置いてきぼり。


隣の駅まで電車に乗れば3分。

歩くと45分。

私はのんびり歩くから、後ろから歩いてきた人に抜かされたり、自転車なんてあっという間に後ろ姿が小さくなる。

線路脇の歩道を歩くので、電車には何本も抜かされて。

私よりも遅く家を出た人も電車に乗ってとっくに次の駅に着いているんだろうな…と思いながら、

歩き続ける。



歩いているから見える景色があって、
私はそれを見るのが好きなのですが、

ぐんぐん伸びていく道草や、ひらひら落ちてきた葉っぱ。

たんぽぽの綿毛が私の前を横切り、

名前の知らない小さな鳥がちょこまかちょこまか行ったり来たりして笑える。


そして、また後ろから来た人に抜かされるんだけど、

風が気持ち好いからもう少しゆっくり歩いてやろうかとさえ思う。


勝手に急かされて、比べられて、競いたくないのにあおられて。

めんどくさいなと思っていたら強制的に止められた数か月。

私はとても心地が好かった。

今までも自分のペースでやれていたと思っていたけれど、

気が付かないうちに流されていた事もあったんだなと見えてきたものもあった。

だから今、さあ、またスタートだ!と言われても、ちょっと困る。


非日常故に鼓舞されていた気持ちが置いてきぼりになりそう。


私はもっともっとゆっくり歩きたくなってしまったので、

また電車に乗り始める人や、自転車で風の如く過ぎ去る人たちには到底追い付かず。

置いてきぼりになりそうなこの気持ちを、
今は大切にしたいなと思う。

何だかそこに、私の新しい生き方が隠されているような気がする。


ヘッダーの写真はもふもふのもふうさんの作品を使わせて頂きました。

ありがとうございます。






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