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No.40 『村田製作所』 良い意味でギャップがある

人物の魅力を表す言葉のひとつに「ギャップ」がある。相対立するふたつのイメージがひとりの人間の中で共存し、かつその落差が大きければ大きいほど一般的にはモテやすい。「遊んでいるように見えて実際には真面目なのよねえ」。遊んでいるだけでは最低だし、真面目なだけではつまらない。遠山の金さんにしても、シティーハンターの冴羽獠にしても、遊びと真面目がバランスしているからこそ愛される。

かつて電子部品の御三家といえば、村田製作所、京セラ、TDKであったが、この20年で各社の収益力に大きな差がついた。2020年3月期の営業利益の見通しを比べても、村田製作所が2,300億円に対して、京セラが1,400億円、TDKが1,200億円。電子部品業界で考えても、通期の営業利益が2,000億円を超えるのは村田製作所くらいではないか。

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同じセラミックの技術を持つ3社の中で村田製作所だけがなぜ抜きん出ることができたのか。日経新聞のインタビューに大手部品企業の社長が村田製作所の強みを過去に答えていた。「村田さんは部品に集中し続けた」。確かにそうなのだろう。競合他社による多角化をガン無視し、ひたすらセラミックスの可能性を究めることに精進してきた。もちろんバブル時代に土地投資で大怪我する愚も犯していない。結果として、村田製作所の部品はテクノロジーの進化に必要不可欠な存在となり、部品メーカーでありながらセットメーカーに対して価格主導権を握れる立場を築くことができたのだろう。

スープの味にこだわる真面目なラーメン店主のような風情を持つかと思えば、「恋」をテーマにしたCMを村田製作所はいきなり作ったりする。「恋のドキドキだって、いつか、電気をおこせるだろう」。実に遊びの心がある。真面目な村田製作所が予言するのだから必ず電気をおこせるに違いない。村田製作所が強いのは部品に集中し続けたこともあるが、真面目と遊びが同居するしなやかな企業風土にも理由があるように思う。遊びを一歩間違えると「ALSOK」や「TEIJIN」のCMのような勘違いにつながりかねないが、センスのいい村田製作所の場合には、むしろTDKや京セラにはない器の大きさを感じさせる効果がある。


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