幸せそうに、みえるだけ

よく笑う子がいた。

いつも楽しそうで、元気で
勉強もできて、好きな人とも順調そうだと言っていた。彼氏ではないみたいだったけど。

周りが困っていると同じように困った顔で話を聞いて、友達が幸せそうだと同じように幸せそうな顔をして喜ぶ。

占いに書いてあった。
運気を良くするためにはそういうことをしたら
いいって。

だからあの子はいつも運が良くて
幸せそうなんだな、と思った。

10年後。
私たちはだいぶ歳をとった。

もう若くないのは誰が見てもわかる。

会社でいうと中堅ポジション。

久しぶりにみんなで集まろうってなったので
懐かしい飲み屋にいった。
せっかくだしと思ってなんでもやってしまう
せっかく病はやっかいだ。

それでもなんでか
予定が近づいてくると億劫になる。
これもいつものやつ。
こいつもこいつでやっかい。

私は案の定遅れて行った。
しかも1時間と少し。

まず
あの子がいると思った。
いつもみんなの中心で
にこにこと笑って場を盛り上げていた
あの子。

彼女はいなかった。

すでに話題に出ているだろうと思ったけれど
彼女の話をした。

でも
誰も彼女の今を知らなかった。

さらに歳をとって
彼女の噂を聞いた。

悪い男で
身を滅ぼした、と。

心が病んで、外に出れなくなった、と。

彼女は幸せそうにみえた、だけだった。

みんなの中心でにこにこして
身を滅ぼし、
そのことに気づいて優しい言葉をかけてくる
彼女にとっては、いい人、に
滅ぼされた。

誰も彼女のことを知らなかった。

彼女は
孤独だった。