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No.116 『オリンパス』 そして「カラダ」だけになった

オリンパスのキーフレーズといえば、「ココロとカラダ、にんげんのぜんぶ」がすぐに思い浮かびます。内視鏡や顕微鏡が人間の身体を健康にするための事業。そして、感動や体験を映像に残すことで心を元気にするのがカメラ事業でした。

このキーフレーズによるテレビコマーシャルが流れ始めたのは2007年。CMのイメージキャラクターに起用されたのが俳優の真田広之でした。「たそがれ清兵衛」の好演で最優秀主演男優賞を受賞し、海外からも高く評価されはじめた絶頂期であったのではないかと思います。

真田広之の俳優人生とデジカメの生涯を結びつけて考えるのはあまりに無理筋かもしれません。ただ、オリンパスのカメラ事業にとっても2007年がまさに最も輝いていた時期でありました。当時のカメラ事業の営業利益は330億円。全社業績の過去最高益に大きく貢献していました。しかし、太陽が赤々と燃える時間はほんの一瞬。たそがれが足早に訪れ、ついに陽がまたのぼることはありませんでした。2000年から本格的に始まったデジカメ事業の営業損益は累計で380億円の赤字。2000年代の10年間が620億円の黒字、そして2010年代の10年間が1,000億円の赤字という生涯でした。

限界的なプレーヤーが生き抜くことの難しさを改めて感じます。特にデジカメ事業の難易度は高かった。製品サイクルが短く、価格競争も激しい。そして、一眼レフデジカメを強力な武器にキヤノンとニコンが絶対的強者として立ちはだかる。さらには、スマートフォンを必殺技とするアップルが強烈な異種格闘技戦を仕掛けてきたのですから、ミラーレスの「PEN」シリーズがちょっとヒットしたくらいではオリンパスに全く勝ち目はありません。

オリンパスのカメラ事業がその生涯を終えるだけでなく、そもそもデジタルカメラ市場自体が終焉を迎えつつあります。2019年における世界の出荷台数は1,500万台。ピークであった2008年の1億2,000万台に対して1/10の水準まで落ち込んでいます。スマートフォンの市場規模16億台と比べて1/100。コロナのマイナス影響も加わって、足元の出荷台数は5〜6割の減少が続いています。まさに「オワコン」なのでしょう。

同じような境遇にある企業にとって、デジカメ事業からのオリンパスの撤退は他人事ではないように思います。たとえば、このnoteでも何度か取り上げているリコーの目にはどのように映っているのでしょう。その他セグメントの中にカメラ事業の損益を隠し込んでいるだけに、見て見ぬふりでやり過ごすつもりなのでしょうか。

それにしても「カラダ」だけになったオリンパス。新たな船出を象徴するキーフレーズが注目されますね。

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