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舞台 「ずっと正月」 観劇レビュー 2022/01/29

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【写真引用元】
ダウ90000Twitterアカウント
https://twitter.com/daw90000/status/1485598259645239302/photo/1


公演タイトル:「ずっと正月」
劇場:新宿シアタートップス
劇団・企画:ダウ90000
作・演出:蓮見翔
出演:園田祥太、飯原僚也、上原佑太、道上珠妃、中島百依子、忽那文香、吉原怜那、蓮見翔
公演期間:1/26〜2/6(東京)
上演時間:約100分
作品キーワード:コメディ、コント、青春、笑える
個人満足度:★★★★★★★☆☆☆


昨年のM-1グランプリで準々決勝まで進んだ漫才としての実力もあって、且つ最近ではTBSラジオ「24時のハコ」でパーソナリティを務めたり、フジテレビ系のバラエティ番組「ネタパレ」に登場するなど目覚ましい躍進を果たしている演劇団体「ダウ90000」の第3回公演を観劇。
私自身は、ダウ90000の公演を生で観劇することはライブを含めても初めてであり、YouTubeチャンネル「いつかパンダとコントを」でコントを視聴したことがある程度だった。

カーテンコールで作・演出を手掛けた蓮見翔さんが、カーテンコール時のみ写真撮影可能であるが、終演までSNSにスクショをあげないで欲しいとの依頼があって、物語の内容自体もネタバレ厳禁的なニュアンスに聞こえたので冒頭部分では物語については触れないが、終始笑いが止まらないくらいよく出来たコント且つ演劇だった。

作風としては、ダウ90000という団体自体が20代前半のメンバーで構成され、まだ学生であるメンバーもいるということもあり、非常に大学生らしさを感じさせるものだった。
しかしそれは褒め言葉で、大学生だからこそ書ける甘酸っぱいやり取りや大学生のリアルが満載で、私が大学生だった時なんかも思い出されて非常に面白かった。

また舞台セットがしっかりと仕込まれた舞台で上演されたのだが、舞台上にあるモノを使って笑いを取りに行く構成となっている点に演劇を感じられた。
もちろんコントではあるのだが、舞台全体で一つの作品を見せている感じ、下手ではこんな展開が繰り広げられていて、上手ではこんな展開が繰り広げられているといったような、演劇的な演出を取り入れながらのコントといった感じが新鮮だった。

会話のやり取りもテンポも上手いし、一度登場したことを再登場させる時の面白さ、伏線の張り方が上手くて笑わせられた。

キャストたちも皆ダウ90000の劇団員だが個性豊かで素晴らしい。
特に女性陣が魅力的で面白くてというのがダウ90000の人気が出た最大のポイントな気がする。

コメディ、お笑い好きの方はもちろん、多くの人にオススメしたいと思える舞台作品だった。

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【写真引用元】
ステージナタリー
https://natalie.mu/stage/gallery/news/463236/1750456


【鑑賞動機】

ダウ90000の存在はM-1で準々決勝まで進出した時あたりで知り、割と演劇界隈でも話題に出される劇団であったため、メンバーが大学生が多く若くて男女半々というサークルのような集団ということもあって気になっていた。
そして満を持して第3回公演を上演するということだったので観劇することにした。
実は個人的には、YouTubeチャンネル「いつかパンダとコントを」のコントを視聴していても、凄く面白かったかといったらそうでもなく、ただ話題にされているだけなんじゃないかとそこまで期待値は高くはなかった。所詮20代前半の若い団体だろうと高を括っていた。


【ストーリー・内容】(※ネタバレあり)

以下はいつも通りがっつりネタバレを含んでストーリーを記載していくので、まだご覧になっていない方は、ここから下はお読み頂かないことをオススメする。観劇・配信視聴された方はぜひお読み頂ければと思う。
また、今作には公演パンフレットやリーフレットが存在せず、配役が劇中で聞き取れて覚えているものに留まるため不明な部分もあるがご容赦頂きたい。

夜。ショーウインドウガラスの向こうには、もう正月なんてとっくに過ぎたというのに正月飾りが未だに置かれている。女性店員(忽那文香)は、その正月飾りを少しずつ片付けている。そこへショーウインドウガラスの外からキーテナントの店長(園田祥太)がやってきて、中にいる女性店員に話しかける。しかし女性店員は聞こえていないようで振り向いてくれない。店長は立ち去る。
ガラスの外にクドウ(吉原怜那)という女子大生が現れる。彼女はガラス越しにダンスをし始めて、女性店員に気づかれ2人でガラス越しで会話を始める。
そこへ再び店長がショーウインドウガラスの中から現れ、女性店員が店長の声を聞こえていたにも関わらず無視していたことに怒る。

もう正月はとっくに過ぎたというのに、未だに正月飾りをショーウインドウに飾るのは季節外れでそろそろバレンタイン仕様にしようと店長は言う。しかし、店員であるツジ(飯原僚也)は昨年のバレンタインシーズンの終了時にバレンタイン仕様の飾りを全て処分してしまったと言う。
店長は驚き呆れ、他のシーズンのものを上手く使ってショーウインドウをバレンタイン仕様にするよう指示する。どうやらツジは、クリスマス仕様の飾りに関しては外の倉庫に箱に詰めて置いていたので、店長と2人で取りに行く。そのクリスマス仕様の飾りも危うく捨てられる所で発見出来たのだが、クリスマスツリーがへし折れていたりと散々な保存状態で、店長はツジのことを「お前ホントに人間か」と突っ込む。

クドウは誰かと連絡を取りながらショーウインドウの外で待ち合わせをしていた。そこへショーウインドウのマネキンと全く同じ格好をしている赤い上着を着た男(上原佑太)がやってくる。クドウと赤い上着を着た男は中学時代に同じ陸上部に所属していて知っており、久しぶりの再会をしたようであった。
しかし、クドウは彼がマネキンと同じ格好をしていることに気がつくと、赤い上着の男は自分がマネキンの衣装をパクった訳ではないと弁明する。赤い上着の男はチャリをいつも店の裏側に停めているため、このショーウインドウをいつも眺めることはなかったと話す。そして、この赤い上着のコーディネートは自分が初めて親ではなく自分で決めて買った衣服なのだと説明する。変わった返答をする赤い上着の男に対して、クドウは終始話が噛み合っていないようだった。
ではなぜこのショーウインドウの前を通ったのかとクドウは彼に聞くと、彼はこのショーウインドウの前にあるコンカフェに行くためだと言う。彼はコンカフェに通っているらしく「ビーチハウス(たしか)」という海の家をコンセプトにしたカフェに週4で通っており、そこのサクラという店員に惚れているのだと言う。また彼は、最近カードゲームにもハマっており、遊戯王とデュエマ(デュエルマスターズ)の会場でバイトもしているのだと言う。
一方で彼はクドウがなぜここにいるのかを尋ねると、彼女は明日の夜に本番を迎えるダンスの練習をしようと友達のサキと待ち合わせているのだと言う。

そこへショーウインドウ内から店員たちが現れ、マネキンと同じ格好をしている男がいることに気が付き大騒ぎする。そこで店員と赤い上着の男たちで色々あった後に、赤い上着を着た男もショーウインドウ内へ入ることになる。
赤いベンチコートを着た女性(道上珠妃)が、ショーウインドウの外で何やら電話をしたりとずっと立ち尽くしている。どこかの風俗のキャッチだと思った店長は、その女性に話しかけてどこか違うところへ行くように言う。しかし彼女はキャッチではなく、彼氏と待ち合わせをしていただけだと判明し、店長は謝罪する。
赤いベンチコートを着た女性は、そのベンチコートを脱ぐ。すると、中にパジャマとして来ていた緑色のトレーナーがこれまたマネキンが来ているトレーナーと全く同じだった。店員たちはまた大騒ぎする。そして色々あった後に彼女もショーウインドウの中に入ることになる。

ショーウインドウの中にあるこたつに、マネキンと服が被った者同士の赤い上着を来た男と赤いベンチコートの女性が入る。
赤い上着の男は本名を「オオタニショウヘイ」と言うことを打ち明け、自分は全く野球に興味がないのに、そして自分が名付けられた時は大谷翔平選手はまだ5歳であったはずなのに、そんな名前をしているからといって周囲は野球に詳しいと期待してくる所が嫌であることを打ち明ける。
赤いベンチコートの女性に彼女はいないのかと尋ねられる。オオタニショウヘイは、彼女はいないが「ビーチハウス」というコンカフェのサクラという店員が好きであることを告げる。また人生で告白したことがあるのは、中学時代に同じ陸上部であったクドウに対してだけでフラレてしまったと言う。
オオタニショウヘイは赤いベンチコートを来ていた女性に対して質問すると、彼女はこんな夜更けに彼氏に呼び出されたので風呂上がりであるにも関わらずパジャマのまま、このショーウインドウの前で待ち合わせていたのだと言う。しかし彼氏に連絡しても一向に連絡がつかないのだと。彼氏は星に詳しくないのに星を見ることが好きで、いつもそんなデートに付き合わされているのだと言う。
その間、彼らと同じコーディネートをしていたマネキンの方は服を脱がされ裸にされていた。

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【写真引用元】
ステージナタリー
https://natalie.mu/stage/gallery/news/463236/1750450


そこへクドウがやってくる。クドウはオオタニとベンチコートの女性がこたつで2人でいることを追及する。
さらにそこへ、ベンチコートの女性の彼氏(蓮見翔)がやってくる。彼は彼女に電話した後に寝てしまったため遅れたのだと言う。ベンチコートの女性はすっかり呆れてしまって星を見に行きたくないと言う。しかし彼氏は行こうというので彼女を連れて去っていく。

ショーウインドウの外側のクドウと、中のオオタニの2人きりになる。クドウは「ビーチハウス」のサクラという店員のことについてオオタニに尋ねる。オオタニは店員としてのサクラではなくプライベートとしてのサクラが好きなのだと言い張る。クドウはでもコンカフェの店員はあくまでも店員だからプライベートじゃないと主張するが、そうではないことをオオタニはショーウインドウのガラスに絵を描きながら説明していく。
オオタニは大学と家を描き、その中間地点に「ビーチハウス」を描いてそこにいるサクラがプライベートのサクラであることを力説し、それを天から見守っているのが自分であることを描いて説明した。
そこへサキ(中島百依子)がやってくる。オオタニは急いでこたつの中に隠れる。その様子を見て状況を察したクドウだったが、クドウとサキは2人で会話する。サキはダンスの稽古場が確保出来なくて予約できるスタジオを探していたそう。もう少し探してみると言って再びいなくなる。
オオタニはこたつから出てくる。クドウが察した通り、オオタニが言っていたサクラの正体はクドウの大学の同じダンスサークルのサキであった。そもそもサクラのプライベートが好きとか言ってたけど、本名違うじゃんというツッコミや、この描いた大学に存在していた友達って私じゃんというクドウのツッコミを食らうオオタニ。

再びサキが、赤いベンチコートの女性とその彼氏と一緒にやってくる。オオタニは再びこたつに隠れる。サキは赤いベンチコートの彼氏と同じサークルらしく、アウトドアが趣味なのに車の免許を持っていない先輩のことを悪く言っている。
そこへショーウインドウ内に店員たちがやってきて、こたつの中にいるオオタニの存在を明かされてしまったことによって、オオタニとサキはばったり遭遇してしまう。そしてサキがオオタニのことを「ダイスケ」と呼んだことによって、オオタニ自身も「ビーチハウス」で偽名を使っていたことが暴露される。オオタニは色々想定外のことになっていてキレ出す。
その時ショーウインドウの飾り付けは着々と進んでいて、ヒルクライムの「春夏秋冬」のようにシーズンごちゃまぜになったセットが用意されていて、その横には男女のマネキンが立っていて、男性が女性に見えないようにプレゼントボックスを後ろで持っている構図を再現していた。

サキとクドウの2人になった時に、サキは兄弟とよく遊戯王やデュエマのようなカードゲームをやろうと誘われ一緒にやるのだが、全然ルールが分からないという悩みをクドウにする。
そしてそのことを、クドウとオオタニが2人になった時にクドウがオオタニに伝える。

そして、ショーウインドウの外にはサキが、ショーウインドウの中にはオオタニという2人きりのシチュエーションになる。オオタニはこのショーウインドウガラスが防音壁のように声が聞こえないと仮定して語りだす。
そしてオオタニは自分のサキへの気持ちと、カードゲームを一緒にやろうと誘った。サキはオオタニの誘いを快く引き受けた。そしてサキはその場を立ち去る。
店長がオオタニと同じ赤い上着を着てやってくる。この上着良いよなと語り合った後、オオタニはバッグにしまってあったプレゼントを処分するように店長に頼む。店長はゴミ袋を持っていたので、そのプレゼントをごみ袋に入れて立ち去る。暗転して物語は終了。

主人公は強いて言えばオオタニかもしれないが、序盤はショーウインドウの飾り付けをする店員たちの会話劇だったので、群像劇という方が近いのかもしれない。誰が主役ということもなく全員がカラーを出して一つの作品になっている点が、ダウ90000らしくて素晴らしかった。
終盤以外はコメディとして進んでいくのだが、終盤はサキとオオタニのロマンチックなクライマックスとなっていて、コントではなく一つのストレートプレイの劇として楽しむことが出来た。ここにコントではなくて演劇性も感じられたのかもしれない。
あとはダウ90000という演劇団体が、大学生主体だからこそ大学生のリアルが詰まっていて、それをコメディとして作品に載せられている点が素晴らしい。アウトドアが趣味の癖に自動車の免許持っていない先輩とかきっと日常生活の中にモデルがいるんだろうなとか思ってしまう。
そしてまた甘い青春っぽさがあるのも良い。男女が半々くらいいるので、大学生らしい青春恋愛を描けるのもこの団体の強みだと思う。その甘酸っぱさが良かった。オオタニが告白する勇気がなかなか出ないだけなのに、絵を描いて自分とサクラとの関係性を説明してしまうあたりや、オオタニとクドウが2人で長時間かけて東京に電車で帰った時にずっとネプリーグの話しかしてなかったとか面白かったし、とても青春だった。自分も学生時代に戻りたくなった。

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【写真引用元】
ステージナタリー
https://natalie.mu/stage/gallery/news/463236/1750453


【世界観・演出】(※ネタバレあり)

普段YouTubeチャンネルのコントしかダウ90000の作品を観たことがなかった私にとって、今作は思った以上に演劇要素が強くて驚いた。そしてそれが素晴らしかった。
そんなコント×演劇の点を交えながら、舞台装置、照明、音響、その他演出について見ていく。

まずは舞台装置から。
舞台装置は至ってシンプルで、ステージ後方にステージいっぱいにショーウインドウがあって、ショーウインドウの手前とショーウインドウの中という2つのステージが用意されている形である。当然、ショーウインドウなので透明のガラス(実際にはガラスの素材で出来ている訳ではないと思うが)が一面に貼られている。
ショーウインドウの中には、飾り付けとなっている様々な道具が置かれている。マネキンや門松、こたつ、鏡餅あたりは正月用の飾りだが、途中で店員たちがどこからか他の季節の飾りも出してくるので、折れ曲がったクリスマスツリーやビニールを膨らませて出来たヤシの木、自転車、大量のチョコレートの箱などなど。
また、ショーウインドウの背後の白い壁には、最初は「SALE」と書かれた正月のセールを表す壁掛けが2つあるのだが、それを裏返すと「ずっと」「正月」になっているのも印象に残った。

次に照明だが、基本的に劇中で暗転するのは開演時と終演時だけなので、あまり照明変化はなかった。ただ、ショーウインドウ手前の夜を表すブルーな感じの照明は好きだったし、ショーウインドウ内の白色の光量の強いいかにもショーウインドウって感じの照明も良かった。
あとは終盤のロマンチックになるシーンで照明演出が切り替わるのは好き。あそこだけこの劇の中で異質というかコメディではなくなるので、そこでしんみりする感じの照明効果に切り替わっていたのは好きだった。

舞台音響に関しては、客入れと客出し時のオシャレで明るいJ-POPが流れていたのは好きだった。なぜか選曲からは年末感を感じたのは私だけであろうか。

そしてその他演出については書きたい項目が沢山あるので、一つずつ見ていく。
コメディは何で笑わせるかという観点があって、言葉で笑わせる、身体を使って笑わせる、道具を使って笑わせるという3つに要素として分けられると思うが、今作は身体を使って笑わせるというのはほとんどなくて、言葉で笑わせる、道具を使って笑わせるの2つが圧倒的に多かった印象。

まず、言葉で笑わせるという点においては、会話のテンポとかタイミングとかも非常に上手かったのだが、一番良いと感じていたのは前出現した情報を再度出現させることで笑いにつなげるのが上手いと感じたこと。例えば、マネキンのコーディネートに対して「オフハウスの方ですか?」と聞いてしまうという台詞があって、その後のシーンで同じ格好をした人間が登場して「オフハウスの方ですか?」と伏線が張られていたかのようにネタを繋げて笑いを取るあたりが上手かった。オフハウスのくだりだけでなく、「星を見るのが好き」のくだりや、「ビーチハウスを週4」というのが後に週5だったことにバレる(というか無意識でもう週に1回)ことや、サキもオオタニも偽名を使っていたくだりとか、ウニのたとえのくだりとか、そういう伏線を回収することによって笑いを取る感じが素晴らしかった。
あと言葉で笑わせるという観点では、大学生のリアルな日常生活を想起させるような小ネタが沢山仕込まれている点が素晴らしかった。「ドンキで服を買うのは友達がゲロを吐いた時だけ」とか、「アウトドアが趣味なのに自動車の免許持ってない先輩」もそうかなと思う。脚本を描いている蓮見さんが最近まで学生をしていたから学生のリアルが伝わってきて好きだった。

道具を使って笑わせるという点では、よくここまでショーウインドウとそこに飾られているモノだけで笑いを取れるなと感心するところ。「イロモネア」のモノボケ感を凄く感じた。
ショーウインドウのガラス越しで、これはガラスを挟んでしまえば聞こえない設定なのかなと思いきや、余裕で聞こえるというズッコケから始まるネタや、なんといっても春夏秋冬の飾り物が一度にショーウインドウに置かれる感じも好きだった。そこでヒルクライムが出てくるのも好き。
ショーウインドウに絵を描く演出も素晴らしかった。文字に起こすことで視覚的に笑いを誘うことになるので、これはズルいと思った。「父ハハ」とかカボチャのシールとか魔法学校みたいな大学を意味するシールとか、コウモリとかみんな面白かった。
そして地味に面白かったのが、オオタニと赤いベンチコートの女性が上手のこたつで2人で会話している間に、下手の2人と同じ服装をしたマネキンが店員たちによって素っ裸にされる演出がシュールだけど感情を凄くかき乱された。このシチュエーションを見させられると、単純にこの2人は惹かれ合って恋に落ちるのかななんて思ってしまう。そしてセックスを想起させてしまう。非常にエモくてでもシュールなネタで面白かった。

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【写真引用元】
ステージナタリー
https://natalie.mu/stage/gallery/news/463236/1750448


【キャスト・キャラクター】(※ネタバレあり)

ダウ90000の劇団員は、皆個性豊かで誰かが抜きん出ている訳ではなくてそれぞれに色があってチームとして一つになっている辺りが非常に魅力的に感じる。そして男女半々の割合というのも良い。
8人全員紹介したい所であるが、長くなってしまうので私が特筆したい方に絞って書かせていただく。

まずは、今作の主人公っぽいポジションにいたオオタニショウヘイ役の上原佑太さん。
まずキャラクター設定として、色々と運が悪くてそれが非常に面白い。たまたま自分で買った服がショーウインドウのマネキンと一緒だったり、「ビーチハウス」のサクラとばったり遭遇してしまったり、野球詳しくないのに「オオタニショウヘイ」という名前だったり、そういう不運が積み重なって面白いというキャラクターだった。
でも中身も童貞というかピュアな部分があるからキャラとして凄く好きになれる。サクラになかなか気持ちを伝えられなかったり、クドウと2人きりでずっと「ネプリーグ」の話をしてしまったり、そういうエピソードが好きだった。

今作で最も素晴らしいと感じたキャストが、クドウ役を演じた吉原怜那さん。
ものすごくその辺にいそうなくらいリアルでサバサバした女子大生だった。オオタニとは中学時代の頃から付き合いのある仲なので、彼に対して遠慮なくズバズバと物申していく辺りが凄く好きだった。
一つ思ったのが、このクドウは今でもオオタニに恋心があるのだろうか。中学時代の時は、陸上の大会会場からの帰りに長い電車の時間で告白をしてこなかったことを未だに言ってきていたが、今はオオタニはサキのことが好きで、それを知った時にどう思ったのかなと考えるのは面白い。
結果的にクドウは、サキとオオタニが結ばれるように仲介する形を取っていたが、本心では複雑だったのではないかと。自分の友達と本当は自分が好きな男性を縁結びする。クドウは本当は好きであるオオタニが幸せになるのであれば、サキと結ばれるのが一番良いと思ってカードゲームの接点を取り計らったのかもしれない。

個人的にツボだったのが、女性店員を演じた忽那文香さん。
仕事が出来なそうで、いつもボケたことばかりして店長を怒らせている存在が愛おしい。体型やビジュアルも相まって少し山田花子さんぽさがある。
鏡餅を抱えながら、私何を取りに行ったのか忘れてしまったとウロウロする辺りとか好きだった。ヒルクライムのようにサングラスをかけたり、サンタの格好をしてサングラスかけて、取り外したサングラスを襟元にかけるギャップとかも好きだった。

あとは、キーテナントの店長役を演じた園田祥太さんの、序盤は店長らしく厳しい印象を受けたが、途中で突っ見どころの多い店長だとなっていて株がどんどん下がっていく感じもコメディだった。そして、おそろいの服を最後着ていたようにオオタニと通じる部分が結構ある気がした。

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【写真引用元】
ステージナタリー
https://natalie.mu/stage/gallery/news/463236/1750451


【舞台の考察】(※ネタバレあり)

冒頭でも書いた通り、正直ダウ90000は結成も間もなく若手であるため、男女8人の異色の演劇集団ということで世間でもてはやされているだけだと高を括っていた。
しかし、今作を観劇してみてその見方は一変した。長年続けているコメディ劇団に匹敵するくらい、いやそれ以上の実力のある素晴らしい演劇団体であった。

ダウ90000の魅力について整理してみる。
まずは、8人の劇団員たちの会話のテンポとタイミングが素晴らしいことである。息がぴったりと合っているからこそ面白いし笑える。YouTubeチャンネル「いつかパンダとコントを」で配信されているコント「顔合わせ」や「まちがいさがし」「AED」では、8人が代わる代わる発言することによって会話が思いもよらぬ方向へ進み笑いを取るといった感じで、それがダウ90000の王道スタイルなのかなと思っていた。
しかし、今作を観ているとそうではなくなっていて、複数人の会話によって笑いが生まれるというよりも、一人の発言がネタとしての要素を持っているように感じられて、少しイメージと違った。

また、何度も言っているが今作はコントなのだが演劇の要素も強かった。演劇要素の強さで言えば、劇団かもめんたるの作風もそうなのだが、かもめんたるは演劇要素が強くてコントという感じは弱いのだが、ダウ90000はコントと演劇が半々と言って良いくらい均等に合わさっていて、そこにさらに大学生らしさと青春が詰まっている感じが好きだった。大学生らしさ、青春は劇団スポーツやゴジゲンの作風にも通じる箇所があるかもしれない。
それと、これは今作に限った話なのかもしれないが、「イロモネア」のモノボケ的な側面が非常に強くて、視覚的に色々と笑わされることが多かった。これは少し違うけれどヨーロッパ企画がその類は上手いのでそちらに通じる部分もあるかもしれない。

つまりダウ90000の今作の位置づけとしては、劇団かもめんたるのようなドラマ性と、劇団スポーツ・ゴジゲンのような学生っぽさや青春と、ヨーロッパ企画のような視覚的な笑い要素を含んだコント性の強いコメディ演劇という感じだろうか。
ただコメディでも、今回のダウ90000のような作風は初めて観たので、決して他の団体と重なる作風だとは思っていなくて、オリジナリティのあるものだと思っている。

しかし、まだこのダウ90000には伸びしろがあると思っている。これはあくまで私の感想であるが、まだ若干無駄な間や歯切れの悪い箇所がたまにあったかなと思っていて、そこをさらにブラッシュアップしていけばより質の高いコント×演劇を実現出来るのではないかと思っている。
勢いに乗るダウ90000なので、これからどんどん知名度をあげていってお笑い業界と演劇業界を盛り上げていって欲しい。応援している。

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【写真引用元】
ステージナタリー
https://natalie.mu/stage/gallery/news/463236/1750455






↓劇団かもめんたる過去作品


↓劇団スポーツ過去作品


↓ゴジゲン過去作品


↓ヨーロッパ企画過去作品


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