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十二月(光と影)|#シロクマ文芸部

十二月の太陽 南中高度 32°  冬至
気温12℃   北風が通り抜ける昼 12時

12歳の少年は土手に座り、108ページある本の103ページ12行目を読んでいた。

「ごらん。あれがシリウスだ。
 もうすぐ夜が明ける。
 12ヶ月の始まりの朝だ。」

明るい陽射しの中で少年は長い影を作りながら、古代エジプトの夜に想いを馳せていた。

近くの工場 12時の昼の時報が流れて
少年は夜から昼に戻り
太陽の眩しさに目が眩み
思わず手で光を遮った


12歳の少女はベッドの上、枕の下に手を入れて部屋の向こう側にある120cm四方の窓を見ていた。
雲のない澄んだ青い空は横になって見上げても四角だった。
窓枠に置かれた球径φ12cmの地球儀が、光を反射して部屋の壁紙に模様をつけた。

「シリウスが見える。」

枕の下から手を出して、その星を掴むふりをする。

近くの工場 12時の昼の時報が流れて
部屋の窓 太陽の光が32°の角度で差し込み
少女の顔を12ヶ月ぶりに照らした
太陽の眩しさに目が眩み
思わず手で光を遮った



十二月 

南中高度32°の太陽が君たちの顔を覗き込む
気温12℃   北風が通り抜ける昼 12時


(おわり)


🔸#シロクマ文芸部 に参加させていただきました。
「十二月」の12という数字に感謝を込めたい師走です。
楽しかったです。ありがとうございました♪


太古の昔よりもっと昔から繰り返している、太陽や地球、遠くの星と人々の営みが、ある角度を持って円を描くように続いていくことは、どれほどの惨事が起きたとしても、とても美しいことで、そこには必ず数字があると、そう思いながら書きました。

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