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卒業したあなたたちへの手紙

「現場を知らない」

敵意や悪意のあるなしに関わらず、学校コンサルをする中で、上記の言葉を学校教員から何度も言われてきた。

教育改革の本丸とされてきた高校改革、トリガーとしての高大接続改革、義務教育課程における学習指導要領の改訂など、2020にむけて動いてきた5年間。

教員を経験したことがないだけで、シャッターを閉められてしまうことは双方にとってあまりにもったいない。
今後のキャリアとして、「先生してたんですよ」と言えた方がよいだろう。

そんな思いもあり、1年間(長くても2年間)だけ教員をやることにした。
もちろん、それだけではない。学校に対する思いや子供に伝えたいこと、実現したい社会があるので、公教育に携わってきたし今後も関わっていくつもりだ。
また別の機会にその思いは記しておきたい。

こうして"学校現場"に入った私の1年目は、5年生の担任としてスタートした。

★★★

福岡の小学校で育ち、関西の学級崩壊クラスの補助をし、大阪の大空小学校で学ばせてもらった。これが私の小学校に対するイメージ形成の大半を占める。

そんな中で出会った初めての教え子たちに驚かされることになる。
「なぜこんなに一生懸命がんばれるのか。こんなに楽しく学校での1日をすごせるのか。」

PA(プロジェクト・アドベンチャー)、ライティングワークショップ、クラス会議、教室リフォーム、子供就活、キャリア教育、映像学習、自主学習、サドベリー教育…
1年と決めて短距離走のつもりで全てをぶつけた実践は、その何倍にもなって返ってきた。

翌年の卒業を見届けたい。

当初から視野に入れていた2年目を過ごし、この子たちと卒業しよう。
そう考えた私は2年目の教員生活を過ごす意思決定をする。

人生、そう思い通りにはいかない。
与えられた学年は6年生ではなく、4年生。もちろん近くで子供達の成長を見届けることはできるが少し離れてしまう。

しかし、子供たちはいつだって想像を超えてくる。
毎日のように誰かが4年生の教室にきて、その日の出来事や悩みを喋っていた。勉強に困っている4年生に教えてくれたり、ソーラン節をみんなで教えてくれたりもした。
4年生の教室を異学年学び合いの場として6年生が活用していた。

担任の先生にも気をつかいながら、自主学習ノートを6年生用とこちらに見せる用にわけている子もいた。
テスト結果や通知表を嬉しそうに自慢しにくる子もいた。

いきなり、こんな提案書が渡されたこともあった。
そして実際、卒業数日前には「集まろう会」が開催された。

私は大村はまという教育者が好きだった。
他の偉い先生方もよく言われることだが「先生は渡し舟だから、翌年には忘れられるように」という内容を心から信じていた。

しかし、子供たちから受け取ったメッセージは全く違うものだった。
卒業文集に、児童たちが書いていたこと。「あの1年間があるから、挫けずにがんばれる」「あの一言のメッセージで、6年間怒られ続けてきた自信のなさから解放された」
そして一番多く渡されたメッセージ「信じてくれてありがとう」

卒業式の時は泣いて泣いて、何も言えなかった。
その後に渡された手紙や卒業文集のメッセージにも返答できていない。
ここに、返事を残して、卒業ということにしようと思う。

★★★

【元5年1組のみなさんへ】
お手紙をたくさんもらったけど、お返事を渡せていないのでここに残しておきます。

改めて、ご卒業おめでとうございます。
「今年は何年生の担任だっけ?」と思ってしまうほど、毎日のように4年生の教室に6年生がいましたね。おかげで、4年生たちも大きく成長したように思います。
そして、今年も元気な顔を見られたり、頑張っている話を聴けたり、自学ノートやテスト、なぜか通知表まで見せてもらいながら、毎日みんなの成長も感じていました。

5年生の時の教科書にそった提案書の作成から、時間調整や準備を含めて、さすがとしか言いようがない「元5-1で集まろう会」。(骨折している人もいましたが)全員参加でき、とても楽しかったです。
そして、担任でもないのにたくさん作ってくれたありがとうの手紙やメッセージ(そしてリトルグリーンメンのぬいぐるみ)。思いのこもった卒業文集。みなさんからの「ありがとう」をしっかり受け取りました。
でも、みんなが成長したのは、周りの支えはもちろん、みんなが頑張ったからという理由が大きいと思っています。頑張った自分に「ありがとう」と言ってあげてください。

先生からもありがとうがたくさんあります。
もちろん、5年1組での毎日は笑顔の溢れる、幸せな、素敵な時間でした。ありがとう。
そして、それ以上に、みんなの力に驚かされ、自分の人生が変わった1年間でした。

先生は仕事をする時、2つのことを大切に考えています。
1つ目は自分が社会の中で輝き、笑顔で自分の人生を生きていられること。2つ目は、誰かのためになり、社会をよりよくしていけること。
みんなとの1年間が終わった時、こんなに頑張れるみんなとなら、社会をさらによくしていけると信じることができました。
だからこそ、はじめは1年か2年で離れようと思っていた「教師」という職業を、本当に素敵な職業だと思えることができました。ありがとう。

みなさんもいよいよ、中学生です。そして、その先も人生は続いていきます。
これから、たくさんの人と出会い、たくさんの経験をすることでしょう。先生の大切なお友達は、人との出会いと経験の2つのかけ算が人生をドラマチックにすると言っていました。本当にそう思います。
もしかしたら、悩むことや上手くいかないことも出てくるかもしれません。でも、みなさんなら大丈夫。自分を信じて、みんなを信じている先生を信じてください。

いつも、いつまでも、どんなときもみなさんの味方です。嬉しいとき、困ったとき、いつでも頼ってください。応援しています。

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