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舞台 「DOORS」 観劇レビュー 2021/05/29

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【写真引用元】
DOORS特設HP
http://mo-plays.com/doors2021/

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【写真引用元】
M&Oplays公式Twitter
https://twitter.com/moplaysproduce/status/1359321198383910915/photo/1

公演タイトル:「DOORS」
企画:M&Oplaysプロデュース
劇場:世田谷パブリックシアター
脚本・演出:倉持裕
出演:奈緒、伊藤万理華、菅原永二、今野浩喜、田村たがめ、早霧せいな
公演期間:5/16〜5/30(東京)、6/3(群馬)、6/6(新潟)、6/9(富山)、6/12・13(大阪)、6/16・17(名古屋)、6/19・20(福岡)
上演時間:約120分
作品キーワード:ファンタジー、パラレルワールド、家族、舞台美術
個人満足度:★★★★★★☆☆☆☆


劇団「ペンギンプルペイルパイルズ」を主宰し、岸田國士戯曲賞も受賞経験のある倉持裕さんの作・演出作品を初観劇。

玉田企画の「今が、オールタイムベスト」で好演だった奈緒さんが演じる女子高校生の真知をヒロインとし、月刊根本宗子の「今、出来る、精一杯。」で好演だった伊藤万理華さんやキングオブコメディの今野浩喜さんなど豪華キャストを揃えての舞台。

ストーリーは、とある地方都市の若い頃は女優を目指して夢破れた母親と、不登校になって鬱ぎ込みがちな女子高生の娘が、普段開けることのない納戸の扉を開けた途端にパラレルワールドに入り込み、もう一人の別の人生を歩む自分たちに遭遇し、自分の生き方を見つめ直し互いに成長していくというもの。

ファンタジーかつミュージカル的要素もあって、誰もが笑って泣ける楽しめる作品だったと思う。
舞台美術も豪華でリビングを模したユニークな沢山の窓枠が散りばめられているパネルや、科学者の部屋のインパクトも凄くファンタジー要素が詰まっていてワクワクした。

なんといっても脚本は、パラレルワールドの世界が同時進行で描かれる難解さと、母親と娘の台詞に心動かされる感動要素が詰まった万人にウケるものだった。

多くの人にオススメしたいと思った良作。

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【写真引用元】
TOKYO HEADLINE WEB
https://www.tokyoheadline.com/553167/


【鑑賞動機】

有名な劇作家である倉持裕さんの舞台作品を観てみたかったというのが一番の決め手。
玉田企画の「今が、オールタイムベスト」で好演だった奈緒さんや、月刊根本宗子の「今、出来る、精一杯。」で好演だった伊藤万理華さんの演技を観たかったというのも決め手の一つ。


【ストーリー・内容】(※ネタバレあり)

亘理家の母(早霧せいな)は若い頃に一度は女優を目指して上京したものの、夢破れて地元の地方都市に戻り暮らしており、その娘の女子高生の真知(奈緒)は不登校になって鬱ぎ込みがちであった。
ある日の夜、酔っ払った母は隣人に喧嘩を売ってしまい真知は謝ってくるよう求めるが親子で喧嘩になってしまう。真知が呆れて部屋へ戻った時、いつもは開けることのない納戸の扉が開く音が聞こえる。
翌日、久々に登校した真知は学校で同じく不登校だが仲の悪い女子高生の理々子(伊藤万理華)に会う。二人はひょんなことから真知の家へ行くことになるのだが、そこには昨日までとは別人のような真知の母がいた。
普段より上品でお淑やかな風貌で、普段は料理をするはずがないのに肉じゃがを作っていた。
これは何か可怪しいと察した真知は、街中で一番の変わり者の科学者である大橋(今野浩喜)の元を訪ねる。大橋は、その納戸の扉の向こうに現実世界とは異なるパラレルワールドが広がっており、真知の母はそこでパラレルワールドに住むもう一人の自分と入れ替わってきたんじゃないかと説明する。
真知と理々子は早速亘理家のリビングにある、階段の下の納戸の扉を開けることによってパラレルワールドの世界へと飛び込むのだった。

納戸の扉を開けると、そこはどうやら真知と理々子の通う学校の物置に通じていた。そこで二人は妊娠中の自分たちの担任の先生である小野先生(田村たがめ)が現れ、5人目の子供がお腹の中にいると語る。真知と理々子は驚く、現実世界の小野先生はそんなに子供はいないと。さらにそこへ現実世界では警察官をやっている澤田(菅原永二)が現れ、パラレルワールドの世界では教師をしていて真知と理々子の担任の先生だった。小野先生と澤田は現実世界でもパラレルワールドでも二人は結婚しており仲が良さげであった。
どうやら小野先生と澤田先生の話によると、パラレルワールドの真知は女優を目指す学校内で初めての女子高生らしく、真知の母は女優を目指した訳ではなく公務員として地元で就職して現実世界とは違う男性と結婚していた。
現実世界に戻った真知と理々子は、現実世界にいるパラレルワールドの母に入れ替わったことを問い正す。どうやら現実世界の母が自らパラレルワールドの世界の自分と入れ替わりたいと申し出てこうなったということを聞く。

真知は再びパラレルワールドへ向かい現実世界の真知の母に会って、元の世界に戻ってくるよう説得しに向かう。パラレルワールドの世界の存在を聞きつけた現実世界の三澤もついてくる。
パラレルワールドの世界の母の職場である市役所へ向かう真知は、パラレルワールドの大橋が現実世界と違って金髪で精力的に講演をしていた。
現実世界の三澤もついてきたので、パラレルワールドの小野先生が警察官になった三澤を見てびっくりするが、無事真知は母に会うことは出来たもののパラレルワールドの世界の真知からもらったネックレスを大事そうに着けていた。
真知はパラレルワールドの世界で夜遅くまで母の帰りを待っていた。母は東京に行っていた。現実世界では母は上京してテレビ局に務める父と結婚したが、夢破れたことも影響してか離婚していた。しかし、パラレルワールドの世界では地元で結婚したため父には出会っていない。そんなパラレルワールドの世界では出会うことのなかった父は何をしているだろうと東京に足を運んでいた母だったようである。
真知は母に元の世界に戻るように説得する。しかし、パラレルワールドの世界の真知が起きてしまって見つかってしまうため、仕方なく現実世界へ戻ることになる。

暫く時は過ぎた。真知は特に何かを目指す訳でもなく大学に進学することにした。一方でパラレルワールドから来た母は、現実世界の母が今まで迷惑をかけてきた近隣の住人に対して謝罪し、関係性を修復していた。「recovery」である。
どうやら大橋の助言では、パラレルワールドへの扉は段々と現実世界とパラレルワールドとの接点を薄くし、そのうちに二度とパラレルワールドには行けなくなってしまうという。つまり、現実世界にいた母を元の世界に戻すにはタイムリミットがあるということである。
理々子にも励まされて、真知と理々子は再びパラレルワールドへ飛び込んで母を取り戻すことを決意する。

二人が納戸の扉の向こうに行くと、学校の物置ではなく別のどこかにたどり着いた。しかし、三澤・小野夫婦に見つけられたことによって車に乗せてもらえる。しかし、丁度その時小野の陣痛が始まってしまい、本当は亘理家に直行して欲しかったが病院へ向かってしまうことになる。
なんとか自力で亘理の家にたどり着いた真知は、母に現実世界へ戻ってくるよう説得する。現実世界では小学生が母が出演していたCMの曲を口ずさんでいたと。しかしパラレルワールドでは母が出演していたCMは存在しないどころか、母が女優を目指していたという過去を示すものは何も存在しないんだと。

現実世界の真知・理々子と、パラレルワールドの世界の母で策略を練る。現実世界の真知はパラレルワールドの女優になりたい真知になりすまして、現実世界で女優を目指すことにするからと現実の世界の母を現実へ連れ戻す計画を企てる。現実の母とパラレルワールドの理々子をまんまと騙して、現実の母を現実世界へ連れていき、女優になりたい真知になりすました現実世界の真知は納戸の扉に火をつけ、パラレルワールドの理々子に対して元気でね!と声をかけて現実世界へ行ってしまう。現実世界とパラレルワールドの世界の扉は燃え上がって、二度と2つの世界が行き来出来ない状態になる。
そこへまたしても真知が現れたのでパラレルワールドの理々子は驚く。そして、現実世界へ行った真知は女優を目指したい真知ではなく、現実世界の真知だったと理々子は気付かされる。そこへパラレリワールドの母が静かにやってくる。事情を説明する。
これで、皆無事に元の世界へと戻り現実世界とパラレルワールドとを結ぶ扉も無くなったのである。

暫く時間が経った。理々子が役者として舞台に立つ機会があるらしく、昔真知の母が女優を目指していた頃に使っていた台本を探していた。しかし見つからなかった。そこで最後に階段下の納戸の扉を開けることになる。あの一連の出来事があってから開けることのなかった納戸の扉。扉を開けても何も起こらなかったが、そこには大量の台本がダンボールに収められていた。そして、あのパラレルワールドと繋がる扉の破片が黒ずんだ状態で見つかった。そして母はパラレルワールドの世界にいる真知からもらったネックレスを見つめながら思いに浸るシーンで終了。

現実世界の登場人物とパラレルワールドの登場人物がそれぞれ対になって登場するが、キャストの身なり・服装等で違いがはっきりする真知、大橋、三澤、小野先生は区別が付くが、母と理々子は全く一緒なので、特に後半のシーンでは「これは現実世界なのか、それともパラレルワールドなのか」と観客を混乱させるような演出もあって頭を使った。
ただ、ストーリー性としては平凡に田舎で暮らす人生と、上京して有名になるという人生が対比構造として描かれていて、それが現実世界とパラレルワールド・母と娘という形で対比的になっていて、上手く構成された作品だと思った。
その対比構造の中に、女優として都会で頑張ろうとしたが故の傲慢さや、地道に地元で生活していた故の心の温かさみたいな人間性も感じて好きだった。
ファンタジー×ドラマって凄く素敵な作品だと感じた。

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【写真引用元】
TOKYO HEADLINE WEB
https://www.tokyoheadline.com/553167/2/


【世界観・演出】(※ネタバレあり)

ミュージカル要素を含んだファンタジーだったので、舞台美術には物凄く力が入っていた印象。特に移動式の舞台装置とスモークマシンには驚かされた。
いつもの通り、舞台装置、衣装、照明、音響、その他演出の順にみていく。

まずは一番大掛かりな完成度だった舞台装置から。基本的には亘理家のリビングのシーンが多いので、リビングのセットがデフォルトになっている。下手側には冷蔵庫や流しといった台所エリアが存在し、上手側には食卓が手前側に、その奥に階段があるが階段の下に問題の納戸の扉がある。その他のパネル全体は四角い枠のようなオブジェが散りばめられて配置されている感じで、色は全体的にクリーム色で物凄くファンタジー要素の強い舞台装置だと感じた。
そしてパネルは移動式になっていて、例えば科学者大橋のシーンになると中央のパネルが取り払われて、巨大な黒板が出現しそこには小難しい数式が沢山書かれていたのが印象的。序盤に登場した騒音が酷いマシーンの作り物も凄く作り込まれていて良かった。
また、パラレルワールドの世界における学校の物置は、中央のパネルがはけて現実世界へ通じる黄色い扉と文化祭で使う道具が沢山置かれていることによって場所が再現されていた。パラレルワールドの役所に関しては、上から様々な課の案内を示す看板を吊るすことで再現しており、そこにイケイケの金髪の大橋の講演ポスターも一緒に貼られていたのは笑った。
また、現実世界で真知がずっとこのままでいいのかと悩み続けるシーンで踏切の遮断器が天井から吊るされて降りてくる演出も印象的だった。電車が通る音と電車が通るシルエットが物凄く情景を印象深いものにしていた。
総じて舞台装置にかけるこだわりが凄く感じられて、凄くファンタジックでおしゃれな作りとなっていた。これは子供からお年寄りまでウケそうなテーマパーク的な楽しさがそこにはあった。

さらに衣装も全体的にファンタジーなのでおとぎ話チックな、地方の田舎といえど少しオシャレな現実にはあり得ないような感じの衣装っていうのが良い。例えば真知や理々子の制服はアニメかよって思うくらいカラフル。真知の制服は上半身は赤くてスカートがちょっと長くて脚が凄く細く見える。理々子の制服は全体的に黄色くてこちらはスカートが短くて、真知よりもキャピキャピしている印象。
また、三澤の警察官も全体的にベージュ色で昭和レトロなアメリカの警察官みたいな衣装だった。日本の紺色の警備服を着た警察官とは全然違う。そこがまたファンタジーらしく良かった。
現実世界の大橋の衣装も、本当におとぎ話に出てくるような科学者の格好をしていた。汚らしく、いつもマシーンを修理していそうなそんな作業服みたいな感じの衣装だった。
そして、現実世界とパラレルワールドの違いが分かるように同じキャラクターが少しだけ衣装・身なりを変えているという設定も面白い。例えば、真知は現実世界では長い髪を縛らずに伸ばしていたが、パラレルワールドでは一つ縛りにしてカチューシャをしていた。その違いがなんとなく現実世界の真知とパラレルワールドの真知の性格の違いを反映している様でもあって好きだった。

次に照明だが、個人的に印象に残ったものを記載していく。
まず、中盤のミュージカルシーンの照明は好きだった。キャスト一人一人にスポットが当てられて、本当に舞台というものを観ているという感じのスポットの当て方が王道で好きだった。
後はなんといっても、納戸の扉を開けた途端のそこだけに光が集中することによって、そこから物語の全てが始まるといった演出は好き。

そして音響、音響として一番目立った演出はやはり中盤に挿入されていたミュージカル部分。自分の母はパラレルワールドへ行ってしまい、特にやりたいことがないから大学進学する自分に自問自答する心の声をミュージカルにした演出は大変素晴らしかった。逆に言えばもっとミュージカル要素を取り入れて欲しかったなという印象。
そして、客入れ客出しのピアノの音楽も凄く物語に惹き込まれる感じがあって好きだった。心が温まるというかポカポカ落ち着く感じのするメロディだった。

その他の演出部分でいくと、まずはスモークマシン。たしかスモークマシンを使った演出は2箇所あった認識で、1箇所目は納戸の扉が開いてパラレルワールドの世界への入り口になったシーン、もう1箇所は大橋が登場する研究所のシーンである。とてもインパクトがあって効果的な演出、特に納戸の扉からスモークマシンが吹き出すシーンは凄く好きだった。
それと、踏切のシーンも物凄く印象的。先ほど記述した電車の音やシルエットが情景を凄く印象深くしているのだが、なんというか女子高生のような若者が未来について悩む時って踏切の演出が効果的だったりするのかな、凄く良いなと感じるのだけどなぜ良いかは上手く言語化出来なくて、でもそういったシーンを演劇で描く際には踏切の演出を使うことがある気がする。いずれにせよ、凄く良かった。
あとは、描かれている世界が現実世界なのかパラレルワールドなのかを暗示する演出もあって好きだった。例えば雷雨の演出、現実世界で小野先生と理々子が学校で話をしていて雷雨になるのだが、次の真知の母がいるシーンでも雷雨が続いていることで、これは現実世界なんだと観客は判断出来る。そういう細かい演出が好きだった。

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【写真引用元】
TOKYO HEADLINE WEB
https://www.tokyoheadline.com/553167/3/


【キャスト・キャラクター】(※ネタバレあり)

今作は豪華キャストが勢揃いの作品で、皆演技が素晴らしかったので特に注目したい役者をピックアップして記載する。

まずは主役の女子高校生である亘理真知を演じた奈緒さん、奈緒さんの演技は2020年3月に上演された玉田企画の「今が、オールタイムベスト」以来2度目の拝見となる。そして奈緒さん自身も「今が、オールタイムベスト」からずっと舞台の出演はなく、その次が今作の出演だったそう。
「今が、オールタイムベスト」での演技を見た感想は、本当にリアルにいそうな今どきの若者女性といった感じだったのだが、今作の演技ではまるでキャラクター設定が違って別人の演技を観ているようだった。役柄が女子高生というのもあって凄く子供っぽく見えて(良い意味で)、母に対して反抗するあたりとか悶々と母との関係に悩む感じがしっかり役としてハマっていたので素晴らしい。
終盤の母を現実世界へ連れ戻そうと訴える演技では、ボロボロと泣きながら訴える演技をされていてこの役に対する思いの強さみたいな女優魂みたいなものを感じた。
多くの人は今作の奈緒さんの演技に感銘を受けるのだと思うが、個人的には素に近い「今が、オールタイムベスト」の演技をもっと観たいと思った。やっぱ素直に日常世界の沿線上にいそうな女性に個人的に惹かれるからかもしれない。

次にもうひとりの女子高生である生島理々子役を演じた伊藤万理華さん、伊藤さんの演技は2019年12月に観劇した月刊根本宗子の「今、出来る、精一杯。」以来2度目の拝見となる。申し訳ないが「今、出来る、精一杯。」での伊藤さんの演技をあまり覚えていなくて、比較とかではなく今作に限った話で書かせて頂く。
理々子というキャラクター設定が、非常にツンツンしている反抗期の女子高校生でたしかによくいそうな感じなのだが、そこを凄くきっちりと役作りして熟している印象を受けた。
台詞一つ一つに強くアクセントがかかっていて、よくアニメとかにも登場しそうなキャラクターだったりするんだが、「なによ!」「ちょっと!」みたいなことを言うあのツンツンした感じを物凄く上手く演技として落とし込んでいた。
言葉がハキハキしているので、凄く演技に惹きつけられる、そんな印象を感じた。逆に違うキャラクターを伊藤さんが演じたらどうなるのかとか観てみたい。

亘理家の母の役を努めた早霧せいなさんも素晴らしい女優さんだった。調べてみたら元宝塚歌劇団雪組トップスターと出てきてやっぱりと思った。宝塚って感じの女優さんだった。
女子高校生役を努めた奈緒さんや伊藤万理華さんとは対照的で、非常に落ち着いた大人っぽい役作り。安定感を物凄く感じた。
凄く宝塚の癖が強い感じが否めなかったが、今回の亘理家の母としては物凄く適任だろう、個人的には万能な女優のようには感じなかったが今作でいったら素晴らしかった。

個人的に凄く持っていかれたのは、科学者大橋を演じたキングオブコメディの今野浩喜さん。演技は生で初めて観劇した。
あのキャラクターは絶対に笑いを取れる、菅原永二さんが演じた三澤がちょいちょい大橋をいじってくるあたりが本当に可笑しくって笑わせられた。あのいつもキレてる感じが好き、でもそこに愛嬌を凄く感じられるからずっと観ていられる、そんな感じの演技だった。

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【写真引用元】
TOKYO HEADLINE WEB
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【舞台の考察】(※ネタバレあり)

ここではこの作品を観劇して個人的に感じたことを書いていこうと思う。

よく自分でも、自分の歩んだ人生に対してifみたいなことを考えることはよくある。もし高校受験や大学受験で自分が通った学校へ行けてなかったら、今の会社に就職出来ていなかったら、あの友達・恋人に出会っていなかったらと。
特にこの作品を観劇して強く考えたifは、自分がもし地元に残っていたらということである。自分は今までもし地元に残っていたら上京してバリバリ働く友人たちを羨ましく思っていただろうと考えていた。しかしこの作品を観劇して、もしかしたらそうはならないかもしれないとも感じた。
地元には地元の愛と優しさがある。地域に密着してれば隣人さんも顔見知りで、ある種仲間意識をもってくれるかもしれないし、都会のスピード感のある生活にはならず心にゆとりをもった穏やかな生活をして、性格も穏やかでいられたかもしれない。そして、都会に憧れなんて抱かなかったかもしれない。

個人的には、この亘理家の母に物凄い同情心を抱いてしまった。一度は上京して女優という夢を叶えようとしたものの、夢破れた上に夫とも離婚して地元に戻ってくる。こんなはずではなかったと娘や隣人に強く当たる。凄く嫌われそうな人物像に感じられるが、個人的にはこの母を哀れに思った。
このまま閉塞していく人生を受け入れられる訳がない、だから世間に対して強く当たってしまうんじゃないかと。

だからこそ、終盤の娘の言葉が本当に染みてきた。小学生たちが母が出演したCMの曲を口ずさんでいた、でもパラレルワールドへ行ってしまったらそのCMは存在しない、女優をやっていたという痕跡は一切存在しない。だから戻ってきてと。
そう考えるとラストシーンも凄く、娘の言葉とその後の母の決断を肯定してくれる終わり方になっていて泣けてくる。決して娘の真知が女優を目指す訳ではなく理々子が舞台に立つ機会があるというだけだけど、母がかつて使っていた台本を探してそれが納戸から見つかるのである。これはパラレルワールドへ行ってしまったら起こり得ないこと。この時母は改めて、自分が現実の世界に戻ってこられてよかったと感じられた出来事だったんじゃないかと思う。なんとも心温まる終わり方。
そしてこれは観客全ての人に向けて、一度諦めた過去の経験を消し去ってはいけない、きっといつかどこかで役に立つ時が来るかもしれない、だから頑張った経験は大事にしてと優しく囁いてくれているようにも感じた。

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【写真引用元】
TOKYO HEADLINE WEB
https://www.tokyoheadline.com/553167/4/


↓奈緒さん過去出演作品


↓伊藤万理華さん過去出演作品


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