシーンの空鉄砲を発泡する時の、あの3人が客席からみて縦に並んで演じるさまが構造として好きだった。撃たれた波瑠杉夏来が足を開脚して倒れるシーンは凄く映像として脳裏に焼き付いている。素晴らしかった。

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【写真引用元】
ステージナタリー
https://natalie.mu/stage/gallery/news/461760/1743373


【キャスト・キャラクター】(※ネタバレあり)

柿喰う客の劇団員の中でも相当濃ゆい男性3人で演技は圧巻だった。永島敬三さん、田中穂先さん、玉置玲央さんの順に見ていく。

まずは、生で初めて演技を拝見した永島敬三さん。お名前はよく存じていたが、正直お顔を良く分からずだったので、今作で初めてまじまじと演技を拝見して思った以上にクールで紳士的でイケメンな俳優だと思った。牧田哲也さんが一番高紳士なイメージだったが永島さんはそれ以上かもと思った。
そして今作の弾倉介凪役はいかにもお金持ちの息子といった感じでエレガントっぽさがプンプンで、開演一発目でもう演技の虜になってしまった。最初のシーンが弾倉介凪の独白から始まるのだが、というか弾倉介凪が火縄銃を構えるシーンから始まるのだが、もうそこから絵になるくらい映えていて素晴らしかった。
また弾倉介凪が波瑠杉夏来を網代木冬と勘違いしていることに気が付き映画のワンシーンから戻る時のシーンでは、永島さんの気さくな一面が見られて、そして客席の緊張感もほぐれて良い感じになる辺りも堪らんかった。ああいうギャップを見せられる演技って本当に魅力的に俳優は映る。

次に波瑠杉夏来役を演じた田中穂先さん。田中さんの演技はEPOCH MANの「夢ぞろぞろ」で拝見して以来2度目となり、柿喰う客での観劇は初めて。
田中さんは見かけはひょろっとしていてか弱そうに見えるのだが、演技のスイッチが入るとまるで別人のようになって迫力が凄まじい。「夢ぞろぞろ」の時も田中さんがどんな芝居をされる方なのか想像がつかなくて非常に爽やかでピュアで透明感のある演技をされて驚いたが、また柿喰う客の芝居になると全く違うのだなと実感した。
波瑠杉夏来は新人の俳優という立て付けで、最初は本当に新人らしく素直そうなピュアな演技に見られて、「夢ぞろぞろ」の時と同じ印象を受けたのだが、そこから物語が進んでいくにつれて全く異なる印象を受けた。まさに怪演という言葉が相応しいのだろう、柿喰う客の芝居だからなのかエロスとダークっぽさというものを田中さんの芝居から感じ取った。
田中さんのあの邪悪そうな表情や、玉置さん演じる一旅御幸に抱きつくシーンや、空鉄砲で一発撃ち抜かれるシーンなど、濃厚でインパクトのある演技が多くて、田中さんのビジュアルからは想像出来ないくらいの凄まじい演技が観られて大満足だった。柿喰う客ってなんでこんなに怪物になれるキャストが多いのだろうか。

そしてなんといっても一番注目したいのが、一旅御幸役を演じた玉置玲央さん。玉置さんに関しても、舞台「夜は短し歩けよ乙女」や舞台「Birdland」といった柿喰う客の舞台ではなくプロデュース公演でしか観劇したことなかったので、ホームの柿喰う客での芝居拝見は初めてとなる。
テレビドラマの出演や結婚報道もあったばかりで、赤丸急上昇中の俳優である玉置さんであるが、まさか玉置さんが女装というか女形のような芝居をやるとは想像もしていなかった。今まで観劇してきた舞台では「夜は短し歩けよ乙女」のパンツ総番長であったり、「Birdland」では絶好調のアーティストという位置づけだったので女装のイメージは全くなかった。
しかし、ガウンを身にまとってセクシーな姿で演技をしていると、なぜか男性でも心を動かされるくらいエモいものを感じる。声色も少し女性に寄せたシーンがあったと思えば、がっつり男性という逞しい一面が出てきたりとそのギャップが本当に化け物過ぎて素晴らしかった。物凄く挑戦的な演技で、ホームである柿喰う客だからこそチャレンジ出来るのかなと思ったりもした。
スズナリという小劇場で勢いに乗った名俳優の演技を生で観られたことは凄く嬉しかったし、益々のご活躍をお祈り申し上げたいという気持ちである。

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【写真引用元】
ステージナタリー
https://natalie.mu/stage/gallery/news/461760/1743377


【舞台の考察】(※ネタバレあり)

前述した通り、私はどんな作品も脚本やストーリーに注力して楽しむタイプなので、舞台・演劇に関しても一番最初に物語に注力しながら観劇していくのだが、柿喰う客の公演でそれをやるとどうしてもストーリー展開のスピード感と支離滅裂さによって置いていかれてしまって叶わず、結局肌で感じて観劇するという私がとっているいつものスタンスとは違うスタンスで観劇することになるので、あまり気持ちとして何も残らなくなってしまうことが多かった。そのため柿喰う客の作風が苦手だった。

しかし、今回の「空鉄砲」という舞台作品は、たしかにストーリー展開はスピーディで途中途中置いていかれる場面もあったのだが、脚本自体はそこまで支離滅裂ではなくて、そこには凄く愛と憎しみという柿喰う客の作風には非常に似合っているテーマを感じさせられたので、凄く心に響くものがあった。
さらにジャンルとしてボーイズラブを扱っているというのもあって、私自身はボーイズラブを好き好む訳ではないけれど、そこも凄く柿喰う客らしくて濃厚でドロドロした感じがハマっていた気がした。
自分が柿喰う客の作風に慣れたというのもあるかもしれないし、観劇のコンディションが絶好調だったのかもしれない。けれど今作は私が今まで観劇してきた柿喰う客の中では一番好きな作品だった。

今までは、観劇レビューを残している範囲でいくと劇団4ドル50セントとのコラボ公演であった「学芸会レーベル/アセリ教育」と「夜盲症」があるのだが、凄く観劇しているとジェットコースターに乗っているような感覚で、観劇中はあまりのストーリー展開の速さと支離滅裂さによって圧倒されるだけで、観劇後に凄いものを観たなという感覚はあるものの何も心に残っていないみたいな状態になっていた。そういったアトラクション的な観劇体験を良しとする方も沢山いらっしゃるだろうとは思うけど、私はそれを良しとは出来なかった。だから苦手だった。
しかし今作は、柿喰う客の今までのスタイル、つまりカットインの音響、照明、奇抜な照明のカラー使い、そして捲し立てるような速いテンポの台詞回しは健在だったのだが、脚本がそこまで支離滅裂ではなく感じたからか、ストーリーも大枠は掴むことが出来て、それによって登場人物の心情にも感情移入出来た点が大きかったのかなと思っている。
田中さん演じる波瑠杉夏来も、玉置さん演じる一旅御幸も、そして永島さん演じる弾倉介凪もどの登場人物にも共感出来たし人間性を感じられて没入出来たからだと思う。その点が、柿喰う客の過去作品の観劇とは大きく違った点である。

そしてストーリーが追えて、キャストにも共感出来たからこそ、柿喰う客の独創的な世界観や演出がより効果的に感じられて刺さった気がする。今作は人気ミステリー作家の豪邸で巻き起こる物語ということで高貴さ・エレガントさみたいな部分が、衣装のダークブルーだったりホワイト・ブルーな照明という形で表現されていてハマっていると感じたことと、ボーイズラブ的なエロティックさが濃厚さという形で照明や下ネタオンパレードな台詞にも反映されていた気がする。そしてカットイン的な柿喰う客特有の演出に火縄銃の緊迫感走る効果音が使われて、そしてその金属音がエレガントさとも交わって良い相乗効果を生み出していたんじゃないかと思えてくる。
つまり、脚本の主張が伝わってきたことによってキャストもより没入できて魅力的に感じられたし、演出にも納得のいく意味付けが自分の中でされて楽しめたということである。

私は直近の柿喰う客の公演である「滅多滅多」を観劇していないのだが、今作と比べてどちらが一般的に評判が良いのだろうか。「滅多滅多」はTwitter上のリアクションを見る感じとても評判だったと感じている。もし今作も「滅多滅多」同様、もしくはそれ以上の評判であるのならば、それは劇団としても作品の質が上がってきているということなので、次回の柿喰う客の舞台作品も観劇したいと思えた。
特に「滅多滅多」のような大人数且つ男女混合の柿喰う客公演を未だ観劇したことない(「学芸会レーベル/アセリ教育」はコラボ公演なので別)ので、次回以降の大型劇団本公演を是非観劇したいところである。

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【写真引用元】
ステージナタリー
https://natalie.mu/stage/gallery/news/461760/1743382


↓柿喰う客過去作品


↓中屋敷法仁さん演出作品


↓玉置玲央さん過去出演作品


↓田中穂先さん過去出演作品


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