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No.30 『プリマハム』 フィギュアのテーマパーク「SMALL WORLD TOKYO」との意外な関係

家庭の冷蔵庫を開ければ、そこには必ずウィンナがある。みなさんの定番商品はなんだろうか。わたしは日本ハムの『シャウエッセン』。これしか食べない。食べたことがない。こだわりを見せるような口ぶりだが、実は『シャウエッセン』のシェアがダントツのトップなので、なんのことはない、単なる多数派というだけの話である。

もとより興奮するほどの変化はウィンナ業界にない。少なくとも『シャウエッセン』の首座が奪われることはないだろう。それでも、ときどきの販売促進策の巧拙が業界シェアにさざ波を起こすことはあるようだ。プリマハムの『香薫(こうくん)』は、伊藤ハムの『アルトバイエルン』と二位の座を争っているが、ここにきて『シャウエッセン』に次ぐ地位を確立しつつあるのかもしれない。

『香薫』の販売数量はプラスの基調が続いている。前年に対する伸び率は2018年3月期が+29%、19年3月期が+14%、そして直近の20年3月期上期が+16%。意外にも高い伸びを見せている。市場平均を上回るペースと言えそうだ。メーカー間で激しい安値合戦が展開されているようなので、金額ベースの増加幅はかなり縮小するのだろうが、それでもロースハムやベーコンなど他のコンシューマ商品に比べても堅調な推移と言っていい。

発売開始から15年以上が経つにもかかわらず、販売数量が好調を持続している背景には、テレビCMやキャンペーンの積極的な展開とその奏功があるようだ。先日開かれたIR説明会で、人柄の良さそうな千葉尚登(ちば なおと)社長が力説していた。「土屋太鳳さんをイメージキャラクターに起用したCMが好評だ。また、売り場に彼女のポスターが貼られていると、パッと明るい雰囲気になる」。今年60歳の千葉社長にとって、土屋太鳳は娘のような存在なのかもしれない。とにかくベタ褒めであった。

キャンペーンにも力を入れている。みなさんは『SMALL WORLDS TOKYO』を知っているだろうか。世界最大級の屋内型ミニチュア・テーマパークが2020年春、有明にオープンするらしい。総面積8,000平米の空間には、『関西空港エリア』、『スペースセンターエリア』、『美少女セーラームーンエリア』、『エヴァンゲリオン 第3新東京市エリア』、『世界の街エリア』など、合計7つのエリアが1/80スケールで展示されるという。これだけでは、東武ワールドスクエアと大差ないと思う人もいるだろう。新味があるとすれば、3Dプリンタで自分のフィギュアを作り、テーマパークの世界に没入できることである。自分大好きな人には魅力的な企画かもしれない。

話は長くなったが、プリマハムは『SMALL WORLDS TOKYO』のスポンサーとなっている。2020年1月10日までの期間、『自分フィギュア付き年間パスポート』が抽選で当たるキャンペーンを実施中だ。これは『香薫』に限らず、プリマハムの全商品が対象になるらしい。ハムソー(ハム・ソーセージ)を食べて家族で『コト消費』するのも良いだろう。

閑話休題。2020年3月期の業績見通しは売上高4,377億円(前期比+6%)、営業利益141億円(同+7%、営業利益率3.2%)。中期経営計画の初年度として期初計画を達成したい考えである。上期の実績を踏まえると、売上高の達成には努力を要するが、営業利益に関しては射程圏内ではないかと感じる。生産性の改善に対する取り組みは、日本ハムや伊藤ハムなど同業他社に比べても優れている印象だ。実際、営業利益率は最も高い。ただし、中計がローリングを前提としているのは良くない。連続性が失われることをアナリストはなにより嫌うからだ。

プリマハム固有の関心事としては、伊藤忠商事との関係があるだろうか。持分法適用会社であるプリマハムへの出資比率を、伊藤忠商事が8月に4割超へ引き上げた。そもそもプリマハムが伊藤忠商事のグループ会社となったのは、BSE(牛海綿状脳症)の影響で業績が悪化した2003年のことらしい。それ以降、両社は原材料の調達や製品の販売で協力関係にある。歴代の社長も伊藤忠商事の出身だ。同社との関係について千葉社長は、「出資比率の引き上げ後も特に変化ない」とコメントしていた。とはいえ、普通に考えればさらに踏み込んだ協業を将来的に想定しているのではないかと思う。

前回の江崎グリコに続いて、プリマハムでもサラミなどのお土産を用意いただいた。しかも、アンケートに答えることもなく。ありがたく、そして美味しく頂くことにする。


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