意味のないタイムカプセルみたいな話
かれこれ20年ほど前。中学の卒業式前日、サッカー部の卒業式的なことをしてもらった。顧問の先生には「臥薪嘗胆」の言葉をいただき、後輩からメッセージボールをいただいた。
その後、みんなで部室の掃除。乱雑に隠されていたエロ本やジャンプは、新しく増設されたエロ本スペースへと丁寧かつ丁重に隠されることになった。
綺麗に整理整頓された部室にて、ベタに思い出を語り合った。そろそろ解散の流れになったとき、K太が意気揚々と立ち上がった。ブロック塀の壁を指差して一言。
「ここにさ！背番号と名前書いていこうや！」
K太は、意気揚々と立ち上がって一言いうタイプの人間ではないだけに、皆がキョトンとした。
提案としては、コンクリートの壁に黒のマッキーで○○卒メンバーほにゃららと書いていこうぜということ。それが世代超えてずっとつながっていったら、おもしろくね？とのこと。
ふむふむなるほど。
理解はした。理解はしたが、類稀なる我々陰キャラサッカー部としては、皆がそない表に出たくない。
「わかった。とりあえずK太が書いてみよう。オレら後から書くから」
お決まりである。
K太もノリを察したようだが、ひくにひけなかった。
「絶対書けよ！絶対書けよなー！」と最後の悪あがきをしながら、Kは書いた。
〇〇卒メンバー
6 H島 K太
ご丁寧に1〜5番のスペースをあけて書いてた
書き終えたKは、他のメンバーにマッキーを渡そうとするが、皆がそれを拒否する。
「ちょっと字汚いから嫌かな」とか
「コンクリートに書くのは嫌かな」とか
「てか、もう早く帰りたいし」とか
何かといきゃもんをつけて、誰も書かない。
団体芸ここにあり。
卒業式の前日、最後の部室でみんなで腹抱えて笑った。
「なんでやねん、ちょー待ってぇや〜。恥ずい恥ずい。これだけ残ったらワケ分からんやん〜。これから入ってくる後輩からしたら『H島K太って誰やねん』ってなるやん〜」とKも必死だった。
それがまたおもろさを助長した。こんなしょうもないことで馬鹿みたいに笑える陰キャラサッカー部の面々に幸あれなエンディングだった。
＊＊＊
卒業から10年後、僕らが25歳くらいの頃、一度だけOB会で中学にお邪魔した。
部室を見せてもらった。
あった。
〇〇卒メンバー
6 H島 K太
ハッキリと残ってた。
「これ、なんなんですか？H島K太って誰なんですか？よよさんの時もありました？」現役の子が聞いてきた。
この10年間、部室を使ったサッカー部の後輩たちが、一度は「H島K太って誰やねん」を通ったと思うとニヤニヤが止まらない。
それはそうと、現役の子の質問にちゃんと答えねば。先輩としてしっかりと答えねば。ボクはニヤニヤをグッと抑えて答えた。
「いや、俺も分からん。H島K太って誰やろうね〜。なんなんやろうね。わけわからんなぁ。。。」
・こぼれ話
あの部室、まだあるんかな。今度行く機会があるとしたら、娘が同じ公立の中学に進んだときくらいか。もし、地元の中学に行く機会があるなら真っ先に部室覗きに行きたい。さすがに消されてるか、撤去されてるか。あったら、今度は写メ撮ろう。（10年前、写メ撮ろうと思ったけど、なんとなく撮るまでもないかとか思ってしまったから撮ってないw）←てか、写真のこといまだに、写メっていうてるw。これ、だいぶオッサンよなw。こわ。
・最後に一曲
最後までお読みいただき、ありがとうございます！サポートしていただいたお金はビールかスーパーカップかおむつ代に使わせていただきます。 これからもゆるく頑張らせていただきます。今後ともよろしくお願いいたします。